84.初めて…の口づけ
あの日とは、もちろんバーで酔っ払って、ホテルで休憩したときだ。
逢坂と最後までシてしまったのだろうか?
自分の身体だから、いくら酔っ払っているとしても、それくらいはわかるものだろうが。
とにかく記憶がない以上、判断つきかねてしまう。
逢坂は何食わぬ顔で、こう返してきた。
「ああ。酔ったちひろは大胆だったな。自ら服を脱いで、おれに処女を貰って欲しいと、可愛らしくおねだりしてきて……」
「嘘っ! やだ、恥ずかしいっ!」
もうちひろは、穴があったら入りたい心境になってしまう。
(やっぱり! 処女をもらってくださいと、しつこく迫ったんだ! もうっ……なんて真似を……)
顔から火が吹き出そうなくらい真っ赤な顔のちひろに、逢坂がくくっと笑う。
「冗談だ。冗談。ちひろは3分で寝てしまったよ。おれが何度キスをしても起きなかった」
「ええ……?」
それはそれで悲しいというか、残念である。
こんなイケオジとベッドインして、爆睡?
(私、本物のばかじゃない……)
ということは、結局逢坂とはシていないのだ。
結局まだヴァージンのままということで、今がロストヴァージン寸前ということになる。
ちひろが戸惑っていると、逢坂がスルリとショーツを脱がしてしまう。
「あっ……」
小さく震えるちひろに、逢坂が甘く蕩けるような声で囁いた。
「おれのすべてを、ちひろにやる。覚悟して受け取ってくれ」
「凛太郎おじさま……」
「だから、ちひろのすべてを、おれにくれ」
一糸まとわぬ裸のまま、彼に横向きで抱き上げられ、ベッドに運ばれた。
そっと横たえられると、ちひろの前にネクタイを緩める逢坂の姿が見える。
それがとてもセクシーで格好よくて、胸がキュンと軋んでしまった。
ギシリとベッドが鳴り、彼の大きな身体がのしかかってくる。
そして再び、ちひろの唇に彼の形のいい唇が合わさった。
「凛太郎……おじさま……」
「ちひろ……可愛い、ちひろ」
何度も口づけを交し、彼の大きな手がちひろの身体中を撫でまくる。
それだけで皮膚が感じやすくなって、ちひろの心臓がバクバクと高鳴った。
蕩けた目で逢坂を見返すと、彼が少しだけ何か企んでいるような表情をした。
「明日の朝まで、じゅうぶんに時間がある。ちひろの身体をすみずみまで念入りに愛してあげよう。おれの名を、おじさまつきで呼ぶことができなくなるくらいにな」
「……え」
戸惑うちひろに、逢坂があまりにも魅惑的な笑みを浮かべる。