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「この前はデートだったわけ?」

「無視かい。だから、違うって。そーゆうんじゃない」

「じゃあどーゆうのよ。何処に行ったの?」

本当に、容疑者の気分になってきた。こんな刑事がいたら、すぐに口を割りそうだ。

「ちょっと知り合いの所にね。2人きりじゃなかったし」

「え?他にも誰かいたの?男?」

マズイ。余計な事言ったか。シャツのボタンを留め、袖を肘まで捲る。「とにかく!知り合いで、用事があって、出掛けただけ!以上!」

「付き合う可能性はないわけ?」

続くか・・・勘弁してくれ。「だから、そんなんじゃないって。しかもあの人オネエだし。春香も聞いてたでしょ」

春香が人差し指をわたしに向けた。「そこよ。なんで、あんな喋り方なのかしら?」

「なんでって、オネエだからじゃ」

「同性愛者ってこと?」

「・・・や、わかんないけど」

「違うわよ。アレはゲイじゃない」

「えっ、そーなの?」

「絶対ノーマルよ。言ったでしょ、兄貴がゲイだからわかるって」

そういえば、そんな話してたっけ。追及出来ないし、する気もないが。「なんでわかるの?」

春香は身体から気でも放つような手振りをした。「こう、全身から滲み出るのよ。特有のモノが。上手く説明出来ないけど」

「うん、全然わかんない」

「とにかく、ゲイじゃないのは間違いないわ。だぁ〜かぁ〜らぁ〜」猫撫で声が発動し、わたしの腕に抱きつく。「紹介し・て」

「・・・この前したけど」

「もお〜、そーゆう意味じゃないでしょ?」頬をツンと突かれる。若干強めだ。

「だ─っ!離せ!知らないよそんなの!・・・彼女いるかもしれないし」

「じゃあ聞いてみて」

「誰が?」

「アンタ以外、誰がいるのよ」

「・・・無理!」

「なんでよ」

「なんでって・・・どう聞いていいか、わかんないし」

「日本語喋れる?」

「この会話は何語だ」

「ふーん・・・」

春香がわたしの顔をジーッと観察する。「なに」

「いや?その人の事、好きなのかなーって」

理解するのに、1分はかかったと思う。「はあ・・・?わたしが、早坂さんを?」

「紹介を渋るってことはそうなんじゃない?嫌そうな顔してるわよ?」

思わず、棚に置いてある鏡で自分の顔を確かめる。──うん、普通だ。


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