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番外編②☆食事会

理香の結婚式が終わって四ヶ月経ったある土曜日、
理香の実の両親から話しがしたいと連絡が来た。

場所は家から少し離れた料亭で向こう持ち。

「来てくれてありがとう」

あっちはもう来ていた。

私とマー君、理香と旦那さんの四人は緊張していた。

彼も理香の事情を知っている一人だ。

話しの内容は何となく分かっていた。

多分、理香が私たちの呼び方を
"お母さん"と"お父さん"だったことしかない。

「それで、話っていうのは?」

理香は興味なさそうに聴いた。

「結婚式の時二人を
お母さん、お父さんって呼んだだろう?」

それが?
とめんどくさそうに理香が聞き返す。

「何であんなことしたの?」

今度は母親が訊いた。

「本気半分当てつけ半分、ただそれだけよ」

来る前からイライラしてるのは分かってたけど
さっきよりも更にイライラしている。

早く帰りたいのだろう。

話しをしていると食事が運ばれて来たので一時中断となった。

気まずい雰囲気の中誰も喋ろうとしない。

この席が一番奥でよかった。

三十分後、食事もデザートも食べ終わり話を再開させた。

「さっき、当てつけって言ったな」

「そうだね。

離婚後、どっちかでも私に
連絡をくれたならあんなことしなかった」

二人の目は見ずにぶっきらぼうに答えた。

あんまり話したくないのだろう。

私たちだってあの時言った様に許したわけじゃない。

「理香さん」

隣に座ってた彼が理香の目元に指を近づけ涙を拭った。

あっ……

私はバッグからハンカチを取出して理香に渡した。

『理香、何時も言ってるでしょう
泣きたい時は泣いていいんだよ』

二人は何も言わず私たちの動作をただ見てるだけだった。

『そうだぞ、此処が外だとか気にせず泣いていいんだ』

マー君も理香を慰める言葉をかける。

「華蓮、匡輝さん」

声を押し殺して私たちに抱き着いて理香が泣いた。

理香が泣き疲れて眠ってしまったので食事会はお開きとなった。

『離婚後、何で理香に連絡しなかったんですか?』

別に離婚したからって子供に連絡しちゃ
いけないわけじゃないんだからすればよかったのだ。

そうすれば、結婚式の時の様なことを
理香だってしなかったと自分でも言っていた。

「理由はなかったんだが何となく連絡
しずらくてとうとうしないままになってしまったんだ……」

ありえない!!

普通なら絶対にありえない。

この人たちは馬鹿何だろか?

はぁ~

いい大人がそんな理由で自分の子供を
傷付けたのかと思うと呆れて何も言えない……

『今日は帰りますけど明日からは
ちゃんと、理香に連絡してあげて下さい』

これはきっかけだ。

「そうするわ」

よかった。

彼の背中で眠っている理香の頭を私は撫でた。

車の後ろのドアを開け二人が乗り、
私が助手席に乗ったのを確認してマー君がエンジンをかけた。

『俺たちは先に帰ります』

「気をつけて」

理香の両親が自分たちの車に乗ったのを見届けた。

私たちはお辞儀をして家まで帰って来た。

理香はまだ眠っている。

『よっぽど溜め込んでたんだな』

家に着き、一休みしているとマー君が未だに
眠っている理香を見て言った。

私たち三人は黙ってしまい沈黙が訪れる。

「あれ?」

そんな沈黙を破ったのは理香本人だった。

『おはよう』

もう夜だけどそう言ってみた。

「此処は家?」

『そうだよ、理香がずっと住んでた家だよ』

そういえは、理香が此処へ帰ってくるのは久しぶりかもしれない。

「久しぶりに帰って来たんだね」

理香は嬉しそうだ。

『今日は二人共泊まって行きな』

マー君の提案で理香たちはお泊りが決定した。

『部屋、そのままにしてあるからね』

「本当に? 嬉しい」

こうして、四人で沢山語り明かした。

翌日、朝一番で理香に抱き着かれた。

「華蓮、うんんお母さん、
ベッド新しいの買ってくれたんだね」

結婚式の時の様に"お母さん"と呼ばれけどまぁいいか。

『そうだよ、理香のために二人で買ったの』

実家がそうだけどちゃんと私の部屋が残っている。

流石に新しいベッドは買ってくれなかったけどね。

理香が喜んでくれたならそれでいい……

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