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14.楽園は人の手で創造出来ない。自然と出来上がるもの。

激動の榛勃佐(ばるぼっさ)騒動。ようやっとこさ幕切れ(フィナーレ)へ。
記念館地下一階。

てちてちてちてちてち
本日の主役だったはずの豪雁撫黎(ごうがんぶれい)榛勃佐会長、到来。多数の警備を引き連れる。

「警備がいないじゃないか?!僕ちんの大事なコレクションに何かあったらどうするんだ!責任者は後で処刑だ!全く…」

文句を垂れながら急ぎ足でコレクションの確認に向かう。

てちてちてちてちてち
急いでいるがなんせ歩幅が矮小なため、大人が歩くのより遅い。警備には悟られないように歩くペースを合わせる配慮が求められた。

てちてちてち
てち…
会長の足が止まる。

ぜぇー、はぁー、ぜぇー、はぁー
フィジカルのハンデに加齢もあって、スタミナが限界を迎えたようだ。

「おいそこのお前!おんぶさせてやる!抱きたまえ!」
「えぇっ?!そ、そんな、私にそういう趣味は…!いやでも、分かりました!会長の命とあらば…!」

カチャカチャ
ズボンに手をかける警備員。

「ちっがぁぁぁあああああう!!!僕ちんを抱えて運べと言ってんだぁぁぁあああああ!!!」
「あぁそうなんですか?!失礼しました!お運びします!」

バタバタバタ
会長たちは奥へ進む。

「うんうん、アートは問題無さそうだ。あとは愛しきペットちゃん達が無事なら…」
「あれ?でも会長、さっきそいつらオークションに出すって言ってませんでした?」
「そうだ。僕ちんは十分あいつらに愛を注いだ。遺伝子技術を駆使して生み出し、山ほど人間を食わせてやったし、適当なメスもあてがってやった。その恩を返して貰わねば。今日来た客に高値で買い取ってもらう。僕ちんに愛でられ、最後は金をもたらす。何とも幸せではないか。そうだろう?」
「は、はい、そうです。」
「ん?今日はやけに静かだな。いつも僕ちんが近づくと喧しいくらい鳴いて喜ぶのに。」

檻が見えてきた。

シーン
動物達は騒ぐことなく、かといって寝ることもなく、黙って佇んでいる。

「死んでるわけじゃないし…どうしたお前達?今日はお利口さんだな。プテラも、ティラノも、マンモス…は元からか。」

さらに進んでいき、最後の檻へ。

「さぁーてさてさてぇ、コイツだよ。良い毛並みだし強くて凛々しい。我ながら良いのを作ったものだ。コイツだけはしばらく売らないでおこうか、なぁぁぁぁぁぁあああああああああああああ???あああ、ああああああはああああああああああああああああああああああああ????!!!!」

ぽっかりぃぃぃいいん
見れば、檻の格子は見るも無残に吹き飛ばされており、大穴が空いていた。
会長は警備員の腕から降りて現実を直視する。

「は?は?は?ははは???逃げた?嘘?他と違う、特注の檻なんだが???ぶっ壊したの?マジで?な、なんで…」

ヨロヨロ…
よろめいて後ずさる。

ドカッ

「いてっ。」

何かにぶつかった。

「んんん?何だぁ?あぁ、絵か。だがこんなとこに置いたのがあったかな…ぁぁぁぁああああああ???!!!」

ぎょ、んぎょぎょぎょぎょぎょぉぉぉぉおおおおお
目をひん剥いて慄く。

「な、なんだこの絵は…?」

でっかいキャンバスに立て掛けられた絵。そこに描かれていたのは、若い女性を虐げる白髪の男性。女性は頭をかばいながら男性からの暴行に耐えている。男性は悪魔のごとく白髪を振り回してせせら嗤い、この世の全てを見下すような紅い瞳を見開いて女性を足蹴にしている。禍々しい色味に筆使い。ただ二人の人物しか描かれていないのに、息を呑むような威圧感を抱かせた。

「こんなの買ったかな…?それにしても、なんというか、表現力が凄い…怒りや悲しみ、嘲笑まで伝わってくる、うん。まるで生きてる人間がそこにいるようだ。」

じっと絵を見つめていると、

ギロオッ

「?!」

紅い瞳が動いて目が合った気がした。

「ひぃぃぃいいいいい???!!!なんだなんだもう、気味が悪いぃぃぃいいいいい!!!!」
「会長、どうしましょう…?」

警備の一人が恐る恐る尋ねる。

「なんだお前らぁぁぁあああ!!!ぼーっと突っ立って、無能どもがぁぁぁああああ!!!あ、いやそれは言い過ぎか、役立たずどもぉぉぉおおおお!!!さっさとオキニの虎ちゃん探して、捕まえてこんかぁぁぁああああああ!!!」
「いやでも、それは…」
「なんだ?嫌なのか?お前らをクビにするだけじゃなく、一族郎党、皆んなこいつらの餌にしてやってもいいんだぞ?海外で売るのもいいな。僕ちんにはそれができるから、なぁぁぁあああああ???」
「うぅっ…」

何も言い返せない。

「分かったらさっさぁと探っしぃにぃ、行っけぇぇぇぇぇぇぇええええええええええええああああああああ!!!!!」
「「「「「は、はぃぃぃいいいいい〜〜〜!!!」」」」」
「全く、上が言うまで動かん奴らだ。仕事を舐めてる。この気色悪い絵も処分させんとな。」

直後。

「おわぁぁぁあああ???!!!あっ…」
「ひげぇっ…」
「ぐぇふぅっ…」
「まんまぁっ…」

警備の悲鳴が聞こえた。

「?!何だ何だ、何があったぁぁぁーーー???!!!」

シーン
悲鳴はすぐに聞こえなくなった。

「誰かぁぁぁあああああ!!!返事しろぉぉぉおおおおおお!!!」

シーン

「誰も、いないのか…?」

ぽつん
地下に一人。会長、孤独に襲われる。

ずびっ
すびびびびびびばびぶべ

「………ぅぅぅうううううわぁぁぁぁあああああああああ〜〜〜〜〜〜ん!!!!僕ちんを一人にしないでよぉぉぉぉおおおおおお〜〜〜〜〜〜!!!!」

会長、堪らず泣き出した。
そこへ。

ザッシュ、ザッシュ、ザッシュ
グルルルルゥ…
サーベルが姿を現した。

「ぐすっ、ぐすっ…と、虎ちゃん…?」

ぺろぉり
存分に舌舐めずりする。

ゾゾゾオッ
ようやく動物としての本能が告げる。こいつはヤバい、と。

どてん
足に力が入らなくなり、尻餅をつく。

「お、お前、やったのか…?警備を…?」

ザッシュ、ザッシュ
間合いを詰めてくるサーベル。

「や、やめろぉ!来るな、来るな来るな来るなぁぁぁぁああああああああ!!!」

みっともなく這いつくばりながら逃げる会長。
さっきの絵のところまで戻ってきてしまった。

「ぼ、僕ちんが育ててやったんだぞ?!人の味を覚えさせてやった!下の世話もしてやった!そんなに強く大きくなれたのは、全部僕ちんのお陰、なんだぞぉぉぉぉぉおおおおおお!!!恩知らずぅぅぅぅうううううううううううう!!!世間知らずぅぅぅぅぅううううううううううう!!!親殺しぃぃぃぃぃぃぃいいいいいいいいい!!!」

グゥゥゥゥゥウウウウウウウウオオオオオオオオオオオオオオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!

