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旅する、本屋さん

「本屋さんは、きのう死んだパパと、どういう知り合い? 友達だったの? どうして旅をしているの」
「君は、本に書かれている物語が好きかい?」
「本の物語、大好き」
「おじさんもだ」
「で、どうして旅しているの?」
「この世は、本の物語以上に面白い話が転がっているからさ」
「どういう意味?」
「分かりにくかったかい? お嬢ちゃんも、いずれお母さんやお父さんたちと同じように結婚して、君みたいな子供を産み、育てる。それは、すごい冒険譚なんだよ」
「お母さんたちが、大冒険してたってこと?」
「うんうん、君はかしこいね。その通り、君のご両親は実は勇者で冒険者なんだ」
「そうは見えなかったけど」
「うむ、やっぱり、お嬢ちゃんにはちょっと早かったかな」
「でも、お嬢ちゃんの物語の結末を読ませてもらいに来るときには、私の言った意味がお嬢ちゃんにも分かるんじゃないかな」
「私の物語の結末?」
「うん、世の中は人の数だけ面白い物語であふれていて、いまだに読み尽くせず、旅をしているんだ」
「ふ~ん、なんか難しいお話ね」
「ははは、まだまだ、お嬢ちゃんは絵本の年頃ということかな」
「絵本、大好き」
「うんうん、よいよい、いまはそれでいい」

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