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「凌さんの甥っ子って何歳!?」食い付いたのは春香だ。
「大学生だよ。21になったかな?」
「学生かあ・・・お金は無いわね」
「そこかい」
「でもね、凄くかっこいいよ。叔父の贔屓目無しに見ても、美男子だと思うけどなあ」
「顔が良くてもねえ・・・いや、顔は大事よ、ある程度。でも1番は」
「金ね」春香の代弁をした。
「もち!それプラス、あたしと同じくらいのお酒が飲める人」
わたしと店長は目を合わせた。「なによ、2人とも何か言いたそうね」
「いや?ただ、30年後も独身の春香が見えただけ」
「そうだね。春香ちゃんと同じくらい飲める人って、男でもそういないと思う」
それを肯定するように春香はゴクゴクとビールを流し込む。「前の彼氏なんてビール1杯で酔う奴だったから、ホントつまんなかったわ。無理やり飲ませたらすぐ潰れるし」
「うわー・・・可哀想に」
「でしょ!?」
「いや、春香じゃなくて」
「まあ確かに、酒好きな人にとっては一緒に飲める人が理想だよね」凌さんは、大人の対応だ。
「アル中にはアル中が理想ってことですね」隣をチラリと見た。そういう意味では、この2人、お似合いなんじゃ。
店長越しに春香と目が合う。「なによ」
「いえ別に」
「アンタは?どーゆう人が理想?」
「・・・え゛」ここでわたしに来るか。
「タイプよタイプ。あるでしょ一応」
「確かに、雪音ちゃんのそういうの聞いたことないかも」と、店長。
「タイプ・・・かあ・・・」みんな、わたしに注目している。
「タイプは無いっていうのは無しよ」
「うっ」先手を打たれた。しかし、そう言われても──「考えたことないからわかんない」
「なんかあるでしょうよ!優しいとか、背が高いとか、なんでも!」
「・・・・・・んぅ?」
「ダメだこりゃ」春香は呆れたようにビールを呷った。
「雪音ちゃん、今までどんな人と付き合ったの?」
凌さんに聞かれ、即答した。「付き合ったことないです」
「ブハァッ」春香の口から放たれたビールが、隣の店長を襲う。わたしはギリギリセーフだ。「はあ!?嘘でしょ!?」
「本当ですけど。そんな驚くことかな?」答えは、3人の顔を見てわかった。
「珍しいね、雪音ちゃんの歳で誰とも付き合ったことないなんて」店長は被害を受けた顔をおしぼりで拭いている。