第十話 呂布奉先、ローマを治める <序>
「でな、伯にい、結局親父は肝心のどこへ行くかは教えてくれなかったんだ」
可比能は一気にしゃべり終えると最後にそう言った。
可比能の話が終わると、伯はゆっくりと目を開けた。
脳裏には一つの結論が導き出されていた。
「わかったぞ、可比能」
「何がだよ?」細い目を丸くして可比能は聞いた。
「お前の聞きたかったことさ」
伯は村から空に目線を移した。風に雨の匂いが混じりはじめた。
「行き先はな、恐らく檀石槐がいる鮮卑だ」
「鮮卑…」
可比能はその名前を聞いて顔色を変えた。
北に見える黒い雲を見すえ、伯はまだ見ぬ草原の支配者達に想像をめぐらした。