260章 テオスの胃袋
テオスは30枚の肉を平らげる。
「何枚食べても、飽きない味ですね」
あれだけの肉を食べたのに、おなかを抑える仕草を見せなかった。テオスの体は、人間とは別物のようだ。
「テオスさん、白米を食べてみますか?」
テオスは米を知らないらしく、頭に大量のクエッションマークを浮かべていた。
「白米?」
テオスの世界では、米を食べる習慣はない。「セカンドライフの街」とは、主食が異なっている。
「実物を見せますね」
アカネは炊飯器にある白米を、茶碗によそった。
「これが白米です」
最高級の米なので、全体が煌めいていた。米を見ているだけで、レベルの違いが伝わってきた。
「ふっくらとしていて、とてもおいしそうですね」
箸は扱いにくいので、スプーンを渡すことにした。初心者であっても、簡単に扱うことができる。
「スプーンで食べてください」
「ありがとうございます」
テオスはスプーンで米を食べると、涙をこぼしていた。
「あまりにおいしいので、胸を打たれました」
茶碗に入っている米を、30秒くらいで食べてしまった。食べるスピードは、大食い選手を凌駕する。
「アカネさん、飲み物をください」
冷蔵庫の中から、メロン100パーセントジュースを取り出す。砂糖、添加物は一切使用されておらず、メロン本来の味を満喫できる。
「テオスさん、ジュースをどうぞ」
「ありがとうございます」
テオスはメロンジュースを、ゆっくりと飲み進める。
「すっきりとしていて、とっても飲みやすい味です」
砂糖、香味料などを入れないだけで、ジュースはここまでおいしくなる。添加物というのは、健康だけでなく、味も損ねている。