骨人間と、4号店と、 その1
~ここまでのあらすじ
夜、パラナミオと一緒に目を覚ましたら
寝室の入り口に何か立っていた。
~そして今
「……あれ?」
よくみたら、そこに立っていたのは骨人間でした。
あれです、パラナミオが召喚して、深夜昆虫族相手に昆虫ゼリーを売り続けている骨人間なんですけど、
……ってか、君、でかくなったねぇ!?
最近商品の運び込みをヤルメキスがしてくれていたので、その姿を見てなかったんだけどなんか骨が異常に黒光りしてて身長も以前の倍近くになっていまして、しかもなんか頭に角まで生えてるし……
さしずめ、黒騎士骨人間騎士(ブラックナイトスケルトン)ってところでしょうか?
で、その骨人間なんですが
慌てた様子で寝室に入ってくると、何やらゼスチャーを始めるんですが
……な、何を言ってるのかさっぱりわかりません……
で、僕は眉をしかめていると、その横でパラナミオがフンフンと頷いていまして……ど、どうやらパラナミオにはわかるようです。
で、パラナミオは、そんな骨人間の話を一通り聞き終えると僕に向かっていいました。
「パパ、骨人間さんなんですが、進化しすぎてあのお店の中でうまくお仕事が出来なくなったそうです!?」
……あぁ、なるほど
パラナミオが骨人間から聞いた話によると
今日もいつものように巨木の家の上の方にある実の店で営業していたところ、その最中に急に存在進化してしまったそうなんですが、その途端にこの巨体になったもんですから、ちょっと動くだけで店の棚にぶつかったり客である昆虫族を潰しそうになったりと、大変なことになったらしく、慌ててここにやってきたんだとか。
で、まぁ、そういうことなら
「パラナミオ、大変だけど1体骨人間を召喚してくれるかい?」
「わかりました!」
パラナミオは、笑顔でそう言うと、ベッドから降りてすぐに右手を前に出していきます。
しばらく無言で気合いを込めつつ詠唱。
すると、床に黒い魔法陣が出現して、骨人間が一体出現していきました……って、あれ?
確かに、骨人間が出てきたんですが、ちょっと様子が変です。
といいますのがですね
今までパラナミオが召喚した骨人間は全部白い骨で産まれて来たんですよね?
それが、今、僕の目の前にいる骨人間は骨がクリスタルのように輝いているんです。
なんといいますか、すさまじいレア臭を周囲にばらまいているわけですよ、これが。
ただ、スアに確認しようと思ったのですが、スアはすや~っと夢の中だったわけです、はい。
「パパ、この骨人間さん、なんか綺麗です」
パラナミオは、そう言いながら満面の笑顔でクリスタル骨人間を見つめています。
が
そのクリスタル骨人間ってば、はずかしいのか黒騎士骨人間の後ろにそそくさと逃げ込んでいったわけです、はい。
まぁ、とにかく召喚には成功したわけなので、そのクリスタル骨人間に
「接客はいけるかな?」
そう聞いて見ると、
力強く右手の親指をグッと立ててくれたので、そのままお願いすることにしました。
で、黒騎士骨人間さんも、店の通路部分から指導をしてもらい、どうにかこの日の営業を終えることが出来ました。
クリスタル骨人間と黒騎士骨人間が実の店に移動したところで、パラナミオには
「ありがとう、とても助かったよ」
と、お礼を言って、ベッドに戻ってもらいました。
パラナミオは嬉しそうな笑顔を浮かべて
「パパのお役に立てました」
そう言いながらスアに抱きついて寝始めました。
で、僕は念のために実の店の奥、黒騎士骨人間の後ろで控えていたわけです。
で、結局ほとんど寝ないまま朝……
実の店の昆虫ゼリーは、トラブルがありながらも、この日も早くに売り切れたのですでに店じまいはすませていたのですが、なんかドタバタしてたせいで、なんとなく寝られなかったんですよねぇ。
で、翌朝です。
2体の骨人間さんには、直射日光が入らない地下の冷蔵室に控えててもらいました。
で、相当寝ぼけてたスアがやっと覚醒したところでこの2体を見てもらったところ
「……ほう、これは」
と、感心しきりと言った感じで、主にクリスタル骨人間を見つめていきました。
「……この骨人間は、ね……よほど術者に素質がないと作り出せない、水晶骨人間(クリスタルスケルトン)、よ」
だそうでして……やっぱ昨夜、僕がこいつに感じたレア臭は間違ってなかったわけです、はい。
