第四話
その日から、マークは何故か、わたしの世話を焼くようになった。
「スカート、短くないか?」
「飯、ちゃんと食ってんのか?」
「なんか肌荒れてね? 寝れてねぇんじゃねぇか?」
──正直、ウザい。
身だしなみから健康まで管理されている気分だ──そんなのは、家にいた頃の専属メイドだけで十分だったのに。
……まさか、姫らしくならないなら、姫のように教育しようってこと?
わたしの世話を焼くことで、わたしが姫のように女らしくなるとでも思ってるかしら。
我が家もこの学校に負けず劣らずの奔放主義だったから、所作の振る舞いとか教わってこなかったのよね……。それが今ここで響いてくるなんて。
もうちょっと上品な立ち振る舞いをしていれば、マークに目を付けられることもなかったのに……!
……いや、そんなことを今更悔やんだところでどうしようもない。
とにかく、今はただこの状況を受け入れる他ないのだから。
昼休みになって、わたしは席を立つ。すかさず、マークが近寄ってきた。
「おい、アン、どこ行くんだ」
「学食よ。お昼食べに行くの」
「オレも行く」
……このように、トイレ以外はお供のようについてくる。
「あのねぇ、なんでついてくるのよ」
「……放っておけないだろ、女らしく扱うな、なんて言ってるやつ」
どうして? 放っておいてくれていいのよ?
だって、わたしはもう立派な大人なんだから!
……と、声を大にして言えたらどれだけいいことか。
「じゃあ、ボクも行く〜」
「ぼ、僕もご一緒します!」
「……俺も」
ノアとコリンとデリックもついてくることになった。
四人の十六歳を連れて食堂に向かう図は、何だか乳母になった気分で、あまり心地の良いものではなかった。