泣きっつらに蜂.5
〔法印を学びたいのだろう?〕
問題の彼がヴェルダとよく似た声でたずねた。
——技を
けれどそれは、ヴェルダほど重要ではない。
セレグレーシュは、心中に浮かびあがった解答をそのまま
〔非合法に学べる裏の道……
つけこまれやすく、技術の確かさを疑われ、表では冷遇もされがちだ。技・道具とも充実した《家》で修めておくのが利口だと思うが……〕
〔関係ないだろ? おまえ、なんでそんなこと(を)言うんだ? おまえ、オレに《鎮め》になれっていうのか?〕
〔われではなく、君の話をしている。技能を修めたいのではないのか?〕
どう観ても原因がセレグレーシュの方にありそうな
〔セレシュ君。家を出たいなら、あの家はいつでも出られるんだから……いまは、彼女のことも考えてくれないかな?〕
彼がふたりの不和に
〔君がそのまま伝えたら、彼女も
〔自業自得だろう〕
女
〔追い出されても、わたしなりにやっていくわ〕
彼女なりに、どうやってゆくのか…――?
実物を見ると不安要素ばかりが目につくが……。
ともあれ、その人はその人で自立心
〔プルー、強がるのもいいけど、君自身が不利にならないようにね。
相手を観て、状況と可能性を考えて効果的と判断したら現実にどうするかは別として……事実を話すって。
〔…。そうかもしれない……〕
〔――いらぬ知恵をつけてくれる〕
彼女の納得のつぶやきに、
琥珀色の目をした
どうやら
セレグレーシュは身近な感傷に気をとられ、先のことを考えているようでいながら後まわしにしていて……
女
避けられない不都合・
〔
アントイーヴが上機嫌で場をとりまとめた。
〔世なれしていない女性に、ここまで
道を間違えたんだよね、プルー?〕
まわりの人間ことをよく考えてくれる、いい人のようなのに、ご都合主義的な
〔それだけでは妖威が現れたことを説明できない。おまえの行動も不審を買うと思わないか?〕
〔
わざわざ
その件に関して、ぼくは沈黙するよ。
ぼくは彼の可能性を高く買っているんだ〕
セレグレーシュが、わずかに
〔なんで?〕
〔君はきっと、どちらに
(…オレは……。…)
心力は別として、まだ褒められるほどの実力もない。鎮めになるつもりもないのだったが、それよりも……。
心理的に追いつめられたセレグレーシュは、この場にいる面々に視線をめぐらした。
女
そこの
アントイーヴは知らないのだ。
自分は、闇人を呼びよせるだけではない。
《闇人殺し》なのに……。
注目の度合いが異なる中にも、いまはそこにある視線のほぼすべてが、セレグレーシュを映していた。
〔ぼくは、こっちの彼から方向の
出どころに関しては、知らぬ存ぜぬを通せばいい〕
〔ずいぶんと都合のいい……〕
〔だいたい、そんな流れだったろう?
魔人……妖威に遭遇してしまったのは、
〔――法印が身近にあることに慣れた家の者が、迷ったすえに見つけた懐かしいものに誘われて足を止めても不思議はない。
目につく広場だったし。
堪えるようすなど微塵もなく、自儘に思案を働かせている。
(――ここから無事帰還を果たすことで、可とはされぬまでも、さほど悪い評価にはならないのかも知れないけど、この先なにもしなくても、助勢と解釈されそうな、ぼくの要素はごまかせない。
結果が
〔——まぁ、
どうあれ、この騒ぎがひっかかって、うやむやになりそうだし、それくらいの事情であれば、お目こぼしされる
だから、そうするといいよ〕
アントイーヴは、相手の指摘・意図がわかっているのかいないのか、のん気に話し続けた。