この時間、すでにパラナミオは学校に行った後だったので、帰ったら教えてあげないとな、と思ったわけです……パラナミオ喜ぶだろうなぁ。
ちなみにですね、もう一体の存在進化した黒騎士骨人間ですが
「……ここまで進化したら、日の光に当たっても崩壊しない、よ」
とのことでして。
で、早速ためしてみたところ、
黒騎士骨人間は、最初は初めてみる陽光に戸惑ってたんですけど、慣れてくるとほんと普通にしていたわけです、はい。
これなら、狭い実の店じゃなくて、店でも働けるなぁ、と思った次第です。
ただ、言葉がしゃべれませんから、基本的に荷物運搬作業中心になりますけど、これは貴重な戦力が手に入ったな、と、思ったわけです、はい。
で、
この黒騎士骨人間が戦力に加わったことで、僕は前から少し考えていたことを実行に移してみようかな、と思いました。
いえね、ララコンベから依頼されたまま保留になっているコンビニおもてなし4号店のことなのですが
僕が店長で行こうと思っているわけです。
で、現地でのバイトの手配はララコンベの組合のペレペに言えばしてもらえる約束になっていますし、このバイトの中で使えそうな人材がいたら、そのまま社員から雇われ店長へ昇進してもらい、最終的には4号店を任せようかな、と、思っているわけです。
まぁ、店長で行くといっても、スアに転移ドアを作ってもらって、ここガタコンベの巨木の家から通勤するつもりなんですけどね。
店も、1号店・2号店と同じように日の入り頃を閉店にしようと思っていますので、まぁ、なんとか出来るんじゃないかな、と思うわけです。
本店の方は、
副店長のブリリアンがそれなりに仕事をこなせるまでになっていますし、転移ドアがありますので何かあればすぐに戻って来れますしね……だからといって頻繁に呼び出されても困るわけですが。
で、弁当などの調理は、今まで通り僕と魔王ビナスさんが2人で全店分の調理を開店前に済ませる予定で、追加補充に関しては魔王ビナスさんの裁量にお任せすることにしました。
で、魔王ビナスさんなんですが、非常に勤務態度もいいし、仕事もすごく出来るので、このまま社員になりませんか? と打診したのですが
「評価していただいて本当にうれしいのですが、私、内縁の夫とそのお仲間のお世話もしないといけませんので……」
そう言って、丁重にお断りされてしまったわけです、はい……うん、かなり残念です。
同様に、テンテンコウにも社員の打診をしたところ、
「あの……エンテン亭に今までのように行ってもいいのなら」
との条件付きで了承してもらえました。
なので、今まではエンテン亭で働いていた際の給料はエンテン亭で支払っていたんですけど、今後はコンビニおもてなしの社員として、本店が一括月給で支払うことにしました。
「それはもうしわけないキ」
と猿人四人娘達が申し訳なさそうに言ってきたんですけど、まぁこれぐらいはして上げてもいいんじゃないかな、って思った訳です、はい。
と、言うわけで、僕は転移扉を通ってララコンベへ。
この扉、今はカウドン牧場につながっているんですよね。
というのも、週に2,3回、イエロ達がララコンベ周辺の害獣退治に来てまして、その途中でカウドンを捕縛もしているからなんですが。
で、僕が組合に顔を出すとペレペは満面の笑顔で僕を出迎えてくれました。
「すでにですね、4号店のバイト候補は準備出来てますます」
そう言いながら、書類を僕に手渡してくれました。
「で、ですね、お店の建物もすでに準備してありますます」
そう言うと、組合のすぐ横の建物を指さしていきます……と
おいおい、ペレペ……そこまで準備してまっててくれたのかい?
なんか、待たせちゃって申し訳なかったな、と、思うことしきりだったわけですが
「いえいえ、こちらが急にお願いしたことですです。お気になさらないでほしいですです」
ペレペはそう言ってニッコリ笑います。
この笑顔に答えるためにも、対応は急いだ方がいいな……そう思いながら、僕はペレペから手渡されたバイト候補の書類を取り出したのですが……はて?
なんでしょう……この1枚目の女性の肖像画……どっかで見たことがある気がするんだけど……
なんだろう、この絵を見てると、頭の中で「お~っほっほっほ」って声が聞こえてくる気がするんだけど……