6-3「いいや、違う。私は彼にこの子を保護してもらう目的でここに来た」
そこから、タイラーは言わば見えない戦争をしていた。
まず、『賢人機関』に接触したタイラーは、『賢人機関』が単なる研究機関ではなく、各政府高官、そして軍部に太いパイプを持つ組織であることを知る。言わば秘密結社であった。
この情報網と人脈を利用しない手は無い。タイラーは即座に情報戦に着手した。
そして、『賢人機関』が連邦軍の上級士官と一枚岩で無いこともすぐに分かった。
マーズ共和国は、元々火星に住んでいた入植者達が、追い出される形で木星に移住を余儀なくされた者達の子孫たちが反乱を起こした末に誕生した組織だった。現段階で、国家と呼べる程の規模を持ってこそいるが、連邦軍の上層部の見立てでは大した戦力ではないと過小評価されていた。
実際にはルウがタイラーに報告した通り、共和国軍は20億人という途方もない規模だった。
内偵を放って事態の重さを知った地球連邦軍上層部は狼狽した。全地球連邦軍の規模は60億人と圧倒的であったが、内半数である30億人はスペース2である火星圏におり、敵がマーズ共和国を名乗っている通り、マーズ共和国とスペース2には少なからず繋がりがあることがわかってきたのだ。こうなると、地球圏であるスペース1に存在する約30億人の兵力は信用出来るが、万が一、スペース2に存在する地球連邦軍の戦力がマーズ共和国と同調した場合30億対50億と、地球連邦政府の兵力的優位性は失われる。
そこで、地球連邦政府軍の一部高官はこう考えた。年端もいかない少年少女たちを単艦特攻させることで、その犠牲を持ってスペース2の連邦軍戦力の指揮権を世論の後押しを持って取り戻せないか、と。そして、それら連邦政府軍高官の中にはつくば型乗組員の中に含まれる『フォースチャイルド』達に対する差別意識がその根底にあった。曰く、「人工的に生み出された彼らは人間にあらず、他の第四世代人類である学徒兵達は彼らと接することで感化されている哀れな者たちであり、それらと一緒に排除してしまえば良い」と。
その事実を知ったタイラーは激怒した。タイラーが目覚めた『つくば』を特攻させることで、その犠牲を利用しようと当時の連邦政府軍の一部高官は本当に考えていたのだ。これは、『賢人機関』に与えられた情報と、乗組員の一部を諜報員として再教育し、それらに調査させた情報を照らし合わせても確実な事実だった。
生前『自衛官』であったタイラーには『そのような作戦』を決して容認できない。自衛官は軍人である。それは表立って決して口に出してはならない事実である。それはその組織に所属していた者であれば誰しもが気付く事実であっても、『決して軍隊と名乗ってはならない』組織が自衛隊である。
そして、その自衛隊にはタイラーの時代の『先の大戦』での教訓が根深く、末端の一隊員に至るまで根付いていた。
―――彼らは決してあきらめない。守ると誓ったモノを、決して見殺しになどしない。
無論、この遠く未来の宇宙歴の世界に新たに生まれ落ちたに等しいタイラーは最早『自衛官』などではない。ただの一個人である。目覚めた瞬間に『つくば』の艦長に、つまり軍人になってしまったが。
だが、と。タイラーは思う。もし、『彼ら』を見捨ててしまうような男が、『弟』と再会出来たとして、『弟』は生前と変わらず、自分自身を尊敬してくれるだろうか? と。
いや、それは言い訳である。タイラーは思うのだ。今、彼らを『守りたい』と考える自身を裏切るような行いをするという事は、『自分自身のアイデンティティ』を捨て去るという事に等しいと。そのような人間に最早生きている意味などない。
タイラーは今後『賢人機関』に完全に協力することを約束し、『ロスト・カルチャー』としてタイラー自身が持ち得る情報を全て開示することを条件に、『賢人機関』の一員となった。
この時、タイラーは個人としての自身を捨てる決意を固め、自身をタイラー・ジョーンという記号とするために自分自身に仮面を被り続けることを課した。この時にカモフラージュの為に髪の毛も黒毛である地毛から金髪のそれへと整形手術を施した。そして、『賢人機関』を通じ連邦政府自体に圧力をかけ、マーズ共和国に対して、1年間の停戦期間を提案させ、『賢人機関』が保有する他の学園都市戦闘艦2号艦『けいはんな』と3号艦『こうべ』の指揮権も取得した。それらの乗組員の『親』となり、彼らを導くことを『賢人機関』に約束して、だ。