「びぃぃぃぃぃーーーいいいいいいーーーいいいいいーーーーいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」

ぬうううっ
ぐわぁっしぃぃぃいいい

「???!!!げぇぇぇえええっっっ???!!!」

どこからともなく手が伸びてきて、会長の首根っこを掴む。

きひっ
バリッ、バリバリバリバリバリバリバリバリィィィィイイイイ
絵を突き破って中から人が。描かれていた通りの見た目の白髪の悪魔が現れて、会長を釣り上げた。

「よおーおしいよおしよおしよおおおーーーおしいいい。おいちゃあんゲエエエッッッチュウーウウ。ちゃあーああんとおこいっつうだけえ残してえくれったなあああ。いい子いい子お。」

ガルァ

「もぉぉぉおおおおお!!!描いた絵の中に入って、同一化するなんてぇぇぇええええ!!!どんな発想なんですかぁぁぁぁああああああ???!!!息苦しいし、絵の具が口に入っちゃいましたよぉぉぉおおおおおおおお!!!」
「ホントに、理由とか論理とか何にも無いね。ちょっと面白かったからいいけど。」
「な、なんだなんだお前らはぁぁぁあああああ???!!!離せ、離せよぉぉぉぉおおおおおお!!!」
「離すうわっきゃあああああぬうえーええだろおおおがあああ。おんめえええのお命いちょおーおおだあいにいきったったあああぜえええい。」
「金かぁぁぁああああああ???!!!金が欲しいんだろぉぉぉおおおおおお???!!!あげるあげるぅぅぅ、この世の全てを手に入れられるだけの金、あげちゃうからぁぁぁあああああああああ!!!!」
「じゃあ私の口座教えますね。えっと蜜皮脂銀行の…」
「銭ゲバちょっと黙ってて。」
「そおんなあに金があああんのにい、今のじょおーおきょおーおおどおーおにいもおでっきねえええったあああ皮肉豚肉もおいいーいいとっころおだあなあああ。」
「私牛肉が一番です。」
「僕ラム。」
「えぇ?牛より豚よりラムですか?変なの。」
「なんか癖になるんだよね。味というか触感が。」
「変な肉好きな俺かっこいいってイキッてるだけじゃなく?」
「くたばれ。」
「じゃあ僕ちんはどぉぉぉおおおおしたらぁぁぁあああああああいいんだぁぁぁあああああああああ????!!!!どぉぉぉおおおおやったらぁぁぁあああああ助かるんだぁぁぁぁあああああああ????!!!!」
「よちよちい、どおーおにいもおなりまっちえんよおおお。あっきらあめえなっちゃあああい。」
「うぅぅぅぇぇぇぇえええええええ~~~~~~んん!!!!!」

会長、どうしようもなく泣く。

「それでどうするの?ここでやっちゃうんじゃないんでしょ?」
「おおおーおう。もおおおちょおいおんめえらあにい働いてえもらうううぜえええい。」
「んもぉぉぉーう、人使いが荒いんですからぁ。」
「もっちのろおん、おんめえもなあああ。」

ガルァッ

きひっ

「さあああさあーあああ、こおんのおくっだらあんぬうえええパアーチイーのお火蓋あをお、おっろしにい行くんでえええええい。」

諸々の準備を整えて、いざステージへ。

記念館一階、メインホールステージ裏。
サカとソートが会長を引き連れてやってきた。ヒナとサーベルは別件でいない。それとやけに大きい荷物を布で覆って隠しながら警備員に運ばせている。

「オオーオラアアーアアイオオオーーーオラアアーアアアイイ。傷がつかんねえええよおおおにい、しんっちょおーにいなあああ。」
「あ、会長!やっと戻られましたか!もうステージのお時間ですよ!まずはこれをご紹介になるんですか?」
「あ、ああ…」
「ん?会長、横の方はどなたですか?見慣れませんが…」
「あったらしいいい用心ぼおーだああーああよお。んなあああ?」
「そ、そうだ。その通りだ…」

(そうそう。下手な事言ったらやっちゃうからね。)

こっそりソートが告げ口する。

「?まぁいいか。とにかく皆さん待っておられますから!登壇、お願いします!」

幕の袖。
司会の陽気な男がスタンバイしていた。仮面舞踏会のようなベネチアンマスクをつけ、白シャツに蝶ネクタイ、赤いベストを着ている。

「お、来ましたかぁ!遅刻ですよぉ?まぁ俺も遅刻しましたけどぉ。用意してくれた娘の調子がハッスルし過ぎてさぁぁぁああああ!!!うっかりしっかり殺しちゃいそうになったよぉぉぉおおおおお!!!ハッハァァァアアアアアアアアアアア!!!」
「そ、そうか…」
「あん?その横のは誰です?警備ならちょっと離れたとこで見ときな。こっから先は芸能人みてぇに鼻がある奴しか通れねぇよ。そう、この俺、ち…」
「うっせえええよおおお。」

ドラバッチコォォォオオオオイ

「どぐれえぇぇぇえええっっっ?!」

ビンタ一発、気絶。

「でも服はいいーいいなあああ。借りてくぜえええ。」

ゴソゴソとひん剝いて身に付けていく。

カチャ
マスクをつけて、準備完了。

「ほおんじゃあああまあああ、懺悔の刻(ショータイム)い、スッタアアアアアアアトオオオオオオーオオオオーーーオオオオウ!!!」

メインステージ前。

ザワザワザワ
開始時刻を過ぎても姿を現さない会長に心配の声が出始める。

「何かあったのかしら?」
「トラブルかな?黒い噂が絶えない人だし。」
「迷子になったんじゃないの?小さいし。」
「もしくは暗殺された?だったら面白いがな。」
「そんなことがあったら豪雁撫黎一族どころか、豪皇院グループ全体の一大事だ。派閥争いの引き金になって、日本の政治経済が大混乱になるぞ。」
「もう終わってるけどな、日本なんて。それなら面白いことが起こった方がマシだ。」
「そりゃそうなんだがよ。」

