16 とある町のとある出来ごと④
「全く貴方はどうしてそうなの?」
シエラがそうぼやくと焔が苦笑いを浮かべる。
「ちょっとカップルに道を聞かれて教えるのに戸惑っていたんだ」
「道を尋ねられたの?ちゃんと説明できた?」
「いや、わかんないから連れてきた」
「え?」
シエラが視線を焔の後ろに移す。
そこには自分たちと歳の変わらぬ男女の姿があった。
「……どうも。カナタです」
カナタが苦笑いを浮かべ軽く頭を下げる。
「ミソノです」
ミソノもバツが悪そうにそういった。
「主ら親は?」
清空が大人として当然の質問をした。
「いません」
ミソノが即答した。
「死んだのか?」
「いえ生きています」
「家はどこだ?連れて行ってやる」
清空がそういうとミソノが首を横に振る。
「帰りたくない」
「家出はダメだぞ?」
「家出じゃありません。
駆け落ちです」
ミソノのその言葉には悲しみで溢れていた。
「なにか事情があるのね?
よかったら話してくれない?」
シエラがそういうと清空が言う。
「お前、咎人か?」
「え?」
カナタの鼓動が早くなる。
殺される。
それを覚悟した。
「そうなの?」
亜金の目が細くなる。
「だったらなに?」
ミソノが開き直ったように言葉を放つ。
「僕も咎人だよ」
亜金が小さく笑ってそういった。
「え?」
ミソノが驚く。
「でも、目が赤くないですよね?」
「うん。
僕の咎人の証は体中にあるシミだよ。
その様子だと咎人の証の種類のことは知らないっぽいね」
亜金の言葉にカナタはどこか安心感に満たされた。