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骨人間と、4号店と、 その2

 翌日、僕は本店の営業が終了すると、転移ドアをくぐってララコンベへと出向きました。

 すでにペレペには連絡済みなのですが、このララコンベで開店を予定しているコンビニおもてなし4号店の店員候補の面接をするために出向いた次第です。

 事前にペレペから手渡された書類を元に、候補者を3人にまで絞っていまして、その3人を呼んでもらっている次第です。

 僕が組合の建物に顔を出すと、ペレペは嬉しそうににっこり笑ってくれました。
「タクラ店長、今回は私達の無理を聞いてくださって本当にありがとうございますですです」
 そう言うペレペに、僕は苦笑を返していくと
「とにかく、ご期待に沿えるように頑張ります」
 そう言い、ペレペと握手を交わしていった。

 ペレペに案内されて応接室へ移動していく僕。
 すると、廊下に候補者のみんながイスに座って待っていました。
 みんなは、僕が来たことに気がつくと、その場で一斉に立ち上がり
「「「「今日はよろしくお願いします」」」」
 と、4人みんなで一斉にあいさつしてくれました。

 ……ん?


 ……ちょっと待った。

 僕は、応接室に入ろうとして、思わず立ち止まりました。
 そこで、改めて廊下へ視線を向けていく僕。

 そんな僕の視線の先には、確かに4人の人達がいます。


 ですが……僕が書類審査で選び、ペレペに招集をお願いしたのは3人だったはずです。

「ペレペ、1人多くないか?」
「……言われて見ると確かに……」
 4人に向かって訝しそうな視線を向けていく僕とペレペ。

 そんな僕達の視線は、ほどなく1人の女性へと注がれて行きました。

 この女性に、僕、見覚えがあります。
 求人票上では

『家事見習い レレンナ』

 ってなってましたけど……

 この人……間違いなく魔法使いです。
 しかも、あの、上級魔法使いのお茶会倶楽部に所属していた上級魔法使いの下っ端その1とでも言うべき立場の人でして……

 僕やスアが上級魔法使いのお茶会倶楽部と相対峙したときには、必ずと言っていいほど、その他大勢の1人として背後にいた人に間違いありません。
 
 なので、書類審査で落としたはずなんですが……

「ペレペ、この人なんでいるんだい?」
「……言われて見れば変ですです……私、この人呼んだ覚えないですです」
 ボソボソ話合いを始める僕とペレペを前にして、明らかに動揺しながら冷や汗を流しまくっていたこの自称家事見習いのレレンナさんは、それでもしばらくそっぽを向いて知らん顔をしていたのですが、ついに観念したのか、僕の足元にいきなり土下座してくると
「そうです、おっしゃるとおりです。私は元上級魔法使いのお茶会倶楽部の一員でございましたの……ですが、上級魔法使いのお茶会倶楽部が王都から糾弾され、事実上解散した後、私はろくな仕事に就くことも出来ず、風の噂で聞いた魔法使いの集落に出向きもしたのですが、そこでも受け入れてもらえず、このララコンベの街で清掃作業をしながら細々と生計を立てている身なのです」
 そう言うと、僕の足に抱きついて来たかと思うと
「お願いです! 後生ですからこの極貧生活から抜け出すチャンスをくださいぃ、お願いですぅ」
 そう言いながら、涙を流していきます。

 確かに話を聞けば可愛そうとは思います。
 ですが、上級魔法使いのお茶会倶楽部の面々は、自分達が周囲に威張り散らしまくったり、請け負った仕事で手抜きをしたり、魔法の精進を怠りつつ中級以下の魔法使い達の昇進の邪魔ばかりしていたわけです。

 ある意味、自業自得です。

 実際、このララコンベが破綻寸前にまで陥ったのも、上級魔法使いのお茶会倶楽部が魔石鉱脈の調査をきちんとしなかった結果なわけですし……

 ペレペも、そんな経緯があったこともあり、この女が上級魔法使いのお茶会倶楽部の一員だとわかった途端に、その顔に嫌悪の表情を浮かべ
「あなたですね、すでに書類審査で不合格だったですです。なのに、勝手にやってきておいて、勝手に懇願するのは卑怯だと思いませんですですか?」
 そう言っていきます。
 で、それを聞いたレレンナは
「そ、それはもう重々承知してます……そこをなんとかぁ」
 と、必死に懇願し続けてきたわけです、はい。

