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「家といえば、雪音ちゃん」急に真剣なトーンになる。

「はい」

「あなたの家、セキュリティ的に大丈夫?」

「と、ゆーと?」

「いえね、悪く言ってるわけじゃないのよ。ただ、誰でも上がれるじゃない」

「まあ、アパートなんで。安いし。築年数は古いけど、中は綺麗なんですよ」

「そーゆう問題じゃあないのよねえ」

「早坂さん」

「ん?」

「前から来る人。ウォーキングしてるおじさん」

早坂さんが目視で確認して、わたしを見る。「どうかしたの?」

おじさんがいつもの挨拶をしながら通り過ぎるのを待った。「いつもいるんですよ。ここに来ると必ず会う。昨日も会ったし。やっぱり24時間歩き続けてる説が濃厚になってきたな」

「・・・クッ、ハハハハ」ぎょっとした。早坂さんは上を向いて可笑しそうに笑っている。
「真剣な顔で何を言うかと思えば。あの人にイタズラでもされたのかと思ったわ」

「イタズラって・・・。でもホントに、100パーセントの確率で会うんですよ。いつ来ても」

「だから、24時間歩き続けてる説?それじゃあまるで妖怪じゃない」

2人の足が同時に止まった。そして同時に後ろを振り返る。
おじさんは両手を振り上げ、歳を感じさせない歩きをしている。

「・・・まさか」

早坂さんはプッと笑い、わたしの頭に手を置いた。「それはないわ。──たぶん」

たぶん!?──まあ、まさかね・・・。

「おいストーカー」

「ぎゃ───!!」

「きゃ──!・・・ちょっと雪音ちゃん、ビックリさせないでちょうだいっ」

「だって・・・」真後ろに瀬野さんがいるんだもん。

「素通りするな」

「あら、何処にいたの?」

「そこのベンチにいただろう。普通に目の前通り過ぎやがって」

「あらそう、話に夢中で気付かなかったわ」

「すみません瀬野さん・・・」

瀬野さんは、白い半袖シャツにダークグレーのパンツ姿だ。色黒だからか、やけに白が映える。

「ていうか、ストーカーはやめてって言ってるでしょ!」

「ストーカーだろ、家まで行って待ち伏せしてるしな」

「言い方!迎えに行ったのよ!」

「中条、迎えは必要だったか?」

「いえ、近いので」





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