第9話 今度こそ
本日1話目です。よろしくお願いします。
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美味しく五年ぶり?のお食事を頂きました。
『ご馳走様でした』
〖お粗末さまでした〗くすくす
『あらあらまあまあ?なぜ、ご存知なの?』
こちらにも同じ言葉があるのかしら?
〖ふふふ。違うよ、教わったんだよ。最近ね〗
『誰に⋯あっ』
もしかして⋯?
〖命をいただくからありがとう。作ってくれた人にもありがとう。だから、感謝を込めて『いただきます。ごちそうさま』でしょう?〗にこっ
『⋯その通りです』
ああ⋯
〖あと、これもだよね?『ボン・キュッ・ボンのうらやまけしからんボディ!女の敵!』〗ビシィッ!
『⋯⋯』
ふ、ふふ⋯
〖僕の奥さんと娘がね?言われたんだよ〗くすくす
『⋯あ、あらあらまあまあ、流石、私の孫ね、よく、分かって⋯ふううっ』ぼろぼろ
ああっ!本当に生きてっ⋯!
『⋯⋯』
ぽんぽん⋯
精霊樹の精様が何を言わずに抱きしめてくれて、背中をぽんぽんとしてくれている。
〖ごめんね。貴女方を辛い目に合わせてしまって。全ては僕らの責任なんだ〗
主神様が頭を下げている?なぜ?
〖貴方のお孫さんはね?そもそも、貴方たちがいた世界に生まれるはずではなかったんだ〗
『え?』
どういうこと?
〖あの子はね?この世界の愛し子なんだ。世界中から愛され大切にされるはずだった。僕たちもね、とてもとても彼女の誕生を楽しみにしてたんだよ〗
主神様が酷く悲しそうな笑顔を見せた。無理矢理な笑顔を⋯私は黙って続きを聞いた
〖この世界もね、貴方のいた世界ほどではないけど、何人か神がいるんだよ。ここは魔法のある世界。だからね?貴方たちがいた世界と違って、何もかもが発展半ばなんだよ。もちろん、娯楽なんかは極端に少ない〗
なるほど、魔法があるがために、化学とかないから、色々発展しなかったのね。
〖それでね、一人の神だったヤツがね?そんな世界に飽きたんだ〗
『え?』
『⋯』ぎゅう
天界樹の精様が強く抱きしめてくれる
〖まずヤツは⋯今は邪に落ちて神ではなくなっているからヤツと呼ぶね。ヤツは僕たちの気づかないところで禁断の遊びを始めたんだ〗
淡々と語っているが、顔は辛そうに歪められている
『禁断の遊び⋯?』がたがた
嫌な予感がする
『⋯』ぎゅうっ
〖そう。地上の人達はね、こう呼んでるんだ『迷惑な異世界人』とね〗
『迷惑な、異世界人⋯』ドクン
『⋯』
〖そう。黒髪、黒目の異世界人。自分たちのことを勇者や、賢者と言い、チートだ!と騒ぐ〗
『⋯日本人?』がたがた
『⋯』
〖そう。ヤツは好んで地球の日本という所から、僕たちの目を盗んで転生させていたんだ。貴方たちの国はラノベっていうのがあるんでしょ?〗
『え、ええ』
転生して世界を救うっていうやつね
〖そう。転生させられたものたちは皆似たようなことを言ったんだよ⋯〗
『⋯何となく想像がつくわ』
でも、世界を救ったんじゃないの?
〖いいや〗ぶんぶん
違うの?
〖この世界にはね、倒すような魔王も、助けを必要としている国もないんだよ〗
ない?
〖そう。ないんだ⋯そんな世界で突然現れた得体の知れない者たちが『自分は勇者だ!俺がこの世界を救ってやる!』『お前たちのために自分が戦ってやるんだ!だから対価を払え!』『何をしても俺は許されるんだ!』などと騒いだ所で戦う相手などいない。すると、この世界の者たちはどう思うかな?〗
どうって⋯
『何を言ってるんだとか⋯』
〖何を言ってるんだ?とか、相手にしなくなるよね?すると、どうなると思う?日本人たちは〗
『⋯ど、どうなったの?』
聞きたくない⋯
〖『どうして魔王が居ないんだ!?』『俺は呼ばれてきたはずなのに』『なぜ誰も信じてくれない?』『なぜ誰も言うことを聞かない!?』次第におかしい事に気づくよね?そして⋯〗
『⋯』
〖自分は騙されたことに気づくよね?そして自分が孤独なことに気づくよね?そして、元の世界に帰ることも出来ない。そこで更に気づくんだよ、元の世界の家族にも、友人にも二度と会えないと⋯〗
『⋯』がたがたがたがた
震えが止まらない⋯
『⋯』ぎゅう
〖壊れるよね⋯。しかも彼らの言うチート⋯なまじ力がある者が暴れたら〗
『⋯あ』
ま、まさか⋯
『⋯』ぎゅうう
〖そうだよ。自殺した者もいた。この世界の者に殺された者もいた。だって、そうしなければ自分たちの命が危ないのだから⋯〗
『⋯』
なんてこと⋯
〖⋯ヤツは、それを見て楽しんでたんだよ。命を遊び道具にしたんだ。でも⋯〗
『⋯でも?』
嫌だ、聞きたくない
『⋯』
〖でも、ヤツは、これにも飽きたんだ〗
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この辺りのお話は、『転生初日に⋯』を、お読みの方はご存知かと思いますが、しばしおつき合い頂けたら嬉しいです。初めての方ももうしばしシリアスさんにおつき合い下さい。
よろしくお願いします。