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管理

 管理者達の間でれいの存在は有名なようなそうでないような、といったところ。古い管理者ほど知名度が高いが、新しい管理者はほとんど知らない。知っていても交流場の管理者という認識程度だろう。
 それはもうれいが表舞台に立たなくなったからなのだが、それでも知っている者は知っているらしい。
 おそらく古い管理者から話を聞いたのだろう。直接ではなかったが、れいの下に管理世界の見学をしたいという申し出が新しい管理者からあった。
 この場合の見学したい世界というのは本体のれいが管理している始原の世界だと思うのだが、その申請を受けた本体は、何を思ったのかハードゥスの管理をしているれいに受けるかどうかの是非を問うてきた。
 無論、そんな面倒な話などれいは直ぐに断ったが、何故わざわざ話を持ってきたのかと疑問に思う。おそらく単なる気紛れなのだろうが、いい迷惑である。
 そもそもの話、本体とハードゥスのれいがそれぞれ管理している二つの世界を見学したからといって参考になるかと考えると、参考にはならないだろう。なにせ、明らかに発展の度合いが違う始原の世界と、様々な世界の文化のごった煮である世界など、普通の世界の管理には大して役には立たない。
 まぁ、そもそもどちらも受け入れる気は無いのだが。
 さて、少し前にペット区画に獲物を放ったことで、ハードゥスも随分と賑やかになってきた。まだまだ余白は多いけれど、最初の何も無い頃に比べれば本当に賑やかになったモノである。
 ラオーネ達もより元気に駆けるようになったので、れいとしてはそれだけで満足であった。
 漂着物を集めた一角もゆっくりとだが確実に発展をしている。少々特殊な力の活用に偏った発展の仕方をしているが、今のところ特殊な力を消す予定は無いので、まぁ問題はないだろう。
 色々な発展をさせるために多様な価値観を持たせようという試みから、理の異なる大陸を生み出したりしたのだが、その一つに能力を数値化して管理するという大陸があった。れいや管理補佐を測るとエラーを起こしてしまうので、そこは除外しているが。
 それでも、他のモノについては問題なく測定出来ている。数値だけではなく、スキルやらなんやらと管理しやすいようになっているが、今のところはその理に問題は起きていない。そこの住民達も元々似たような世界で過ごしていた者達なので、違和感はなさそうだ。
「………………」
 ただ、やはりれいとしてはあまり好ましくは思えなかった。管理側としては非常に便利だとは思うのだが、傍観者としては何だか味気ない。
 数値が全てとは言わないが、数値の優劣で結果が見えている場合がそこそこ多い。見た目華奢なのに数値上では力持ちとかも珍しくなく、観る分にはそのちぐはぐなところが最初だけは面白かったものだ。直ぐに慣れたけれど。
 それでも、とりあえず問題なく世界は回っているようだ。
 勇者と魔王は別の大陸に放り込んだが、もしかしたらこちらの大陸の方が適正だったのかもしれないと、れいは少し思った。二人が居たのは数値で管理された世界ではなかったが、別の世界には、勇者と魔王が居て数値で管理された世界も存在している。
 とはいえ、既に根を下ろしている二人をどうこうしようとは考えていないが。既に二人は地域に順応していた。意外と二人共庶民的な暮らしが性に合っていたらしい。
 そのまま他の大陸の様子も確認していたれいは、そういえばと保護区を確認する。
「………………そろそろ外に出してもいい魔物に育ってきましたかね。最近は外の魔物は更に強くなってきたので、保護区に留め置く期間が長くなってきてしまいました」
 もう一段階保護区の分割数増やした方がいいだろうかとれいは思案する。そうすると区画が狭くなってしまうので、そろそろもう一つぐらいは保護区を創ってもいいかもしれない。
 そんな事を頭の中で検討しながら、れいは保護区の魔物や植物の様子を確認していく。
「………………おや? 変異種ですかね?」
 そうして確認していると、魔物の中に見慣れない魔物が混ざっていることに気がつく。保護区に放った時には居なかったし、つい最近確認した時も見かけなかった。見た目が小柄なので、まだ生まれてそれ程経っていないのだろう。
「………………もう少し保護区にも注意を払うべきでしたか? いえ、問題ありませんね」
 ハードゥス独自の魔物というのが居てもいいだろうと、れいは直ぐに思考を切り替える。
 世界の管理をしているれいは、毎日膨大な量の情報を管理をしているので、どうでもいい情報は割と流していたりする。
 しっかりと仕分けしているので、その中に大事な情報が混じっているという事は無いので問題はない。それに、保護区は侵入者にさえ気をつけていれば、中身に関しては弱肉強食であるので、そこまで注意を払ってはいない。保護区程度で生き残れないのであれば、外だと直ぐ終わるだけだろう。
 後は見慣れない魔物が繁殖できるのかどうかだが、失敗しても別に不都合はないので、れいは自然に任せることにした。
 他の魔物や植物を見て回ったが、他は代わり映えしなかった。そろそろ保護区を卒業できそうな個体は増えたが、外に出すにはもう少しだけ育ってからという結論に達し、その魔物達は後少しだけ見守ることにする。
 そうして保護区の様子を確認したれいは、早速三つ目の保護区を創ることにしたのだった。

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