27.免震偽装を疑う女、話の組み立てが下手な女
…も、ようやく切れたパンケーキは無様にもゼリーからずれ落ちてしまった。
うまく切れない…。
ムスッとしながらクリームの乗ったパンケーキ部分だけを口に運ぶ。
「マスタぁ、これゼラチンをケチって
告げるも、当のレインはそれどころではない。
案の定と言おうか、彼女が告げる衝撃の事実は、静夜たちにことごとく鼻で笑われている。
一向に信じてくれない二人に、レインは苛立ちを覚えた。
「と、言うことは、匣の中身は
静夜の問いに。
「正確には
田中・昌樹の話によれば、サンジェルマンの依頼は、3ヶ月の間、箱を預かって欲しいとの事だった。それが最初の3ヶ月なのか、後半の3ヶ月なのかは定かでないが。
「ちょっと待って。記憶を受け継ぐって、それでは不老不死にならないじゃないの」
静夜は、当然とも言える疑問を投げかける。
「記憶や体験を受け継ぐ。それは広義的には不死と言えるんじゃないの?さすがに不老はアンチエイジングで頑張ってもらうしか無さそうだけど」
オカルトを駆使しておきながら、最後に頼るのはアンチエイジングとは…。
とはいえ、何かを後世に残したいと願うのが人の
匣を求める者の気持ちも解らないでもない。
“神が姿を現す”と言っていたが…。それも随分と広義的な思想である。
「で、貴方達を送り込んでまで匣を求めているのは誰かしら?」
核心はそこにある。
「現法王サマ」
実に簡単に何のためらいも無くお答え下さる。
もうちょっとハナシを引っ張るとか何か、演出というものがあるでしょうが。
拍子抜けする傍ら、だとすると、ちぐはぐではないだろうか?
「ちょっと待って。貴方達の宗教は絶対唯一神信仰じゃなかったっけ?今まで散々最先端医療に対して神への冒涜とか横槍を入れておきながら、いかがわしい人工生命体を欲するなんて、それこそ異端的な発想じゃないの?」
「アナタに指摘されるまでもなく、私も同意見よ。だけど、これはお仕事。ジジイが法を破ってまで不死を望んだとしても、彼の地位と権力は他者には覆すことはできない。だから仕事と割り切ってサンジェルマンと匣を探し回っているのよ」
まるでサラリーマンじゃない…。
とはいえ、静夜も検事時代に経験した、上司の理不尽な要求。
レインには同情する。
そこに、もうひとり邪魔者が登場する訳ね…。
「カリオストロという人物はサンジェルマンのお弟子さんな訳だけど、彼女たちは協力し合ってはいないの?」
「むしろ険悪ね」
だから、単語で答えるなって言うの!
質問する側としては、“話の流れ”というものを構築して説明して頂きたいものだ。
一から十まで話の骨格を組み上げて話を聞き出すのは骨が折れる。
「あー、肩が凝ってきたわ…」
思わず口にすると。
「こんな若い子たちが出入りするお店に足を運んだりするから。もう年なんだし」
心無いレインの言葉に。
目からビームを出してお前を撃ち抜いたろか!