バツン
バツバツバツバツバツン

「お、照明が暗くなった。始まるぞ。」
「結局やんのかよ。勘違いジジイが。」

パアアアッ
ステージが照らされる。

「ほおおーおおらあ、主役のごとおうじょおおおうでえええい。」

げっしぃぃいいい

「ひぎゃぁぁぁあああっっっ!!!」

ボン、ボン、ボボン

「げっ、げげっ、いてぇぇぇええええ!!!」

蹴り出されて中央まで転がる会長。

「え、何…?虐待…?」
「斬新な登場だなぁ。」

スッタスッタスッタスッタ

「~~~♪~~~~~~♪~~~~~~~~~♪」

鼻歌を歌いながらサカが現れた。

「よおっとおおお。」
「ぐぎゃぁっ?!」

サカは会長の上に腰掛け、マイクを持ち、

「ん、んんんーんん。あーあーあああー。テステステスウ、たっだいまマイクのおおっテストオオオ中うううういいいいいいいええええええええレエエエッッッッッヂイイイイイイイイイイイイイイイイイイイシュウウウウウウウウウウウウウウウウウウエエエエエエアアアアアアアアアアアアアアアアアンンドウウウウウウウウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ、エエエアアアアジイイイイイイイイエエエエエエエエンントオオオオウウウウウウウウウウウウrrrrrrルルルルルウウウウウウウウウウウウウウウウエエエエエエエエエエエエアアアアッッッッッッッッッンムウウウウウウウウウエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンアンアンアアアアアアアアアアアアンウウウヌウウウウウウウウエエエッッッッッッッッッ!!!!!!!」

ビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリィ
声圧で会場が、いや港区全体が揺れた。

「きゃぁぁぁあああ?!テスト中だと思ったのにぃぃぃいいい?!」
「フェイントかけられた!くそっ、耳がぁ!」

声は当然、会場外のこの男にも届いていた。
記念館正門前。

「何だ?やかましいな。」

東宮寺がイヤホンを外す。声の主には気付かなかった。

「イベントやってるみたいですよ。耳がキンキンしてかないませんって。ところでさっきから何してるんです?」
「ソシャゲの『ロリ娘☆人生大逆転ダービー』だ。娘のパパ(プロデューサー)になって金を稼いでもらい、家族を貧困生活から脱出させる方向で育成していく。」
「娘のためじゃなくて他の家族のために頑張らせるとかエグ。」
「無理に命令すると絶縁されて彼氏と国外逃亡されるから、上手い具合に選択肢を散らさないといけない。奥が深いぞ。」
「俺には分かりませんわ。まぁ警備が暇なんでいいですけど。」

場面は戻る。
ステージ上。
まだ全員が耳と頭を押える中、構わず続ける。

「お集まりの皆皆様あ、こんのたびいは傲慢チキチキイおじちゃあんのお誕生日パアーチイーにお暇にもご出席いっただきい、あざあんまあーああすう。おおいソートオ、ちゅわあんとお撮ってろおよおお。」
「撮ってる撮ってる。しっかり証明にしとくから。任せて。」

ソートはホバリングして様子を至近距離で録画する。

「おいお前!会長になんてことを!不敬だぞ!」
「あああああん?演出でっすよおお演しゅっつううう。ねえ、カイチョ♡」
「あ、あぁぁぁそうだぁ!ただの演出だぁ!」
「そ、そうなんですか、会長がそう仰るのなら…」
「邪魔すんじゃあねえええやあああい。続けんぜえええ。」

続ける。

「ほいでえなあああ?きょおーおおうはあ、ゲージツとっかあ、ドーブツとっかあ、チャンネエーのおおぱんちいーとっかあ、見せてやっらあああ予定だったんだがあなあああ?そいつらあぜえーんぶう取り止めてえ、とんあるショオーをおいっちょおやることにいしったあんさあああ。」

ザワザワ

「えぇー?改造動物見れないのぉ?」
「ショー?何々?」

きひっ

「会長☆直伝!!!人体切断マッジックショオオオオオオオオーーーーオオオのおおお、あ始まり始まりぃぃぃぃいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!ギイロオチイイイン、カモオオオオオオオオンベイベイベイベベイイイッッッベエエエエエエエエエエエエエエエエアアアアア!!!!!」

ズオオオオオッ
舞台袖から運び込まれたそれは、地下二階にあった人骨ギロチン。照明の光を受けて鈍く醜い輝きを放つ。

「きゃああああ!!!かっこいいぃぃぃいいいい!!!」
「センスがいいなぁ!」
「うんうん、人間の醜さを残しつつ、その醜さを断罪するようなギロチンという形!まことにエキサイティング!」
「これでマジックするのぉ?面白そう!」
「しかも会長がぁ!こいつは傑作だ!」

会場のウケは上々だ。

「あの、これ大丈夫なんですか?会長、怪我したりしません?」

警備がザワつく。

「マジックの演出だってさ。身体張ってもらわんと、こっちも楽しみがいがないってもんだ。」
「そうだな…じゃあ楽しませてもらうか。」

警備がザワつかなくなった。

「何なんだ馬鹿どもがぁ…!僕ちんがこんな目に遭ってるのに…!」
「そおんなあに猛りなさんなあああ。お楽しみいはこれからあなんだからあああん。」

ひょい
会長を小脇に抱えてギロチンの裏に移動する。

「さっきい言った通りいんこおだあがあああ、今からこいつうでえ、人体切断マジックやりまああーああすう、会長があああ。」
「おおおおお!!!いいぞぉぉぉおおおおお!!!早くやれぇぇぇえええええ!!!やれ殺れぇぇぇぇえええええ!!!」
「まさかホントに死んじまったりしてなぁぁぁあああああ???!!!俺あいつ嫌いだしぃぃぃいいいい!!!その方がありがたいけどぉぉぉおおおおお!!!」
「そんな訳ないじゃなぁぁぁあああい!!!でも私も嫌ぁい、偉そうで!ずっと身の丈に合わないポストにいるのよ、文字通りねぇ!アッハハハハハハハ!」

サカはいそいそと会長の首を刃の下にはめる…はめようとするが、首が短過ぎるので入らない。

「しゃあああねえええ、肩ごと入れっかあ。フン!フンフン!」

ゴキゴキゴシャ

「痛い、痛いってぇぇぇえええ!!!肩が外れたぁぁぁぁああああ!!!お、おい!おい!マジックやるなんて聞いてないぞ?!どうするんだ?!タネとかトリックとか、何も知らんぞ?!」
「?俺ちゃんも知らんぞお?」
「は、はぁ?マジックなんだろ?刃とかどこかに、仕掛けがあるんだろう?」
「いんやあマジックなんてえ思いつきだっしい、仕掛けなんて知らにゃあーああい。こおんのロープウ外っしゃあーああ、そのまんま刃があ落ちてきてえ、スッパアーアアンだんなああ。」
「は…?」

サァーッ
会長の顔が青ざめて汚くなる。

「本気で言ってるのか、貴様…?この僕ちんを、殺す…?こんなところで…?」
「んまあああ、神さんに愛されてればあ?海を割るくれえのお奇跡ってやっちゃあをお呼び込めえばあ?飛んだ首い…いやあ頭かあ?があくっついてえくれえっかもおおおおなああ。」