この過程で、タイラーは『フォースチャイルド』を生み出した張本人である『賢人機関』所属の科学者と出会うことになる。
その港に『つくば』が寄港して3日後の事である。港に寄る度にタイラーは諜報員をその陸地へと放ち、情報収集を行わせていた。その前日、その港のある街の郊外で女性の変死体が発見されるという事件があり、その普段はのどかな小さな港町に緊張感が漂っていた。
彼が現れたのはそんな日の晩である。彼はジェームス・へッドフォードとタイラーに名乗った。彼は護衛をともなってふらりと『つくば』に現れたかと思うと、自らを『賢人機関』の一員であるとさらりと述べ、タイラーに面会を求めてきた。それを聞いたクルーの一人が慌ててタイラーに秘匿回線で報告をしてきた程である。
タイラーは、本来は保安科の所属として艦内の治安を維持する人員の中から選りすぐり、徹底的に訓練を施した保安科諜報班の8名と、艦長付の士官であるルウを艦長室へ呼び出すと、ジェームス・へッドフォードを艦長室へ通すように命令を出した。
クルーの一人に案内され艦長室へ現れたのは、杖を突いた老紳士と一人の幼い少女だった。彼は護衛を『つくば』の大格納庫の自身が乗ってきた自動車に残したまま、この少女と二人だけでここに来たという。
「突然の来訪を歓迎してくれて感謝している。あなたは今、タイラー・ジョーンと名乗っているのだったね。以後、ミスタ・タイラーとお呼びしていいだろうか?」
そう言いながら、彼はタイラーに促されるまま幼い少女を伴って、艦長室へ備え付けさせたソファーへと腰掛けた。タイラーは彼の対面に座ると、諜報班の4名はジェームスの後ろに、残りの4名はタイラー自身の座るソファーの後ろへと取り囲むように整列し、休めの姿勢を取った。タイラーが訓練した通りだ。
この時期の彼らはタイラー自身の護衛も兼ねていた。それはタイラーの隣に座るルウも同じだった。
保安科諜報班を秘密裏に艦内に設立するに当たり、タイラーは彼らの存在意義と自身の目的をルウに説明していた。それを聞いたルウは、女性のそれも10代の少女でありながら、男性である彼らと同じ訓練を突破して見せた。「タイラー艦長の護衛は私の使命です」とさらりと言ってのけてだ。
結果、ただの学徒兵士であったルウはタイラーが提示したどんな訓練をも突破し、今や名実共にタイラーの腹心中の腹心として振る舞っていた。
「ほう、よく訓練されている。ミスタ・タイラーあなたは生前から軍人だったのですね」
そのジェームスが放った一言で場が緊張した。タイラー自身の出自は『賢人機関』内であっても最早秘匿中の秘匿だった。タイラーの隣に座るルウはただならない殺気を放ってジェームスを睨みつけた。
「艦長のお名前を、ここで公表するのが貴方の目的ですか?」
「いいや、違う。私は彼にこの子を保護してもらう目的でここに来た」
ジェームスが放った一言はタイラーにとっても諜報班のクルーにとっても、そしてルウにとっても意外な一言だった。
「ミスタ・ジェームス。事情を説明して頂いてよろしいだろうか?」
ジェームスはゆっくりと一度頷くと、この部屋に入ってから一度も表情を動かしていないその虚ろな瞳の幼い少女の頭を撫でながら言う。タイラーにはその少女が表情のない人形に見えた。
「『フォースチャイルド』は知っているな? この艦にも少なからず乗っているだろう? どうやらこの部屋にも一人部下として配置しているようだね、ミスタ・タイラー。この子はその一号被検体だ。我々はこの子をファーストと単に記号で呼んでしまっている」
そのしわがれた手で撫ぜられても少女の表情は動かない。タイラーは思わずその痛ましい少女の境遇を想像する。親もなく、頼れるものもなく、記号で呼ばれ、笑う事もないこの少女はいかにしてその短い人生を送って来たのかと。
「『フォースチャイルド』が製造された過程は、知識でも、乗組員の話でも既にあなたは知っているだろう、ミスタ・タイラー。だが、その『フォースチャイルド』プロジェクトの過程で生まれたこのファーストの存在は知らないはずだ。いや、いかなる存在にもそれが知られる事が無いように私達は過ごしてきた筈だった」
だが、とジェームスは続ける。
