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「信っじられない!アンタ、24年間どうやって生きてきたわけ!?」

「普通に生きてきました」

「凌さん、テレビ局に連絡して!取材くるわよ!」

「そこまで言うか」

「今まで、好きな人とかいなかったの?」

凌さんに聞かれ、わたしは考えた。好きな人って、異性としての話だよね。これまでの記憶を呼び起こす──「うん、いなかったですね」

春香は口を押さえ、大袈裟に驚いて見せた。「怖い!怖いわ!天然記念物がここにいる!」

「なんとでも言ってくれ。凌さん、わたし次レモンサワーください」

「その前に、はいどうぞ」ここで、焼き上がった餃子が登場した。しっかりめに焼いた皮と、見るからに具沢山な丸っとしたフォルムがたまらない。

「いっただきまーす」一口で行く。そして、その熱さを残りのビールで流し込む。「今日も最高に美味いです!」

凌さんは笑いながらレモンサワーをわたしの前に置いた。「雪音ちゃんは飲みっぷりより食いっぷりだね」

「ていうか、彼氏が欲しいって思ったことないわけ?」

「まだ続くか!」思わず突っ込んでしまった。せっかく餃子に助けられたと思ったのに。

「だって、思春期の頃なんてまわりに彼氏いたでしょ?いいなあとか思わなかったの?」

春香の言うことはもっともかもしれないが、正直わたしにはどうでもいい事だった。それより、他に気にかける事があったから。
公園での出来事以来、"奴ら"はちょいちょいわたしの前に現れた。どう見ても人間ではない、不気味な生き物。相変わらずわたしにしか見えず、わたしはそれを如何に避けて通るかに青春を費やした──といっても過言ではない。

「あんまり、思わなかったかな」正直に述べた。

「あー、アンタ、もしかしてあれか」

「なに」

「同性愛者」

「ブッホァッ」わたしの代わりに、店長が放出した。持ち前の反射神経で餃子を避難させる。

「今の流れで、そこに行き着く?」

「や、なんとなく。別に偏見はないのよ?あたしの兄貴もゲイだしね」

それが、1番驚きなのだが・・・。「同性愛者ではないけ・・・」言いかけて、詰まった。待てよ、果たして本当にそう言えるのか?異性を好きになった事がない、わたしが。


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