「番ね、おとぎ話だろ」
アルトゥール・レオンチェフはそう言いながら、自分の傍らに座る十も年下のフェオドラにシルバースタンドからティーフーズをせっせと取り分ける。小さく美味しいと呟くフェオドラにそうかと愛おしそうに見つめるアルトゥール。この男、この行動全て無意識である。
公爵令息にして騎士団の監査官。冷めた物言いと整った出で立ちにファンも多くいるという。そんな彼が無意識に甘やかすフェオドラは浮浪孤児。どこかの貴族に暴力を振るわれていたようだが、満月の日に二人は出会った。薄くなっているとはいえ、世界の全ての人間に等しく流れるとされる龍の血。フェオドラの汚れた黒い髪からかなりその血は薄いのだろうと思われたが、むしろその逆。汚かった彼女を洗えば、出てきたのは黒と青の宵の髪。そして、虚のように思えた黒い目には星が浮かぶ。それらは龍の血がかなり濃いことを意味していた。
そんなことがわかる前からアルトゥールは彼女に甲斐甲斐しく、フェオドラは彼の傍で一番安心していた。一説には番行動とも呼ばれるそれ。だが、それを認めないアルトゥールに特に気にしないフェオドラ。
しかし、フェオドラの龍の血は問答無用とばかりにアルトゥールを騒動へ巻き込んでいく。
※突発的に無自覚イチャイチャがあります(当者比)
※この物語はスローペース(一話1000~2000文字程度)で進んでいきます。
※なろう、アルファポリス、カクヨム、ノベプラでも掲載してます
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