ペット区画にも賑わいを
大陸間を渡れるような大型船の完成の前に、人は空を飛ぶことに成功する。
それは温めた空気を捉まえて空を飛ぶというやつで、飛行船と名付けられていた。他の世界からの漂着者が伝えたものだが、残念ながらまだ長距離航行が出来るほどには完成していないようだった。
それにハードゥスにも鳥型の魔物が生息しているので、空を飛ぶのも楽ではないのだ。なにせ魔法でも空を飛ぶ事が出来るが、燃費が悪いというのを横に措いても、やはり空を飛ぶ魔物の存在が邪魔をしている。空を飛ぶぐらいなら、地上を歩いていった方が安全だと言われているほどに、空を飛ぶ魔物は好戦的な魔物が多いのだから。
飛行船の開発・発展の遅れもそういった理由がある。もっとも、世界によっては既に人が空を飛ぶなど珍しくもないほどに発展しているのだが。
残念ながら、それぐらいの文化圏を築いている世界から人や現物が流れ着いたということは今のところは無い。そういったモノは古い世界に多く、古い世界ほど世界の穴への対策が行き届いているのだから。
なので、もしもそういった技術が欲しければ、その世界の管理者に何か対価を支払って人なり現物なりを受け取るという方法以外には難しいだろう。
もっとも、れいはその辺りの技術の知識も持っているが、わざわざそれを流してあげる予定はない。というよりも、れいの本体は最古の世界の管理者なので、外の世界の中で最も発展している世界はれい本体の支配下だったりする。つまり、最も近しい相手なうえに交渉相手としては悪くはない。するつもりはないが。
そんなわけで、海に続き空でも新たな進展があったというわけだ。大陸を渡る方法としては選択肢が増えたのは喜ばしいことだ。漂着物を集めた一角の外に出る可能性もあるが、その時も自己責任として干渉するつもりはない。
「………………」
ただそう思うと、ペット区画にも何か在った方がいいのだろうかと考えてしまう。現在ペット区画にはペットしか居ないのだが、やはりそれは寂しいかもしれない。
では何をと思うも、ペット達の餌やストレス解消の狩り用の生き物だろうか。ペット達は別に何か餌が必要というわけではないので、ほとんど娯楽としての狩りを楽しめるようにだろうが。
しかしそうなってくると、今度はペット達でも狩りが楽しめる程度の強さが獲物に求められてくる。漂着物を集めた一角に入らないようにしておけば問題ないだろうが、果たしてペット達はどれぐらい狩りをするのか。それ如何によっては獲物の繁殖力も調整しなければならない。
元々ペット区画は広いのに何も無かったので、そこに何か創造しようとしていたのだから丁度いい。というわけで、何を創造しようかとれいは思案する。狩りとなるとラオーネ達の意見も取り入れないといけないので、まずはそちらから相談しなければならないだろうが。
早速ラオーネ達の棲む奥地に移動したれいは、ラオーネ達を呼ぶ。方法は意思を乗せた力を発するだけでいい。後は数分程度待てばやって来るので、その間にもう少し詳しく思案してみる。
「………………需要と供給のバランスを見つつ、それを参考に獲物を管理出来る補佐も創造した方がいいでしょうね」
創造する獲物を何にするかはこの後決めるとして、その獲物を管理するための人材も用意しておいた方がいいだろうと判断したれいは、ラオーネ達が来る前に獲物の管理用の管理補佐を創造しておく。
ペット区画はかなり広いので、そうして創造した管理補佐は全部で三人。獲物の数にもよるが、管理する広さだけで判断すれば、三人では物足りないぐらいだろう。なので、三人のスペックは結構高い。おかげで三人でもペット区画を管理出来るだろう。……ハードゥスは今後も拡張予定なので、今のところは、という但し書きが頭に必要ではあるが。
そうして三人を創造し終えたところで、ラオーネ達がやって来る。ほぼ同時に到着したラオーネ達三体に、れいは微笑むように口角を上げる。
ペット区画の主な住民であるラオーネ・ヴァーシャル・シエルーチュの三体が到着したところで、まずは管理補佐を紹介していく。その後で獲物についての構想を話す。
それからラオーネ達三体の意見を聞きながら話し合った結果、陸と空に数種類の得物を放つことが決まった。ラオーネ達が楽しめるように強さもそれなりの獲物達。
繁殖力については、まずは普通の動物を参考に設定してから、様子をみながら調整していけばいいだろう。
次に獲物に適した地形を創造したり、ラオーネ達を愛でたりしながら準備を進めていき、数時間程度で全て完成した。それを確認した後、モンシューアの棲む漂着物を集めた一角の海はどうしようかと考え、大陸から大分離れた場所に用意すればいいかと結論付ける。それもこれから話に行けばいいだろう。
創造した獲物については管理補佐達に任せ、れいは海にも向かって移動するのだった。