124章 「アリアリトウ」
テレポーテーションのスキルを使って、「アリアリトウ」にやってきた。
移動時間を短縮できるのは、本当にありがたい。移動に必要となる時間は、労働に対するコストとなる。ストレスもかかるため、逆一石二鳥である。
「アリアリトウ」は、自然であふれかえっている。そのため、澄んだ空気が流れていた。吸っているだけで、幸せを感じることができそうだ。
気温は10度くらいで、「セカンドライフの街」よりも低い。服をしっかりと着ないと、風邪をひくリスクがある。
自分の身体に、寒さ防止の魔法を使用する。身体がぽかぽかと温まり、寒さから解放されることとなった。寒さから解放されたことで、テンションが20パーセントほどアップする。
「アリアリトウ」はホームネインが、90パーセントを占めている。それゆえ、外で生活する住民であふれかえっていた。遊牧民が生活しているように映った。
気温が低いにもかかわらず、住民は寒そうなそぶりを見せなかった。「アリアリトウ」の住民は、寒さに強いのかなと思った。寒さに強くない者にとって、純粋に羨ましい。
食料を満足に食べられるようになったからか、顔色はそこまで悪くなかった。生物の健康というのは、食べ物が作っていると思った。
服装については、質素な住民が多かった。食料を満足に食べられない住民が、服を揃えるのは厳しいようだ。
アカネは仕事を終えたら、衣類をプレゼントしようと思った。いい服を着ることによって、前向きな気持ちになることができる。服装は食べ物と同じくらい重要だ。
「アリアリトウ」の住民が、こちらに近づいてきた。
「アカネ様、ご飯をありがとう」
「アカネ様、白米がおいしかったよ」
「アカネ様、野菜がすごくよかったよ」
「アカネ様のおかげで、命が救われました」
「アカネ様・・・・・・」
「アカネ様・・・・・・」
こちらの世界においても、名前が広まってしまっている。ゆったりとした生活を送りたいので、全世界で有名になるのは避けたい。
街をうろついていると、見覚えのある顔と出くわすこととなった。
「アカネ、久しぶりじゃのう」
住民がボロボロの衣装を着ているからか、立派な衣装に感じられる。周りがあまりにダメすぎ
ると、普通のものがよく見えるから不思議だ。生き物が住む世界には、常に相対評価がつきまと
う。
「ゴッドサマー、久しぶりだね」
久しぶりに会ったものの、イメージはそのままだった。生き物の見た目は、簡単に変わることはなさそうだ。
「アカネのおかげで、住民が満足なご飯を食べられるようになったのじゃ。心から感謝しているのじゃ」
「どういたしまして・・・・・・」
「さっそくで悪いのじゃが、地雷処理の仕事をお願いする。アカネの超能力をもってすれば、数時間で終わる仕事じゃ。よろしく頼むのじゃ」
「ゴッドサマーの能力があれば、できるんじゃないの」
ゴッドサマーは呪術が使える。その能力で地雷を取り除けるのではなかろうか。
「わらわは地雷耐性がないし、強力なバリアを貼ることもできないのじゃ。地雷処理の条件を備えておらんのじゃ」
地雷を踏んだら、一瞬であの世にいくことになる。地雷耐性を持っていることが、仕事の絶対条件となる。
住民を巻き込まないよう、地雷の爆発を抑えるのも絶対条件。これがなければ、たくさんの住民が命を落とすことになる。
「アカネ、地雷スコープを渡しておく。これを持っていれば、地雷がどれだけあるのかがわかるはずじゃ」
地雷スコープは、バーコードとそっくりである。商品に通すことで、金額を表示してくれそうな気がする。
「今回の仕事は、2パーセントが紹介料として、差し引かれることになっているのじゃ。そのお
金については、こちらの住民の食料代などに使用されることになっている」
「セカンドライフの街」の、付与金とどことなく似ている。まったく別の国なのに、同じようなシステムがあるとは思わなかった。
50兆ゴールドの2パーセントは、1兆ゴールドである。それだけの金額があれば、100~200年の食料は安泰となる。今回の仕事を終えることによって、「アリアリトウ」の住民は最低限の生活を送れるようになる。