会長を押し込み押し込み、準備完了。

「うううっしいいい、でっけたああああ。さあああーああさあああーあああ紳士淑女おのお皆んなさああああああんん、お待んたせえしっますたああああああああ!!!そおんじゃあああカウンテイイイダアアアウンいきまっしょおおおおおおおいい!!!!」
「「「「「「「「「ウウウウウウウウウオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」」」」」」」」」」

会場のバイブスも上がる。

「え?!早くない?!ちょっと、ちょっと待って…」
「五からいっきますよおおお、せえーんのおー、」
「「「「「「「「「「ごぉぉぉぉおおおおおおーーーー!!!!」」」」」」」」」」
「ま、待て待て待て、待て!」
「「「「「「「「「「よぉぉぉぉおおおおおおおおーーーーんん!!!!」」」」」」」」」」
「待て、待てってぇぇぇええええ!!!」
「「「「「「「「「「さぁぁぁあああああーーーー…」」」」」」」」」」
「待てと言っとろぉぉぉおおおおおおおおおおおがあああああああああああああああくぅぅぅううううおおおおおおおおおおおおんんぬぅぅぅううううううおおおおおおおおおおおおおおブゥゥゥウウウウウウウアアアアアアアアアアアッッッッッックゥゥゥウウウウウウアアアアアアアアアアアどぅぅぅぅうううううううううううおおおおおおおおおおおおんむぅぅぅううううううううううううううううおおおおおおおおおおおおおおおおんんぐぅぅぅうううううううううううううううううううああああああああああああああああああああああああああああああおおおおおおおおお!!!!!!」

小さい身体に合わない大声が出た。

「あああん?」
「会長?」
「何だよ、今更。」

ようやく周りが気づいた。盛り上がりを中断され、会場が一気に白ける。

「言いたあいことがあああんのかあああ?ほんじゃあああまあ、最期(おわり)の言葉をおどおーおおんぞおおお。」

ゴトッ
マイクを目の前に置く。

ふっ、ふぅっ、ふぅぅぅ
会長の息が上がり目が血走る。思いがけない最期に興奮が隠せないようだ。

「こんなの…許されるはずがない…この僕ちんが…こんな…夢でも、見てるのか…」
「現実だあーああお。」
「うるっさぁぁぁああああい!!!おかしいだろぉぉぉおおおお!!!僕ちんを殺すなんてぇぇぇええええええ!!!!豪皇院グループ筆頭子会社のトップ、豪雁撫黎(ごうがんぶれい)榛勃佐(ばるぼっさ)だぞおおおおおおお!!!日本を牽引する長!頂点に最も近い存在!それがこの僕ちんなんだぁぁぁぁああああ!!!なのに、それなのに、何なんだお前らはぁぁぁぁああああああ!!!!目の前で僕が殺されようとしてるのに、他人事だと思って笑うだけぇ!!!あっりぇぇぇぇえええええええええん!!!お前らは、僕ちんのお陰で生きていられるんだぞぉぉぉおおおおおおお!!!!そこのお前も、お前もお前もお前もお前もお前もお前もお前も、みぃぃぃいいいいいいーーーんな僕ちんの傘下で働いてんじゃないかぁぁぁぁあああああ!!!!こんのぉ、恩知らずどもがぁぁぁあああああああああ!!!!いいのかぁぁぁ?僕ちんがいなくなったら、お前らみぃぃぃいいいいいいーーーんな困るんだぞぉぉぉおおおおおおおお!!!!!いいのかぁぁぁああああああ???いいのかぁぁぁってぇぇぇっ、聞いてんだぁぁぁぁよぉぉぉおおおおおおおおおおおおお!!!!こっっったぁぁぁあああああああああええええええええええろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおああああああ!!!!!!」

会長の渾身のスピーチが響く。

シーン
会場は黙っている。

「ほらぁ、困るんだろぉ?僕ちんの偉大さを噛み締めてるんだろぉ?だったらぁ、さっさと僕ちんを助けろぉぉぉぉおおおおおおおおおおおお!!!!!」

…ぷっ
誰か一人の失笑。

ぷぷぷぷぷぷっぷぷぷぷぷぷのぷ
その輪が広がっていき、そして、

ッッッギィィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイユゥゥゥゥゥゥゥウウウウウウウウアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッフゥゥゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッヘェェェェエエエエエエエエエアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッッヘェェェェェィィィィイイイイイイイイイイイイイイイイアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッッッッッッッッッハァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアオオオオオオオオオエエエエエエエエエアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!

会場が爆笑の渦に包まれる。

「?あ、え、へぇ?」

会長、唖然。

「なぁーにを言ってんですかぁ会長ぉ?!あなたがいなくなって困ることなんったぁ、ひっとつもありませんよぉぉぉおおおおおおお???!!!」
「別の誰かが会長になるだけじゃんねぇ、マジウケるwwwwウケ過ぎてマジ大文字横一線扉絵巻曼荼羅毛爆散ミシシッピ山脈平鼠wwww」
「お前がお前でいる必要なんかねぇよぉ、バァーカァ!何勘違いしてんだジジイ!」
「確かに死んじゃったら跡目とか色々揉めて、豪雁撫黎、豪皇院グループがちょっとドギマギするだろうけど、すぐ片付くだろ。代わりなんていくらでもいるし。誰が死んでも数日経てば元通りの弾力性があるのが社会ってやつだ。会長ともあろう人間がそんなことに気づかないとは、見下げたよ。」
「それに前からお前気に入らなかったんだよ!普段は何の現場にも顔出さねぇくせに、無駄に会社の金使いやがって!新しいオフィス作るだの、事業広げるだの、海外進出するだの、社員と国民のためとか言って、全部お前のためだろうがぁぁぁ!!!」
「俺も聞いたことあるぞ!傘下の会社全部に会長室作らせてるって!一度も使いもしないのに!」
「私、会長への接待費を経費精算したことあるけど、三日で十億いってたよ!それなのに社員にはSDGsやら経費削減やら言ってるの、馬鹿みたいじゃん!」
「上にふんぞり返り過ぎて下が見えてねぇじゃねぇか!チビのくせに!」
「そうだそうだ!チビだからってそこら中に自分用のバリアフリー設備作りやがって!気に入らないところ全部自分サイズにしやがるから、こっちは使いづらくて仕方無いんじゃぁぁぁ!!!」
「たかがマジックなのにいちいち大袈裟なのよ!器がちっちゃくてやんなっちゃう!顔もよく見たらキモいし!」
「悪いこともいっぱいしてるんだろうが!人殺しなんて生易しいもんじゃないぞ!組織ぐるみで麻薬を大量生産したり、人身売買したり、怪しい動物作ってんのだってそうだ!トップなんだろ?責任取って死刑になりやがれぇぇぇ!!!」
「さっさと世代交代しろぉ!マジックなんか失敗して、死ねぇ!死んじまぇぇぇええええ!!!」
「「「「「「「「「死ーーーね!!!死ーーーね!!!死ーーーね!!!死ーーーね!!!死ーーーね!!!死ーーーね!!!死ーーーね!!!死ーーーね!!!死ーーーね!!!死ーーーね!!!死ーーーね!!!」」」」」」」」」」

