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愚か者の末路

 実家を追い出されたエミールは、その後どうなったのか。
 愛しいイングリッドにも捨てられてしまった彼は、ペントハウスを与えられたにも関わらず、消息不明となってしまった。
 亡き母の遺産に手を付けた形跡はあり、エミール名義の財産は底を突いていた。
 ペントハウスで暮らしていれば死ぬことはない、と思っていた父であるカルローニ伯爵のもくろみは、ここでも見事に外れてしまったのだ。
 まさかバカ息子がペントハウスから出ていってしまうとは、実の父でも予想がつかなかったのである。
 そんなカルローニ伯爵も寿命を迎えて、亡き妻の元へと旅立っていった。
 今はエミールの消息を探す者すらいない。
 だが一度、アデルは商談に出向いた先で、派手な美人の平民マダムが、死んだ魚のような目をしたエミールとよく似た人物を連れ歩いている姿を、見かけたことがあった。
 それがエミール本人だったかどうかは謎である。

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