聖女候補? 拒否します
「『ミリア・ファダイン』男爵令嬢、貴女は聖女候補に選ばれました。貴女にはこれからお城に行ってもらい試験を受けてもらいます」
「お断りします」
部屋の空気が一気に変わった。
お城からの使いの方は固まってるし、護衛の騎士の方は呆然としてる。
両親は苦笑いしてるし、・・・・・・兄よ、笑いを堪えるな。
「あの・・・・・・、これは国からの命令でして、それに聖女に選ばれるのは名誉にもなるんですが」
「名誉で飯が食べれるんですか? そんな物よりも我が家はお金が欲しいんです。国からの支援金が年々減少してるんです。聖女なんて物に金を使うより我が家みたいな貧乏貴族や庶民の為に使ってください」
我ながらハッキリと言い切ってしまう所は国の愚策にイライラしていたんだろう。
あ、自己紹介が遅れましたね、私はミリア・ファダインと申します。
我がファダイン家は自他認める万年貧乏貴族です。
どれくらい貧乏かと言うと我が家には使用人はいなく『自分の事は自分でやる』がモットー、家族全員で農作業に勤しんでいるぐらいの貧乏です。
貴族特有のお茶会とか社交界なんて参加した事もない、て言うか『何それ、美味しいの?』状態です。
そんな私が聖女候補になるなんて信じられませんし、なれる訳がない。
聖女は国を豊かにする象徴であり100年に1度現れる存在。
我が国だけではなく聖女は各国一人ずついるらしく更にその中から『大聖女』が選ばれるそうです。
その聖女を決める為には厳しい試験を受けなければならないらしい。
・・・・・・そんな物に私が受かる訳がない。
見た目地味、学力普通、体力は・・・・・・、まぁそこら辺の令嬢よりは自信はあるけどそんな私が聖女なんて冗談だと思う。
その後も色々やりとりはあったけど私は首を振らなかった。
使いの方は涙目になっていたけど私には関係無い。
結局、その日は使いの方はしょんぼりして帰って行った。
「あの使いも断るとは思っていなかっただろうな。まさか年下の娘にけちょんけちょんにされるなんてな」
そう笑いながら言うのは兄の『エンディ・ファダイン』だ。
「私だって言いたくはありませんよ? でも、あの『選ばれて光栄に思え』て言う態度が気に入らなかっただけです。大体お兄様も止めてくれれば良いじゃないですか。明らかに楽しんでいたでしょ?」
「あの状況で下手に止めると火に油を注いでとばっちりを喰らう可能性があるからな」
流石はお兄様、私の性格を良く理解しています。
私は嫌な事は嫌、とハッキリ言います。
更に言えば短気な方なので敵と認定したら容赦はしません。
以前、悪徳商人が我が家に質の悪い果物を買わせよう、とした時は私が対応して撃退しました。
その時は相手を完膚無きまで叩き潰してあげました、良い思い出です。
「でも、向こうだって国の命令だしまた来るぞ。」
「向こうの態度次第です」