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生まれる前のこと

 あからさまに肩を落として図書館から出てきた私にバウワウが駆け寄ってきました。

「ずいぶん長かったねぇ。おじいちゃん猫になるかと思ったよ。それで、どうだった? なにかいい案は浮かんだかい? まぁその表情から大体察しはつくけどさ」
「お察しの通りよ。収穫ゼロ」

「だろうね。じゃあ次はどうするの? ……ってかその前にお昼にしない? お腹ペコペコだよ」
「そうね。そうしましょうか」

私たちは近所の公園に行って、ベンチに腰掛けました。

ご飯をあげると、バウワウは待ってましたとばかりに勢いよく食べ始めました。

「モグモグ、うまい! あれ、アルマは食べないのかい?」

「んー。なんだかあまりお腹が空かないのよね。プロテインを飲んだせいかしら」
「かもねモグモグ」

バウワウが食べ終わるまで、私は空を見上げていました。

神は遠い空にいるらしいですが、実際どうなのでしょう。

私があの人と過ごしていたのは生まれる前のことなので、この世に生まれ落ちた今、あの場所がどこにあるのか分かりません。

もしかしたら他の聖女に訊いたら分かるかもしれませんけど。

ボーっと空を眺めていると、生まれる前のことが頭にぼんやりと浮かんできました。

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