会場が一つになり、老人の処刑を渇望する。

「な、なんだ…これは…?現実なわけ、あるか…僕ちんは神なんだ…そうだ、夢…夢に違いない…」
「だあーああかあーああらあーああ、お現実だってえーええのお。目え、覚まさせてやろおかあああい?」

ロープをちょんちょんする。

「やめろってぇぇぇええええええ!!!警備ぃぃぃいいいいいい!!!さっきから何してるぅぅぅうううううううううう!!!さっさと助けんかぁぁぁあああああああああ!!!」

辺りの無能警備に檄を飛ばす。

「えぇぇぇ?!いやでもこれはマジック、演出だって…」
「んなわっきゃあるっかぁぁぁぁあああああああ節穴がぁぁぁぁああああああああ!!!!早くしろぉぉぉぉおおおおおおおおおお!!!!殺すぞぉぉぉおおおおおおおおあああ!!!!」
「おい、ガチみたいだぞ?助けに行かないと…」

一人の警備がステージに上がろうとする。

「いや、いいんじゃない?」

が、他の警備に止められる。

「え?ど、どうしてだ?」
「あんな脅してくる会長、いなくなった方が俺らのためじゃない?次の会長がいい人になるの祈った方がワンチャンない?」
「いや、それは…」

悩む警備。他も同じ気持ちらしく、なかなか助けに行かない。

「分かったぁぁぁぁああああああ!!!!助けてくれたらボーナスやる!!!好きなだけあげますからぁぁぁぁああああ!!!!助けてくださぁぁぁぁああああああい!!!!」
「ボーナスだってよ。流石に行こうぜ。」
「まぁ目先の金か。仕方ない。」

会長のプライドを捨てた懇願に、しぶしぶ動き始める。

「おーい!そこのお前!マジックとやらは中止だ!さっさとそこをどけ!」

警備の動きに会場に不穏な空気が漂う。

「え?中止?ここまでやっといて?」
「嘘だろ?あーあ、つまんな。」
「空気読めよ警備。くたばれ。」

だがサカは聞き入れない。

「やああーあだああーあよおーおおう。止めたいんなら止めてみっなあああ。」
「早くぅぅぅうううううう!!!!」
「クッソがぁぁぁあああ!!!おい、行くぞ!」

わらわらと警備がステージに上ろうとする。
しかし。

「邪魔すんなぁぁぁぁあああああああ!!!」

バッキャァァァアアアアン

「ぐごぉっ?!」

客の一人が、瓶で警備の頭を力いっぱい殴った。警備は倒れ込んで頭を押える。

「会長の処刑シーン、いっちばんいいとこだろうがぁ!水差すんじゃねぇぞぉぉぉ!!!」
「そうだぁ!金にたかる虫がぁ!引っ込めぇぇぇ!!!皆んな、行くぞぉぉぉ!!!」

ワアアアアアアアアアアアアアアアアアア
客が一斉にステージに押し寄せ、警備を取り押さえる。

「な、何だお前ら!ふざけんな!離せ!会長が死ぬぞ!」
「だから死んでもいいってんだろうがぁ!止めんじゃねぇ!」
「ゴミどもがぁぁぁああああああ!!!!」
「ゴミはお前らじゃぁぁぁあああああああ!!!!」

客の擁護を受けて、ギロチンには誰も近寄れない。処刑を止める者はいない。

「大衆の醜い争いっていいね。見てると自己肯定感高まっていくよ。」
「きっひゃっひゃあ。やっぱあああんたあにゃあーああ思おうとっころおいいいっぱあいいあったあんだあなあああ。良かったじゃあねえかあああ。トップとしてえ最期にい見下してきたあ世界のお真実をお知れてえええ。」
「お、お願い…助け…」
「いいんやあああああああああ???おんめえはあこっこでえおおおっしまあああああああああああああい!!!もおうどおーおおにもおなりまっちえええええええええん!!!ざあんぬうえんでっちたああああああああ!!!さああああ今っ度こそおおおカウンテイダアウンいいっきいむあすうよおおおおおおおおお!!!三からああああああああ!!!すうええええーえええ、んんぬううううおおおおおおおおおおお!!!!」

サカがロープに手をかける。処刑執行(ジャスティス)のカウントダウン、開始。

「「「「「「「「「「さぁぁぁぁぁあああああああああーーーーーーーーああああああんん!!!!!」」」」」」」」」」
「ぼ、僕ちんは…皆んなのために…皆んなが幸せになれるように、頑張ってきた、はずだ…」
「「「「「「「「「「にぃぃぃぃぃいいいいいいいいいーーーーーーーーーいいいいいいいいい!!!!!!」」」」」」」」」」
「道理に背くことも、した…でもそれで救われた人間も、いた、はずだ…」
「「「「「「「「「「いぃぃぃぃいいいいいいいいいいーーーーーーーーーーーいいいいちぃぃぃぃいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!」」」」」」」」」」
「人間…これは…目の前にいるこいつらは、人間なのか…?」

きひぃっ

「そうよおあなたあ人間様様よおおお。悪魔あにもお神いにもなるう、ご都合主義(ポテンシャル)をお秘めたあ奴らあさあああ。」
「あ…あ…」
「「「「「「「「「「ズゥゥゥゥウウウウウウウウウウウウウウエエエエエエエエエエエエエrrrrrrrrrrルルルルオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」
「いいいいいいいいいいいいいいいいいいゆぅぅぅぅうううううううううううううううううううううあああああああああああああああああああああああああああああああどぅぅぅぅううううううううううううううううううううううあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ???あああああああああああああおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおああああああああああああ!!!あああああああああああああああああああがああああああああああああああああああああああああああああああああ???!!!あああああああああああああああああうううううううううううううああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「バッハアアアアアアハアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアイ!!!!!」

バッツゥゥゥン
ロープを外す。

シュゴォォォオオオオッ
ドオッバァアッシャァァァァアアアアアアアアアアアン!
刃が派手な音を立てて落ち、会長の頭部が爆裂した。

「うっひょぉぉぉおおおおおおおおおおお!!!!すっげぇぇぇぇええええええええ迫力ぅぅぅぅううううううううううう!!!!」
「スッキリ爽快だわぁぁぁぁああああああ!!!!便秘の大便がまとめて出てくる以上の気持ち良さよぉぉぉおおおおおおおおおおお!!!!」
「ファッキュゥゥゥゥウウウウウウウウウウ!!!!ざまぁぁぁぁああああああああ!!!!」
「でもぉ?でもでもでもぉぉぉ???マジックだからぁ?マジックだからぁぁぁ???生きているぅぅぅ???」
「確かめてみっかあああ。よっこいしょおおお。」

