第1話 俺らの会長は異世界人
ある日の生徒会室。
生徒会役員である俺、名城なだかはせっせと仕事を片付けていた。
部活が終わったのか、窓の外からは生徒たちの声が聞こえてくる。
あーあ。早く帰りたい。
仕事をちゃっちゃっと終わらせて、帰ってゲームしたい。
————数分前はそんなことを考えていた。
だが、今は全くもって帰りたくない。
このまま帰ったら、きっと俺は寝ることができない。
ずっーとそのことに悩まされて、結局一睡もできないまま朝を迎えることになる。
俺の気が変わった原因。
それは一緒に仕事をしていた人物にあった。
彼女はこの日本において珍しい銀髪を持っており、顔つきも日本人とは少し異なっていた。
この人って…………いつも異様なオーラを放っているんだよな。
他の女子生徒と同じ制服を着ているけれど、高貴そうに見えて仕方がない。
しかし、彼女の家は一般家庭。お嬢様でも何でもない。
まぁ、でも多くの生徒から慕われているし、真面目だし、そのせいもあるのかもな。
そんな彼女は口を動かしながらも、手は忙しくタイピング。
ほんとこの人は能力が高い。
締め切りは絶対に守るし、ミスはしない。むしろ他の人のミスをフォローしているくらいだ。
俺はそんな優秀な方と、仕事をしつつ、おしゃべりをしていたのだが。
「え? 今なんておっしゃいました?」
「だから、私は異世界出身なんだ」
俺は彼女の一言に一瞬思考が停止。
数十秒後、なんとか持ち直し、尋ね直した。
「……………………会長って…………え?…………異世界人…………だったんですか?」
すると、彼女はカチカチ打っていた手を止める。
そして、こちらに顔を向け、ため息交じりに言ってきた。
「ああ、そうだ。何度、言わせたら分かるんだよ、ったく」
「え?」
この人が…………異世界人!? つまり異世界で生まれたってこと?
どうやってこっちに来たんだ?
————いや、そんなことはどうでもいい。
なんでこんなに自然に生活しているんだ?
頭がカオス状態な俺は、
「え、え、え? えぇっ————!?」
1つの母音しか言えなくなっていた。
一方彼女はすでに仕事を再開。なんて冷静なんだ。なんて自然なんだ。
「そんなに驚くこともないだろう。他のやつは『へぇー、そうなんだー、異世界出身だなんて珍しいね』で話が終わったぞ」
「それ、絶対会長が変人と思われていますよ」
そう。
隣に座り黙々とタイピングをしている彼女こそ、この学園の会長、立川ラシャーナ先輩。
俺たちの生徒会長は異世界出身者だった。