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第三話☆卒業式と新たな出会い

あれから、夏休みが過ぎ
受験も終わり、冬休みも過ぎ今日は卒業式。

結婚した時は無事に卒業出来るか
心配だったけど、マー君や絢菜、
それから、悠緋さんに助けられまた支えられ
今日、無事にこの学校を卒業出来る。

何度言っても足りないくらい三人には助けられた。

実密かに計画してることがある。

それは、六人でお花見に行くこと。

マー君・悠緋さん・絢菜・両親と私。

この話は、春休みになったら
マー君に話してみようと思う。

『卒業証書の授与も終わったところで
全員に聴いて欲しいことがある』

マー君が壇上に上がり、そんなことを言い出した。

体育館内はざわつく。

何を言おうとしてるのか解ったのは
クラスの皆だけで、苦笑いだ。

『三年三組、南華蓮』

うん……

わかってたよ。

「行ってきな」

絢菜が背中を押した。

仕方なく、皆の視線に晒されながら
壇上へ向かった……

『俺たち、実は結婚してるんです』

私が隣に行くと手を握った。

私たちを除いて
クラスメイト以外はあれこれと話し出した。

此処で、さっきまで黙っていた
悠緋さんがマイクを手に取った。

「皆さんお静かに」

有無を言わさない笑顔で周りを一瞬で黙らせた。

『親父、サンキュー』

マー君が苦笑いしなから
悠緋さんにお礼を言った。

流石理事長……

たった一言で皆を黙らせちゃった。

『ありがとうございます』

私もお礼を言った。

とりあえず、周りが静かになってよかたった……

「いいんだよ華蓮さん」

悠緋さんによると、この日に暴露することを
前々から二人で決めてたらしい……

もう、私にも
話してくれたら
よかったのに!!

「あぁ、二人を
非難する様な
言動は教師並びに
保護者の方々からも
一切受付ませんので」

周りの人達(主に保護者)が
何か言いたそうなのを
察して悠緋さんが
先に釘を刺した。

「まぁ、そういうことで
私達の話しは終わりです
華蓮さん、卒業おめでとう」

『ありがとうございます』

悠緋さんが手を出したからそのまま握手した。

体育館内ではクラスメイト以外が何も言えないままだった。

一騒動あった卒業式から
春休みになり、六人でお花見に行った。

そして、今日は専門学校の入学式。

苗字は"佐川"で通うことにした。

まぁ、そもそも、受験の時も佐川で受けたんだけどね

今日から新しい出会いと生活が始まる。

期待と不安を胸に新しい一歩を踏み出そうとしている。

だけど、一ヶ月後に出会う教師がマー君の
元カノだということ、そして、半年後には、
私を好きだと言う男の子が現れることまだ知らない……

その後、あの時の様にクラスメイトにバレるということも。

専門にも慣れ始めた五月半ば。

マー君が学校の近くまで迎えに来た時、
一人の女の先生に呼び止められた。

「佐川さん」

そこでマー君を見て驚いた顔をした。

『先生?』

返事をしない。

じっとマー君を見ている。

『どうしたんですか?』

もう一度、先生に話しかけてみた。

「彼は佐川さんの知り合い?」

今度は反応した。

『あぁ、夫です』

この歳で結婚なんて引かれるだろうか?

引かれようが気にしないのだが。

「夫?」

明らかに動揺した様子だ。

『はい、高二の時に結婚したので、
今年で二年目なんです』

先生は多分マー君を知っている。

「彼の名前を訊いてもいいかしら?」

成る程、確認したいらしい。

『佐川匡輝です』

私が答えると更に動揺したってことは
やっぱり、知り合いなのだろう。

『マー君』

車のマドを叩き、下りる様に促した。

『華蓮、どうした?』

私は少し離れた場所に居る先生を指して言った。

『マー君、あの人知ってる?』

疑問というより確認に近い。

『何であいつが……』

どうやら、マー君も知ってるみたいだ。

『誰?』

何となく検討はついてる。

『……元カノだ』

やっぱりそうだと思った。

「先生」

手招きして呼んだ。

戸惑いながらもこっちに歩いて来た。

『久しぶりだな』

車によっ掛かりなから話し出した。

『本当に匡なの?』

ふ~ん、"匡"って
呼んでたわけね。

『そうだよ、お前と同じ高校で
同じクラスで元カレの佐川匡輝だ』

高校時代の同級生……

納得した。

『彼女と結婚してるって本当なの?』

話している内に少し落ち着いたみたいだ。

『本当だ華蓮が高校在学中に結婚したんだ』

私を引き寄せながら質問に答えるマー君。

沈黙が続く……

春とはいえまだ冷える。

『くしゅん』

私がくしゃみをしたから心配してくれたみたい。

『華蓮、車の中に居ろ』

運転席のドアを開けて私を車の中に入れた。

何を話してるんだろう?

二人の会話は聞こえない。

私は左手に嵌めてる指輪をそっと撫でた。

十五分くらいしてマー君が車の中に戻って来た。

『話しは終わったの?』

運転席から助手席に移動しなから訊く。

『まぁな』

窓の外をちらっと見ると先生は
学校の中に戻って行く途中だった。

家に帰り、マー君に話しを聞いた。

先生とは高校一年の時に
半年だけ付き合ってたとのこと。

マー君に好きな人が出来たことで別れたらしい。

『そうだったんだ』

過去のことをウジウジと考えてても
仕方ないからこの話は終わらせた。

あの一件から五ヶ月。

またもや、問題が起きた。

今度は、私を好きだという男の子が現れたのだ!!

「あの、佐川さん」

その日の二時間目の休み時間
私は同じクラスの名前も覚えてない男の子に
廊下で呼び止められた。

『私に何か用?』

そう言うと階段まで行き、
人目がないことを確認して口を開いた。

「僕、佐川さんのことが好きなんです」

告白されてしまった……

でも私は人妻だ。

『ありがとう』

とりあえず、お礼は言わなきゃね。

『だけど、ごめんなさい
私、結婚してるの……』

謝った後で、左手を彼に向けた。

薬指に光るマー君から貰った指輪。

「そうなんだ……」

彼には悪いけど、私はマー君以外愛する気はない。

でも、友達にならなってもいいかもしれない。

『お付き合いは出来ないけど、
友達にならなってもいいよ』

笑顔で答えた。

「本当に!?」

彼は驚いて聞き返して来た。

『うん、それでもいいなら……』

あくまでも、彼がいいならって話しだけどね。

「ありがとう、これからヨロシクね」

交渉成立だ。

『こっちこそヨロシクね』

友達が一人出来た。

『私が結婚してることは皆には秘密だからね?』

彼に言い終えたところでチャイムが
鳴ったから二人で教室に戻った。

マー君に後で話してあげよう。

きっと、嫉妬して怒るだろうなぁ。

容易に想像出来て一人で小さく笑った。

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