第二十四話
「黒い着物とは珍しいですね。和歌さんの瞳の色とよくお似合いです」
「あっ……ありがとうございます」
「初めてお会いした時も、その着物を着ていらっしゃったと記憶しておりますが、お気に入りの服装なのでしょうか?」
「いや……これは、その………………くて」
「ん?」
最後の言葉がよく聞き取れず、彼女の方へ前かがみになった。
どこか懐かしい香りが微かに漂い、鼻の奥が温かくなる。
「実は、これしか持っていなくて…………。私みたいな服装をしている人は一人もいませんから、少々浮いている自覚はあるんですけどね」
彼女には余計な一言だったかもしれない。
一瞬ひやりと心が冷える。
「そうだったんですか……気に障ってしまったようでしたら、すみません。ですが、その服装もとても素敵だと思いますよ」
ほんのりと彼女の頬が赤くなった。
「いえ、気に障るだなんて。ありがとうございます…………私、さっきから『ありがとうございます』っていう言葉ばかりで……すみません。少し緊張しているんだと思います」
「私も和歌さんとこうしてちゃんとお会いするのは今日が初めてですし、些か緊張していますよ」
「そうなんですか……。私だけじゃなくて良かったです」