第三一話☆理香の結婚
それから五ヶ月後、理香がこの家を出て行く日が来た。
彼と結婚するにあたって
二人で暮らすことになったらしい。
まぁ、彼ならきっと理香を幸せにしてくれるだろう。
『何時でも帰って来てね』
荷造りを手伝いながら言う。
「華蓮、ありがとう」
あのことがあってからはずっと一緒に暮らして来たんだもん。
此処は理香の第二の実家だ。
『どういたしまして』
また、マー君と二人っきりの生活が
始まるんだと思うと少し不思議な感じだ。
『なんか、家が広いね』
理香が出て行ってからか家の中が広く見える。
『そうだな』
マー君もしみじみと言った。
でも、理香の部屋はそのままにしてある。
帰って来る場所があるのは大切なことだから。
『ねぇマー君、
私ね理香が家を出て行った時
三人目の娘をお嫁に出した気分だったんだ』
そう、友人だけど一緒に暮らす内に
理香を母親の様な目で見ていたんだ。
『俺も同じだ』
本当に何処までも似ている私たちだ。
**数年後**
今日は理香の結婚式
あの時に音信不通になっていた理香の本当両親が
人づてで聞いたらしく会場に来ていた。
「久しぶりね」
私たちに声を掛けて来たのは母親の方だった。
『お久しぶりです』
声のトーンが低くなったのは仕方ない。
事実上、この人たちは理香から逃げたのだ。
どちらにもついて行かないと
言った理香を私たちの家に
居ることをいいことにそれっきり
何の連絡もして来なかった。
『私たちはあなたたちを許す気はありません』
あの日、理由はどうあれ理香から逃げた
この二人を私たちは許す気になれない。
何も答えない。
それだけ言うと理香の居る控え室に向かった。
親の様な気持ちで居る私たちは
例え生みの親だろうと一生許さない。
マー君と二人で決めたことだ。
二人は黙ったままそこに立ったままだった。