魂の世界
そこは白い世界でした。
魂の世界です。
そこら中に淡い色をした球体がふわふわと漂っています。
その球体こそが魂なのです。
ちなみに私の色は淡い黄色でした。
その世界で唯一、はっきりとした形を持った存在がいました。
それがあの人です。
名前はヨハク。
世界を創造した神です。
自分が創った世界を眺めながら酒を飲むのがヨハクの日常です。
ヨハクは人の姿をしていました。
青い瞳に白く長い髪の、中性的な顔立ちをした年齢不詳って感じの姿でした。
いつも気だるげな顔をしていて、寝っ転がって酒を飲んでいました。
そして、ヨハクは魂たちに向けて色々なことを教えました。
教える、というよりも自分の考えを伝えるという方が正確かもしれませんけど。
ところで、魂にも種類があります。
人に生まれ変わる魂もあれば、動物に生まれ変わる魂もあれば、植物に生まれ変わる魂もあります。
そして人に生まれ変わる魂の中でも、魂の世界での記憶を引き継いで現世に生まれ落ちる魂があります。
それが聖女となる魂です。
なので、聖女というものは総じて生まれる前の記憶を持っていて、神に会ったことがあるのです。
正確に言えば、聖女以外の人も魂の世界で神に会ったことはあるのですが、その記憶は生まれる前に無くしてしまいます。
人間で記憶を引き継ぐのは聖女だけです。
今『人間で』と言ったことで察しの良い方はお気づきになられているかと思いますが、同様に動物や植物も記憶を引き継ぐ個体があります。
まぁ説明はこのくらいにして、私には魂の世界での友達がいました。
生まれる前のことを考えているうちに、私はその友達のことを思い出していました。
彼……なのか彼女なのかもわかりませんが、とりあえず彼と呼びましょう。
彼はおっとりとした性格で、私はいつも彼と一緒にヨハクの説教を聞いていました。
彼が人間に生まれ変わる魂だったのか、はたまた動物や植物なのか、そんなことも分かりません。
それに、現世と魂の世界では時間の流れが違います。
彼は私より早く生まれ変わりましたが、私の体感的にはその一か月後くらいに私も生まれ変わりました。
しかし現世で生まれるタイミングはきっと全然違ったはずです。
もしかしたら百年ずれているかもしれません。
彼に会える可能性は絶望的に低いですが、この旅で彼が生きた痕跡を少しでも発見できたらいいなと思いました。
私の旅に目的が一つ増えました。