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7話 津波の到来

 その日の明け方、彗星への迎撃ミサイル発射に向けてNASAでは緊張感が高まっていた。「3、2、1、ゼロ」とミサイルを発射。ミサイルは真っ直ぐ彗星に向かっていき、彗星に直撃した。
「やったー。成功だ。」
 みんなの歓声の中で、大きな声が聞こえた。
「まずい。彗星の破片が地球に向かっています。軌道を計算します。少し待ってください。えーと、1つが太平洋、フィリピンのマニラと日本の中間あたり、もう1つがメキシコ、そしてモンゴルにもう1つです。今からだと、これらを破壊するミサイルを打つ余裕がありません。」
「この地域の人達の安全を祈るしかない。まずは、関連する国々のリーダーに連絡しろ。」
 数時間後、それぞれの破片が衝突した。その中で、太平洋に落ちた破片の影響で、日本、台湾、フィリピン等の国々に400mクラスの津波が襲った。
「日本には申し訳ないが、我々は最善を尽くした。許してくれ。」

 朝10時ごろ、日本海沿岸には津波が押し寄せた。400mというと、日本の大部分の都市は水の中という状況だ。東京タワーの高さが333mなので、400mがどのぐらいかは分かるだろう。
 日本政府も、情報を得てから朝8時ごろ緊急速報を出したが、大半の人たちは逃げられる余裕はなかった。というのも、高尾駅でさえ標高190mぐらいなので、都心から車で走っても逃げられる距離ではない。更に、高速道路もみんなが逃げるので渋滞になってしまう。
 タンカー等も流されるなか、湾岸のタワーマンションも大きくダメージを受けた。これは地球規模の災害なので、東京だけの問題ではない。日本各国で標高400m以下の場所は、ほとんど壊滅状態となったのだ。

 山歩きをしている2人は、電波も届かず、ひと気も少なかったので、この事態に気づいたのは、安達太良山山頂付近で、12時を過ぎていたいた。
「なんだって、これじゃ日本が崩壊しちゃうじゃないか。」
「どうしましょう。」
「まず、麓に降りよう。予定のコースが一番近道だと思う。その後、車道で猪苗代湖の方向に行こう。実は、一緒に泊ると言われると困るので言っていなかったけど、猪苗代湖の近くに私のセカンドハウスがある。ネットで見ると、最後のニュースが400mの津波と行っているから、猪苗代湖の標高は500mぐらいだし、津波は大丈夫だ。」
「そうなんですか。お子さんとか大丈夫でしょうか。」
 河北は携帯をかけたものの、繋がらないらしい。
「わからないが、まずは進むしかない。」
 そこからだいぶ歩いたが、後ろから来た車に相乗りさせてもらい、夕方にはセカンドハウスに着いた。
「この後、1週間はここで過ごす予定だったから、食料は当面ある。また、現金もたっぷり置いてある。ただ、今後、東京からも何も届かないだろうから、当面は、現金で食べ物とかは買って過ごし、食品が流通しなくなってから、ここにある食料を食べよう。」
「TVって見えるかな? 電気はまだ付いているようだけど、いつまでかっていう感じですよね。東京の様子とか、どうなっているのか分からないですね。」
「まずは、しばらくここで過ごそう。」

  とんでもないことになっちゃった。私の部屋とかどうなっているんだろう。会社のメンバーもどうだろう。お父さん、お母さんも。想像したくないけど、何もかもめちゃくちゃなんだろうな。でも、私達は全く無傷で、当面は、ここで一緒に暮らすことになった。もう、お寿司屋さんはいけないんだろうな。いやいや、こんな不謹慎なことは考えてはダメだ。

 河北さんと一緒に暮らすことはできても、食べ物とか、水道とか、生きていけるんだろうか?子供とか考えていただけど、産めるんだろうか。結婚したいとは思っていたけど、いきなり共同生活って、どう役割分担したり、コミュニケーションをとっていけばいいんだろう。う〜ん、わからない。

 そんなことを考えているうちに、河北のセカンドハウスに着いた。
「お邪魔します。大きい家なんですね。びっくり。」
「まあ、入ってくれ。友達なんか呼ぶことはないんだけど、土地は安いから、せっかくだからって大きな家を作ってしまった。部屋はリビングの他に2つある。今井さんは、この部屋を使ってくれ。私はこの部屋。子供達とか来れば、その時に考えよう。台所は、そこ、バストイレはこちらにある。掃除とかしないとだけど、疲れているし、明日にしよう。ベットとかは、それほど、汚れていないと思う。シーツだけ、外で、叩いてほこりを取るぐらいかな。まだ電気は使えるから、冷蔵庫とかは大丈夫だ。」
「お風呂とか入れるんですか?」
「どうだろう、あ、まだ使えそうだね。ただ、今後、どうなるかは分からない。そういえば、裏庭に昔の井戸もあるから、これまで使ってこなかったけど、そこで、水は汲めるかもしれない。今夜は、まず汗を落として、ゆっくり寝よう。タオルはこちら。まず、先に入って。」
「はい。ではお言葉に甘えて。でも、埃もあるし、まず、ざっと、掃除してからお風呂に入ります。
掃除機とかどこですか。」
「電気が今後、どうなっているかわからないから、ほうきで掃除するね。ちょうど2つあるから、今井さんはこれで。まず、虫とか入らないように、窓を開けよう。」

 シャワーを浴びた後、2人は、缶ビールと缶詰で軽い夕食をとり、疲れていたこともあり、それぞれベットに入ると同時に眠りに落ちた。さすがに、こんな状況で追い出されることがなく、偶然にも2人での生活が始まった。
 翌日、2人は、近所のスーパーに買い出しに行ったが、今井は持っている現金で最初に買ったのは、長期間になることも考えて生理用品で、メークはできない生活になっても、それは見せたくないと思っていた。

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