21 金色の瞳②
若者は、次の本へと手を伸ばす。
すると13が、それを止める。
「あ、それはやめた方がいいよ」
「どうしてですか?」
「それ食人ブックだよ。
人を食べる魔界の――」
13が、そこまで言いかけたが若者の好奇心は収まらなかった。
若者は、その本に触れると開いた。
すると本から牙が現れ若者を襲う。
若者は紙一重で、その牙を避けた。
「びっくりした」
若者が、そう言って一歩下がる。
「食人ブックは強いよ。
君も本気を出した方がいい」
「ぎゅるる」
食人ブックが、唸り声をあげて13の方を見る。
「僕を食べる気?」
13が、食人ブックを睨む。
13が、銃を召喚し食人ブックに放とうとしたとき13の影から黒い手が伸びる。
「え?
この手はまさか……
君!早くここから逃げて!
こいつは――」
13が、そこまで言いかけたとき影の中に吸い込まれて、そして消えた。
「13!」
若者が、13がいた場所をただ呆然と見ている。
「しゃー!」
食人ブックが、今度は若者のほうを見る。
「くそ!13さんを返してください!!」
若者が、食人ブックを睨む。
「ケラケラケラ」
食人ブックは、笑い声と共に火球を若者の方に飛ばした。
それを若者は、召喚した重そうな傘を広げそれを防ぐ。
「結構な魔力を吸収出来ました。
では、お返しします!
喰らえ!華時雨・折笠!」
若者が、傘から光の弾を放つ。
しかし、食人ブックは、光の弾ごと影に取り込んだ。
「ゲップ!」
食人ブックは、下品にゲップの音を口に出す。
「……華時雨の弾が効かないのですか?」
若者が一歩下がる。
食人ブックが、若者に影を伸ばす。
若者は大きく後退する。
しかし、その後ろにも食人ブックの影があった。
「ケラケラケラケラ」
食人ブックが笑う。
食人ブックは、若者の足を影で掴むと口元に持って行った。
「しま――」
若者の言葉はそこで止まった。
若者は、食人スマイルの口の中にそのまま放り込まれた。
「ゲップ。
ケラケラケラケラケラ」
食人ブックは、不気味な笑い声を上げそのまま本棚の中へと戻った。
若者が意識を取り戻したとき。
若者は両手両足縛られていた。
そして、口を目を塞がれていた。
若者は、なぜこういう状態になったのかわからない。
思い出そうとしたが思い出せない。
「あらーん?
この魔力、私好みじゃないの!」
若者の耳に、女っぽい男の声が聞こえる。
「……あぐ?」
若者は、言葉を放とうとしたが言葉が出ない。
「貴方、私と手を組んでアイツらを倒さない?」
「うぐ?」
若者は、首を傾げる。
目も口も塞がれているため、現状が把握できないでいた。
「もう!
不便ねぇ!」
女っぽい男は、そう言うと若者の両手両足のロープが斬られる。
若者は自分で口をふさいでいたロープと、目を塞いでいた布を取った。
「ありがとうございます」
若者が、お礼を言う。
しかし、周りには誰も居ない。
「こっちよ!こっち!」
若者が、キョロキョロと辺りを見渡すとある大剣から声が出ていることに気づいた。
「助けてくれたのは君?」
若者は、何の疑問も持たずその大剣に尋ねる。
「あらーん?
剣が話していたのに驚かないの?」
「驚くものなのですか?」
若者の言葉に大剣は、嬉しそうな声で言う。
「気に入ったわ。
貴方、私のパートナーになりなさいよ!
私、|狂音《くるね》っていうの。
貴方は?」
大剣が、自分のことを狂音と自己紹介した。
しかし、若者はあることに気づく。
「あれ?僕の名前は……
あれ?わかんないです……」
若者が、そう言うと少し困った顔をした。
「もしかして、名前ないの?
まぁ、奴隷だから無くてもおかしくわないわねぇー」
狂音が、そう言うと若者は首を傾げる。
「僕は、奴隷なのですか?」
「うーん。
この魔力量は、奴隷の粋を超えているのよねぇー
とても強いはずよ、貴方は……」
狂音の言葉に若者は、少し考える。
「もしかして、僕は記憶喪失なのですか?」
「かもしれないわね。
そこにあるぐるぐるメガネも貴方のじゃないの?
貴方が来る時に一緒にここに来たから……」
狂音がそう言うと若者は、メガネに手を触れそしてかける。
すると若者の頭に何かがよぎる。
「僕は、なくしものをした気がする。
沢山の何かを……
この失くしものが全て見つかったとき僕の記憶が蘇る。
そんな気がする」
「そう、ならその失くしものを探さなくちゃいけないわねぇ」
狂音が、そう言うと男がひとり現れる。
「お前、どうやってロープを解いた?」
男が、若者に近づき首をつかむ。