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私はリサの宿屋での初仕事が終わって。かなりつまらなくなっていた。自分がワーカホリックだとは思っていなかったけど仕事がなくなってつまらなくなっているあたり、ワーカホリックだと認めなければならないだろう。偶然だけどリサのところで仕事がもらえた私はかなりの幸運だったらしい。今は次の仕事をどうやって見つけるか考えなければならない。
学校に通いながら次のことを考えている。ちなみに憂いのなくなったリサはかなり晴れ晴れとした笑顔になっていた。喜ばしいことだ。そのリサは私の顔を覗き込みながら話しかけてきた。
「パル。次の仕事のことを考えているの?」
「ん? そうよ。次の仕事をもらえるようにするにはどうしだらいいと思う?」
かなり真剣に聞いてみた。リサもかなり真剣に考えてくれている。宿屋の仕事は順調だそうだ。それを聞くと私も嬉しくなる。頑張ったかいがあるというものだ。順調と言ってもお客様は増えたわけではないそうだ。でも、いなくなった分が戻ってきて、少し増えた程度らしいい。でも、そのくらいがいいとも言っていた。あまり増えると家族だけで回すのは難しいから、丁度良いのだそうだ。そう言ってもらえると私としても安心する。真似する宿屋もいくつか出てきたらしいけど、サービスの程度はリサのところが一番らしい。そこは自慢ができると言っていた。誰自慢だ?と思ったけど嬉しそうだったので、それで良しとする。
そんなこんなで現状は満足しているらしいリサは気持ちに余裕があるらしい。私の相談に乗ってくれようと言うのだろう。私の目の前に座り、真剣に次の仕事を心配してくれている。今までリサのところで真剣に打ち込んでいただけに真面目に取り組む気持ちはわかってくれるのだろう。話を聞いてくれるだけでも私は嬉しいので、相談という名のぐちを聞いてもらっていた。話すことで次の案が浮かべばいいのだけど。
「ビラを撒いてみる? 相談承りますって?」
「ビラ? 町中で?」
「うん? だめかな?」
「お父さんたちに内緒だから、ばれないかな?」
「まだ内緒なの?」
リサが驚いている。まだ、というか。話す予定はない。その所は誤解しないでほしいと思う。話す予定のない事に驚いているリサはほっておいてうんうん、考えていると衝撃から立ち直ってリサが提案してきた。
「うちの宿屋にチラシが貼れないかお父さんに聞いてみる。多分、良い返事がもらえると思うよ」
「おじさんに?」
「うん」
驚いている私を気にする様子もなくリサは自信があるようだった。リサにしては不敵な笑みを浮かべながら言い切った。
「お父さんね。パルの報酬になにかしてあげたいって言ってたの。パルのおかげでウチの心配事がなくなったでしょう? パルが言ってたことをお父さんに言ったら友達は大事にしろって言われたし、お父さんも協力できることはするからって言ってたの。だからお父さんも協力してくれると思う。聞いてみるね」
「そうだったんだ。ありがとう。でも、宿屋の雰囲気を変えるようなチラシは良くないから。もし、許可がもらえたら相談させてね?」
「わかった。大丈夫だと思うけど確認するね」
「ありがとう。だめだったら無理強しくていいいからね」
「わかった。心配性だね」
私の念押しにリサは苦笑気味に答えてくれた。心配性は性分だと思う。こればったかりは仕方がないと思う。