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聖女になりたくない事情

 あれから一週間が経過、特に変化も無く暮らしていたけど、またお城から使いの人が来た。
「教会から来ました『エネラル・フォルン』と申します」
「ミリアと申します。聖女候補の件ならお断り致しましたが」
 エネラル様は眼鏡をかけ知的なイメージ、それが第一印象です。
「いきなり手厳しいですね、しかし、コレは既に決まっている事なので逆らう事は出来ないんですよ」
 それは自分でもわかっている。
「それでも、私はどうしても家を離れる訳にはいかないんです。聖女になったら何処かにお勤めしなければならないんでしょう?」
「えぇ、聖女様には国への祈りとして宮殿に暮らしていただく事になります。場合によってはご家族も近くに暮らす事も出来ますが……」
「それが駄目なんです。私も我儘を言ってる訳では無いんです。両親に任せるとこの家はすぐに潰れてしまいます」
 私が家を離れられない理由、それは両親だ。
 両親はハッキリ言うと生活能力が無い。
 一言でいえば『お花畑』な人達だ。
 我が家が貧乏なのは両親が色んな人達に騙された経験がある。
 だから、私や兄がしっかりしないとこの家はすぐに没落してしまう。
 私はその事情をエネラルさんに割と細かく説明した。
「なるほど……、そう言う事情でしたか。随分と苦労されているんですね」
 とりあえず我が家の事情はわかっていただいたみたいだ。
「それに聖女様になるには厳しい試験を受けなくてはいけないんでしょう。私、性格的に我慢できないんですよ」
「確かに聖女に必要な知識や立ち振る舞い、マナーや武術を学んでいただく事になります。国の代表になりますからね」
「それだったら余計に私は無理です。他の候補者様といざこざになるのは嫌ですから」
 私の夢は平穏に暮らす事なのだから、他の貴族と変な遺恨が起きるのは嫌なのだ。
 貴族社会特有のあのネチネチした言葉づかいをされたら私は多分数秒でぶん殴っている自信はある。
「う~ん、そんなに拒否されるのでしたら無理にとはいけませんね……」
 エネラルさんは腕組みをして少し悩んでいる様子だった。
「……とりあえず一回お城に来ていただけないでしょうか? そこで説明を致しますがその時点で辞退者を希望しますのでそこで手を挙げてくだされば」
 エネラルさんの提案に私は少し考えた。
 まぁ、それだったらいいかもしれない。
 一応義務ははたしている訳だから。
「でも、それって八百長みたいな感じになりませんか?」
「そもそも聖女試験もほぼ仕組まれている事ですからね」
 あ、認めた。
「貴女には見え透いた事は聞かないみたいですからね、こちらも本音で話した方が良いでしょう」
 うん、この人信頼できる。

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