第三十九話
9月24日(土)9:30。
彼女は俺に指定された場所へ時間ぴったりにやってきた。
「おはようございます、和歌さん」
「おはようございます。今日はいい天気ですね」
彼女が着ているのは、前に俺があげたワンピースだ。
やはり俺の目に狂いはなかった。
何度見ても飽きないのだから。
「私がプレゼントした服を来てくださっているのですね。とても素敵です」
俺に褒められたのが嬉しいのか恥ずかしいのか。
彼女の表情から上手く読み取ることが出来ない。
それに何だか今日の彼女は……くぽくぽしている。
(あぁ……可愛いな)
彼女が纏うほわほわとした雰囲気にあてられたのか、つい微睡みそうになり、かぶりを振って気合を入れ直す。
腑抜けている場合ではない。
今日は大事な目的があるのだ。
「今日はどちらへお出かけするのでしょうか?」
「群馬県のとある場所です。私のお気に入りの場所なんですが……着いてからのお楽しみということで」
彼女は両手で顔を隠して、ゴホゴホと咳込んだ。
耳が真っ赤になっている。
「大丈夫ですか? 体調が悪いのなら、そう言ってください」
「いえ、大丈夫です。ちょっとむせただけですから……本当に、大丈夫ですから……」
少し潤んだ瞳がこちらを捉え、俺の心臓がトクンと跳ね上がった。
「あちらに私の車を停めていますので……行きましょうか」
「はい」
俺達はコインパーキングに駐車された車に乗り込むと、残暑も衰えかけた9月下旬の街路樹を横目に走り出した。