第二十五話
駅から一つ目の角を西に曲がってすぐのところに、その店はあった。
木漏れ日をテーマとしているらしく、屋根のところどころに観葉植物や小鳥の彫り物が飾られ、如何にも女が好きそうな店だ。
店内に入り、一番奥にある2人席へ向かいあって座る。
俺はブレンドコーヒーを、彼女は冷たいキャラメルマキアートを注文した。
「甘いものがお好きなのですね」
「はい。………………………………」
「………………………………」
言葉が続かず手持無沙汰になる。
噴水広場から5分も歩いていないのに、掌には汗をかいていた。
汗の臭いが彼女の方に飛んで行ってしまうのではないかとひやひやしたが、特に迷惑そうな様子もない。
念のため、さっき出された水を飲んで体温を下げてしまおうか。
と思っていた矢先、彼女はごくごくと喉を鳴らして水を飲み始めた。
大量の水が彼女の小さな口へ、ドバドバと流れ込んでいく。
まさかそれ程喉が渇いていたとは。
出されたコップもそれなりの大きさだ。
俺でさえ一息で飲めるかどうか……。
豪快な飲みっぷりに空いた口が塞がらない。
「……っぷはぁ! ここのお水、凄く美味しいですね!」
これまでで一番元気な声だ。
そんなに美味い水だったか……?