 ただ今回は、

・履歴書に虚偽記載があったこと
・他にも書類審査で不合格になった人がいたこと

 この2点がネックとなり、レレンナには帰ってもらうことになりました。

「そうですか……ダメですか……」
 ガックリ肩を落として帰ろうとするレレンナでしたが
 そんなレレンナをペレペが呼び止め、何やら話をしていました。

 漏れ聞こえてきた内容によりますと
『清掃作業の仕事をもう少し多く回してあげるですですから……今回はそれで我慢してくださいですです』
 そう、伝えていたようです、はい。

 なんのかんのいいながら、ペレペはやっぱ優しいな、と思った訳です。
「いえいえ何をおっしゃいますますか。掃除をいっぱいしてもらって反省してもらうですですよ」
 そう言うペレペですので、まぁ、そういうことにしておこうと思います、はい。

◇◇

 と、まぁ、最初にあれこれドタバタがありましたが、ここからようやく面接を開始しました。

 今回面接にやって来たのは、全員亜人の皆さんです。
 重視したのは調理経験があるかどうかと、接客業の経験があるかどうか。

 で

 3人の中で、週に2日くらいしか出勤出来そうにない人が1人いたので、残りの2人を店員候補とし、残りの1人はパート候補として、本店でしばらく研修を受けてもらうことにしました。

 店員候補が
 ダークエルフのクローコさん
 燕人のツメバさん 

 パート候補が
 熊人のクマンコさん

 皆には早速明日からコンビニおもてなし本店へ来て貰う事にして、転移ドアの位置などを説明し、この日は解散になりました。

◇◇

 面接が終わると、僕はペレペに案内されてお店の出店候補地を確認しにいきました。
 行ったと言っても、場所は組合の建物のすぐ隣ですのであっという間に到着します。

 そこは、かつて酒場だったらしいのですが、例の魔石枯渇事件の際に所有者であった人がその所有権を放棄して街を去っているんだとか。

 ペレペに案内されて店内に入ってみると、中は結構広々としています。
 酒場だっただけに、テーブルやイスはふんだんにありますが、当然陳列用の棚などは一切ありません。

 ここで、本来なら地元業者との顔つなぎの意味もこめて、ここララコンベの業者に店内改装をしてもらおうと思ったんだけど、
「ララコンベにはそういう作業を行える人がいないのですです」
 ち、ペレペが言いました。

 なので、今回の修復作業は、最近ラブラブのルアにお願いしようとしたところ、
「だ、だぁれがラブラブだってんだ、こら!」
 と、ルアは怒り声をしてくるのですが、その顔がこの上なく真っ赤なもんですから、怒られても全然迫力がないといいますか……ねぇ?

 まぁ、そんな一悶着もありましたけど、店内改装の希望内容をルアに伝え
 ルアは、それを聞きながら、ふんふんと図面をかき上げていきます。
 っていうか、そのルアがかき上げていくペースがすさまじく速いもんだから、僕も思わず感心しきりだったわけです、はい。

 そんなわけで、店の改築計画も無事練り上げられまして、こちらの作業も新店員研修と同じく明日から開始になることになりました。

 さてさて、そんな感じで始動したコンビニおもてなし4号ですが、果たしてどうなりますやら。

 ……なんて思っている僕の肩を、骨人間から黒騎士骨人間へと存在進化した彼が叩きました。

 で、

 僕が視線を向けると、そこで
『おまかせください』
 とばかりに、両手で胸をゴリラのように叩きながら気合い満々な様子を見せてくれたわけです、はい。

 これで言葉がしゃべれたらいうことなしなんですけどね。
 僕は黒騎士骨人間の肩をポンと軽く叩いていき、
「うん、期待してるから、よろしく頼むよ」
 そう伝えたわけです、はい。

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