ガラガラガラ
ロープを引っ張り、刃を持ち上げてみる。
会長だったものは死んだように動かない。

「生きてる?元に戻る?」
「全然動かないぞ?」
「もしかして?もしかしてぇ…?」

きひっ

「失敗、しちゃったあ♡」

テヘペロ♡

「「「「「「「「「「死ぃぃぃぃいいいいいいいいいいいいいいんどぅぅぅぅうううううううううううううううあああああああああああああああああああああああ!!!!!!!ああああああああああああああっっっはあああああああああああっっっはああああああああああああああっっっはあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!ずぁぁぁぁああああああああああああああんずぁぁぁあああああああああああああああああああああああんむぅぅぅううううううううううううううああああああああああああああがあああああああああああ!!!!!!!」」」」」」」」」

パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ
ピー、ピー
盛大な歓声と拍手に包まれる。日本を牛耳る企業のトップ、怨恨を受けて散る。

記念館正門前。

「隊長、隊長?」
「何だ、今いいところなんだが。」
「クソゲーもほどほどに。ねぇ、会長死んじゃったみたいですよ?これまずいですかね?俺らも怒られるやつですか?」
「知らん。俺達は正門を守れと言われただけだ。正門から不審者は通さなかった。それ以上は面倒見きれん。」
「そうですよねぇ。上のおじさん達は隊長が宥めてくださいね。はぁーあ、骨折り損。」



「…?」

…ドドド

「あれ?地震?」

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド
地面からとんでもない揺れが伝わってくる。

「?!」
「なんだなんだぁ?!」

記念館一階メインホール。

「うぉぉぉおおお?!」
「地震よぉぉぉおおおお!!!大きいわぁぁぁあああ!!!」
「頭を隠せぇぇぇえええ!!!テーブルの下にぃぃぃいい!!!」

ワー、キャー

きっひっひぃっ
サカは借りた服を脱ぎ捨て、元の姿に戻る。

「ショオーがあこんれえだけでえええ終わあるわっきゃあああなっかろおおおもおおおん。第二いラウンドオよおおお。」
「ちゃんと良きタイミングでヒナさんに連絡しといたよ。あっちも上手くやったみたいだね。」

ステージ開演前に遡る。

**********

記念館地下二階。
会長を押えたころ。

「ヒンナア、おんめえはあソートオの合図がああったあらあ、こいつうでえぜえんぶうの檻いちゃあ開けてえ、ぜえんぶう引き連れてえ一階のおホールのお壁え?ぶち破ってえこおおおい。」

会長から奪ったマスターキーを渡す。

「私がですかぁぁぁああああああ???!!!食べられたり、犯されたり、しまぁっすぅぅぅうううええええええんかぁぁぁぁあああああああ???!!!」
「でえじょおうぶうでえええい。こいっちゃあああがあいっるかあらあよおおお。」
「うぅ…助けてくれる?サーちゃん。」

グルァ

こうしてヒナはサーベルの威光を借り、ソートの合図を受けて全部の動物を開放した。

「皆んなあっちあっち!あっち行ってぇぇぇええええええ!!!」

ゴォォォォオオオオオオオアアアアアアアアアアアア!
フンギョォォォオオオアアアアアアアアアアス!
ギュイギュイギュゥゥゥィィィイイイイイイイ!
ブンムゥゥゥォォォォオオオオオオオオオオオ!

サーベルに呼応して奮起する動物達。一致団結して一階まで駆け上がる。

**********

「いたいた、社長ぉぉぉおおおおおお!!!ちゃあんと誘導してきましたよぉぉぉおおおおお!!!サーちゃんのお陰ですぅぅぅううううう!!!」

ひょっこり
袖からヒナが姿を現す。

「おおおーおう、ナイッスウウウ。」

ドオッゴォォォォオオオオオオオオオン
ステージ裏に強烈な衝撃が加わる。壁はまだ破れない。

「活きがあいいーいいなあああ。ひっさしぶりいのシャバシャバアにいいい、よんろこびいがあ抑えきれえねえええんだあなあああ。愛い愛いいい。」
「人間への恨みもありそう。ずっと閉じ込められてたしね。」

ズドォッゴォォォォオオオオオオオオオオン
ビシッ、ビシビシビシビシビシィッ
強烈な衝撃。壁に大きな亀裂が入る。

「気張れ気張れ気張らんかああああい。おんめえらあがあ望おむ世界はあすんぐそっこだんぞおおお。」

ズダォォォッゴォォォォォオオオオオオオオオオオン
ビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシィッ、グラグラグラグラグラグラグラグラァッ
強烈な衝撃。壁がもう崩れかかる。

「世界に我が物顔おでえのっさばるう人間達へえええ、挑戦じょおーおおをお叩っきいつけるうがあいいいーいいなあああああ?」

ビッッッキィィィ
ステージ裏から光が漏れる。

ズゥゥゥォォォオオオオッッッグゥゥゥウウウウアアアアアアアッッッッッシャァァァアアアアアアアアアアアアアアアアン
壁が崩壊した。自由を手にした動物達が会場に雪崩れ込む。


グルゥゥゥウウウウウウアアアアアアアアアアア!
ブァァァァォォォォオオオオオオオオオン!
ゴォォォッッッハハハハハハアアアアアア!
ギィィィイイイイエエエエエエエエエエエ!
グッショォォォオオオオオアアアアアアス!
きっゃっひゃっひゃっひゃあ

「さあああーーーあああ行っけえええ!!!森羅万象のお動物たっちゃあああああ!!!今ここにい、上ええもお下あもおなあああいい、食うかあ食われるかあのおおお、真に自由と公平のおおお、久遠に求むる大フォーラム(ユートピア)があああじいっつううげええええんしいったああああああああああっひゃああああっひゃあああああああああああ!!!!」

会場内、人間には阿鼻叫喚の地獄絵図。

「何なんだこいつらぁぁぁぁああああああ???!!!来るんじゃねぇぇぇえええええええ!!!!」
「逃げろ逃げろ逃げろぉぉぉおおおおおおお!!!!」

ザッシュ、ザシュ
グッチャ、グッチャ
ブッチィ、ブッチィ
ドガッ、ドガァッ

「きゃあああああああげぇっ…」
「うわあああああああぐぅっ…」
「助けてくれええええぼぉっ…」


広い会場で動物達はのびのびと大はしゃぎ。ノロマな人間がどんどん屠殺されていく。

ギョォォォオオオオオオアアアアア!
ガァッシャァァァアアアアン
プテラノドンが巨大シャンデリアに体当たり。

ブッチィィィイイイイ
支えが外れ、シャンデリアが落下する。

ヒュゥゥゥウウウウウウウウウ
バァァァアアアアアッッッジャァァァアアアアアアアアアアアン

「ぎょわぁっ…」
「ひげぇっ…」
「びでぶぅっ…」

多数が押し潰された。血の簡易プールができる。
そんなこんなが起きつつもステージ上。サーベルがサカの傍に佇んでいた。

グルゥ…

「何いしってえんだあ。行くんだあよお。」
「うぅ…社長ぉ、うちで飼うこと出来ませんかぁ?散歩もしますし、トイレの世話も全部しますからぁ…」
「ダアメよおおお、ダアメダアアアメエエエエいい。そおんなあことをばあーああっかありい言ってえええ。すぐにい面倒になってえええマザアーにいやっらせえるうんでっしょおおおおお?」
「そんなことないもん!ちゃんとやるんだもん!ママのバッカァァァーーー!!!あああぁぁぁ~~~ん!!!」
「コントいいから早くして。。せっかく確保したルート潰れちゃうから。」

