あれは、単なる遊びだった。気を紛らわせるための、遊び。それでも彼は、それをまじないであると、心から信じた。少年から青年へとなった今も、それは変わらない。真実を知っても尚、変わらないのである。前世の記憶を持ったまま、別世界へと転生した翠蘭。その体は、齢七程の少女となっていた。この王宮という広く、そして狭い世界。体にも心にも痛みが走る毎日を、宮女として過ごしていた。そんな翠蘭は、ずっと抱えていた大きな野望があった。この王宮から逃げ出すこと。それがここにいる、たった一つの目標だった。そう思いながら、あっという間の十年が過ぎ去ってしまっていた。しかしただ単に、過ぎ去っていたわけではない。計画した数は数えきれない程だ。そして遂に、その好機が訪れた。数歩、たった数歩進めた途端、計画が終わった。目の前にいたのは、見つかってはいけない相手だった。咄嗟に答えたその嘘が、思わぬ方向へと発展していく。みるみるうちに現実の物と重なっていく事に、翠蘭も驚かざるを得ない。最初からそうだったのか。誰かによるものなのか。今は誰も知らない。脱走計画を共にする相手とは…そして、嘘から真実になる本当の意味は、一体なんなのであろうか?
ログインすると作品の応援や感想の書き込みができるようになります。新規会員登録(無料)はこちら。
★を贈る
星を選択して「いいね!」ボタンを押してください。投票後、「いいね!を取り消す」ボタンを押せばいいね!を取り消すことが可能です。
感想を書く
感想を500文字以内で入力してください。入力した内容は作者の承認後、感想欄に表示されます。
通報をする
読者への感謝の気持ち