ぴょん
サーベルがステージを降りる。

ザッシャ、ザッシャ
数歩進んでから、

くるっ
振り返る。サカの目を真っ直ぐ見つめる。

「世界があおんめえええをお待ってるぞおおお。せえいぜえい楽しんめえええなあああ。」

ガァゥ
くるっ
ザッシャザッシャザッシャザッシャザッシャァァァアアア
地獄絵図の中に駆けて行った。もう振り返らなかった。

「ばいばぁい…強く元気に育つのよぉ…あ、声優さんは狙わないでねぇぇぇえええええ!!!作品の途中で降板って白けるからぁぁぁあああああああ!!!」
「見分けつくわけがないでしょ。」
「さあああってえとお。俺ちゃあんのお用事はあ済んだあしい、けえーえるうかあああ。」
「そうだね。準備は出来てるし、さっそく出発しよ。案内するよ。」
「シゴデキイだあんなあああ。何いを用意いしちゃあってえくれてえええんのおおお?」
「どこの門から出ればいいんですかぁ?」
「いや、どの出入り口も人が詰まっちゃってる。正門には勇壮もいるしね。やっぱり地上からはキツい。だから、屋上に行こう。」
「へぇ?」
「あああん?」

一方その頃。
記念館正門前。

「ぎゃぁぁぁああああああ!!!!死ぬぅぅぅうううううう!!!!食われるぅぅぅぅうううううう!!!!」
「おいさっさとどけよぉ!邪魔だよぉぉぉおおおおおおおおお!!!!」
「押すなって!絶対押すなってぇぇぇえええええ!!!」
「誰かぁぁぁあああああ!!!助けてぇぇぇええええええええええ!!!!」

客が死に物狂いで我先にと外へ飛び出していた。

「隊長、何か中で恐竜とかが大暴れしてるみたいで。客がめっちゃくちゃやれらちゃってます。」

はぁー

「ペットに手を噛まれたってことだろ。道楽で禁忌に手を出すとロクなことがない。帰るか。」
「流石にマズいですって。ほら、中に逃げ遅れた小さい子とかいるかもしれませんよ?」
「む…そうだな。今後世界で芽を出す素晴らしい可能性のため一肌脱いでやるか。」
「これで説得できんの、やっぱキモいですね。」

ドォッドォッドォッドォォォオオオオオオン

「うげぇっ…」
「ばかぁっ…」
「むりぃっ…」

マンモスが人間を踏み潰しながら正門から出てきた。

ブッモォォォオオオオオオオオオ!

「うっわぁ…マジモンですよこりゃあ。ちょっと感動しちゃいます。」
「どうでもいい。やるぞ。」

ガチャッ
背に担いでいたソードを下ろし、柄を握り締める。

「神肌、起動。」

ヒィィィイイイイイイイイイイイ
高周波電磁パルスが刀身に流され、超振動に満ちていく。

グッ
グググググググゥッ
腰を落とし、ソードを下段に構える。

ドォッドォッドォッドォッドォォォオオオオ
マンモスは真っ直ぐ東宮寺の下へ。東宮寺は目を閉じ、

ふぅー
息を吐く。

バオオオオオオオオオオオオ!

カッ
目を開く。

「断空斬。」

シュッザァァァァアアアアアアアン
一瞬。放たれた斬撃の弧はマンモスを正面から捉えた。鼻、頭、胸、腹、脚の全てを通過し、その骨と肉を完全に断ち切った。
ついでに正門の上についていた榛勃佐巨大像も粉々にした。

ブォ…
グラァッ
ズッズゥゥゥゥウウウウウウウウウン
真っ二つにされたマンモスだったものは力なく地面に崩れた。

「おぉ、いつ見ても爽快ですね。この調子で他のも全部やっちゃってくださいねぇ。」
「それより『断空斬』ってネーミング、どうだ?ふと思いついたんだが、悪くないだろ?」

東宮寺はちょっと嬉しそうにそう言う。童心はいくつになっても失われないものだ。

「あー…いいんじゃないですか(どうでも)。」
「だよな?でもちょっと空に関係無い気もするから、考え直した方がいいかもな…自分の名前を入れてみるか、『慧弥・刹那一閃』とか。」
「はいはいかっこいいかっこいいですから。さっさと片付けちゃいましょ。」

勇壮は動物達の鎮圧にかかる。
その様子を、高い所から見下ろす集団がいた。

ババババババババババババババババ

「ふぉぉぉぉおおおおーーー!!!高いですねぇぇぇええええええ!!!人がゴミ粒くらいに見えますよぉぉぉおおおおおお!!!石投げたぁぁぁぁああああああい!!!」
「はあっはあああっふうあああ。上から見んのおもおオッツウなあもおんだなあああ。人間のお欲深さあああ、醜さあああがあ一目えにい見えらあああ。」
「ね、いいでしょコレ。下がゴタゴタしてる時は、やっぱ上からさっさと逃げるに限るよ。」

一行はソートが手配したヘリに乗って記念館を離れていた。

「それにしてもよく準備できましたよねぇ!ソートさん、ありがとうございますぅ!」
「もっと褒めて。まぁ運良くそういうレンタルおじさん見つけたから。『ヘリの送迎出来ます』って人。ね、おじさん。」

運転席のおじさんに声を掛ける。

「えぇぇぇーーー?!あんだってぇ?!耳が遠くてなぁーんも聞こえねぇよぉ!あれかぁ?!ちゃんと着陸できっかぁ心配なのかぁ?!あぁーんしぃーんせぇーい!!!おいらはぁ自衛隊でヘリを運転してたベテランよぉ!六年の経験をフルに発揮して、ちゃぁーんと送り届けてやっからよぉ!心配すんない!」
「ちょっと心許ない年数ですけど。」
「まぁ大丈夫でしょ。ここまで来れたし。」
「…おおーおう。おファックのやっちゃあ、よおーおお頑張っとるっちゃあーああなあああ。」

正門を見下ろすと、溢れてきた動物達を外に出さないように勇壮が積極的に始末しているのが見える。

「わ、本当だ。すごぉい、バッタバッタと切り殺しちゃってますよ。サーちゃん、大丈夫かなぁ…」
「ほぼ隊長さん一人でやってるね。刀やっば。あんなのが会場の中にいなくて良かったよ。」
「…そおーおおだあなあああ。」

ズッ
ズゥゥゥゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ
サカが過去一際どい殺気を放つ。

「んぬぅぅぅううううおおおおおお???!!!ちょっとちょっと、社長ぉぉぉおおおおおお???!!!」
「わわっ、なんだぁい?!」

おじさんも動揺して運転に支障が出ちゃう。
この殺気は地上の東宮寺まで届いた。

「…」
「隊長、どうしたんですか?手が止まってますよ。ささっと切っちゃってくださいよ。」

東宮寺は空の一点を見つめたまま動かない。

「隊長ってばぁ?」
「…塑月(さかつき)、か。いたんだな。」
「はぁ?」
「まぁ、約束したし、な。」

グッ
グググググググゥッ
深く腰を落とし、ソードを下段に構える。

ババババババババババババババババ

「あれ?隊長さん、固まってないですか?お腹でも痛くなったんでしょうか、アニサキス?」
「ヒイーナアー、ちょおっとおすっこんでえなあ。」
「へ?」
「来るぞお。」

ギリッ
ギリギリギリギリギリィ
サカがバットを握る。

ふぅー

「断空斬。」

シュゥゥゥッザァァァァアアアアアアアアアアン
一瞬。斬撃がヘリ目掛けて飛んでくる。

きひっ
シュッギィィィイイン
バッッッジャァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアン

「???!!!きゃぁぁぁああああああああああ!!!!」
「?!何何?!」
「???!!!ひぇぇぇぇえええええ???!!!何だ何だ一体ぃぃぃいいいいいい???!!!」

斬撃がヘリを直撃…する間際にサカが弾いた。

「びっっっくりしたぁぁぁああああああ???!!!何ですか今のぉぉぉおおおおおおおお???!!!」
「あ、あああ、あああああああああ!!!ど、動悸が、胸のドキドキがぁぁぁああああああ!!!うぅ、手が、手が震えるぅぅぅうううううううう!!!大丈夫大丈夫、落ち着け、深呼吸しろ、俺はベテラン、経験豊富なヘリ運転手、五年の月日を捧げた努力家、大丈夫…」
「ちょっとちょっとおじさぁぁぁああああん???!!!ヘリ傾いてるからぁぁぁああああああ!!!ちゃんと運転してぇぇぇえええええええええ!!!」
「それに一年鯖読んでんじゃないですかぁぁぁあああああああああ!!!!嘘つきぃぃぃぃいいいいいいいいいいいいい!!!!」

ギャー、ワー
ババ、バババ、ババババババババババババ、ババババババババババババ
ふらふらと飛んで消えゆくヘリ。
お互いの騒ぎを尻目に、サカと東宮寺は目が合っていた。

「まあ、きゅうーだあいてえんだあなあああ。」
「クソ野郎。」

どんどん遠くなるヘリ。一方、まだまだ被害が広がる記念館。

「ねぇぇぇえええ!!!隊長ぉぉぉおおおおお!!!助けてくださいってぇぇぇええええ!!!俺らじゃキツいからさぁぁぁああああ!!!プテラノドンとか飛んでて届かないんですよぉぉぉおおおおお!!!」
「今行く。」

隊長含め勇壮が中の鎮圧に向かった。
こうして豪雁撫黎榛勃佐生誕祭は、予想外の惨劇によって、本人の死亡と膨大な死傷者を出して幕を閉じた。
そして、これら一部始終を楽しんで観戦していた男が一人。

東京、品川。
とある超高層ビルの最上階。

「うわぁっはあっはあっはああああああああああ!!!!まっさかねぇ、あのおじいちゃん殺すだけじゃなくて、ここまでやっちゃうなんてさぁ!すんごいよぉ、これは!まさに史上に残る大馬鹿だぁぁぁあああああ!!!!面白過んぎぃぃぃいいいいいい!!!!」

豪皇院天馬、大爆笑。

「し、失礼します!榛勃佐様がお亡くなりになったことで、豪雁撫黎傘下で内部分裂が連鎖しています!お互いの企業を乗っ取ろうと無茶な経済競争が起こってしまって…!」
「報告します!先の件で豪雁撫黎傘下を中心に、豪皇院全体の株価が下がっています!平均十二パーセントの低下です!」
「あ、あの!豪皇院の今後について、総理が至急お話したいとのことです!スケジュールはいかがでしょうか?!」
「申し上げま…」

ッバァァァアアアン

「うぅぅぅうううううううっっっっっっるるるぅぅぅぅううううううううううううううううっっっっすぅぅぅぅううううううううううううううううううううえええええええええええええええええええええええええええええええええええあああああああああああああああ!!!!!!!!いぃぃぃいいいいいいいいんむぅぅぅううううううああああああああああいぃぃぃいいいいいーーーーいいいいーーいいいとぅぅぅううううおおおおおおおおおおっっっっっっっくぅぅぅうううううううううおおおおおおおおおおおおおおおおああああああんどぅぅぅぅううううううううううううううううあああああああああああああああああああ!!!!!!!じぃぃぃぃいいいいいいいいいいいいいいゃぁぁぁぁああああああああああああああああああああああんむぅぅぅうううううううううううううううああああああああああああああああああああああしゅぅぅぅぅううううううううううううううううううんでぃぃぃぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいええええええええええええええええええええええええんぬぅぅぅぅううううううううううううううううえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええあああああああいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!」

感動の余韻に水を差してくる部下に、天馬が台パンしてキレた。

「「「「も、申し訳ございません…」」」」
「面倒臭いんだよ、会社がどうとかさぁ。血筋的に僕が会長やってるってだけで、ホントは誰でもいいんだから。」
「そんなことを仰らないでください。あなた様の実力あってこそのそのお立場です。」

怒られなかった高橋がしゃしゃり出てくる。

「して、これからどうなさいますか?」
「そーだねー、まだ準備終わってないけどさぁ、一回会ってみたいよねぇ。『噂のあの人に会ってみた!』『この感動を伝えたい!』って気分。」
「は、はぁ…では、こちらにご招待を?」
「そ。上手い感じに誘っといてよ。いつでもいい、向こうの都合でいいからさ。欲しい物は何でもあげちゃって。なるべく情熱的に、ね。」
「かしこまりました。さらに身辺を調べ、早急にお招きいたします。」
「うん、よろしくぅ。君らも一旦出てって。後で聞くから。」
「「「「か、かしこまりました…失礼します…」」」」

バタン
部屋に一人になった。

「はぁ、君が羨ましいよ。この腐った世界で、自由自在に自己主張して生きている。この僕にも出来ないことだ。」

ギッ
スタ、スタ
椅子を降り、窓に近づく。目下には東京の街が果てしなく広がっている。

「あれも、あれもあれもあれも、全部いらない。手に入れはしたけど、つまらなかった。」

ギュゥゥゥ
拳を強く握る。

「だからこそ、これら全部ぶっ壊してでも、僕と面白おかしく踊ってほしいんだ。期待しちゃうからね?」

サカに忍び寄る、さらなる大物の魔の手。戦いを終えたばかりの彼に、一体どんな展開が待ち受けているのか。
続く。

しおり