「プロジェクトメンバーの一人が連邦軍に拉致され殺された。酷い尋問を受けて発見された彼女の遺体は、それは痛ましいものだったよ。恐らく、軍人として訓練などされていない一研究者の口を割らせるなど、彼らにとっては赤子の手をひねるよりも簡単なのだろうね。次の日にはこのファーストを引き渡すように通達が研究所に来たよ。彼らは自らの行いを隠す恥じらいすらないらしい」
それが、先ほどの事だ。とジェームスは語った。
「彼女はこの子に取って母親も同然の存在だった。いや、彼女ら『フォースチャイルド』は『彼女』の遺伝情報を元に作られた『第四世代人類』だ。全ての『フォースチャイルド』の母だったのだよ。その死を知ったこの子は昨日から一切の感情を表現することを辞めてしまった。一言も話してくれなくなってしまった。この子は自分自身が狙われたために『母親』が殺された事を悟ってしまったのだ」
老人の目に涙が浮かんだ。
「君が、右も左も分からない現代に『ロスト・カルチャー』として生まれ『我々の愛しい子供たち』のために怒ってくれたと聞いた時、我々研究者がどれだけ喜んだか、君は知らないだろう? ミスタ・タイラー。君は我々にとっての希望だったのだ。君の素性を我々が知っているのは、この子が君について興味を持って自らの『能力』を持って調べたからだ。我々『フォースチャイルド』プロジェクトのメンバーは今、研究所に軟禁されている。だが、この子だけはファーストだけは彼らに渡したくない。『賢人機関』の少ない武力を持つ構成員の協力で今日はここに来ることが出来たのだ」
ジェームスは深々と頭を下げた。
「頼む、ミスタ―・タイラー。我々はどうなっても構わない。君の秘密とこのファーストの秘密は、我々研究員は必ず墓まで持っていく。この後研究所に帰ったのなら我々は研究所の全てのデータごと自爆する手筈となっている。だから頼む。この子だけは、このファーストだけは彼女の兄弟らと共に幸せに人並みの少女として、偽りでもいい。過ごさせてやってくれないか!?」
歯を食いしばって涙をボロボロと流すジェームスの背広の裾を引っ張って、ファーストと呼ばれた少女は小さく呟いた。
「……ダメ、じぃじ。死んじゃ嫌だ」
「おお、おおっ!」
少女の声を聴いてジェームスはファーストのそのあまりにも小さな肩を抱き少女の顔を覗き見た。
タイラー達に取って初めての、ジェームスに取って母親の死を少女に知られてしまった以来の少女の反応だった。少女は虚ろだったその黄金の瞳に光を取り戻した。
彼女に取って、その殺害された母親と同じほどに目の前の老人はかけがえのない家族なのだろう。だから、自ら死を語るその老人に対して否定の意を表したのだ。母親を失った絶望を押し殺してなお新たな絶望を否定した。
「じぃじ! 死んだら嫌なのだぁあああああ!! ママもじぃじもワシのせいで死んだら、ワシは、ワシはどうやって生きて行けばいいのじゃああああ!!」
少女の慟哭を見て、タイラーはジェームスに嘘は無いと確信した。タイラーは後ろに控える部下の一人に手で耳を貸させると、今の話の『裏』を取るように指示した。彼は耳元でその指示を受けると、足早に艦長室を去っていった。
「いいんじゃ、ワシらはお前たちという本来祝福されるべきもの達をこの世に生み出しながら守り切れなかった外道じゃ! お前に恨まれこそすれ、慕われるような事なぞ何一つしてやれんかった!! こんな外道は、地獄に落ちて当然なのじゃ!」
そのジェームスの叫びに、少女は必死に首を振って否定し、ぽかぽかとジェームスの胸を叩いた。
「違う! 違うのじゃ!! 本来失敗作だったワシを、ママとじぃじは助けてくれた! 立派な第四人類の体をくれたのじゃ! ワシをただの生体コンピュータにすることだって出来たのに、立派な体をくれたのは何故じゃ!? 美味しいご飯をくれたのは何故じゃ!? ワシにいろんなことを教えてくれて、一緒に遊んでくれたのは何故じゃ!? ワシは知っておるぞ、『フォースチャイルド』は確かに、知識はインプット、その人生はVRで圧縮知育によって経験するが、そのVRには多くの『幸せ』が、偽りでも家族の温かさがちゃーんと含まれておるのじゃ、だからワシの妹や弟達は『つくば型』の艦内でみんなと仲良くできるのじゃ! ママとじぃじはワシらを兵器として作らないでちゃんと人間にしてくれたのじゃ!!」
その言葉に、タイラーは諜報班唯一の『フォースチャイルド』の少年に視線を合わせた。彼は、ファーストと呼ばれている幼女と同じ黄金の瞳を、しっかりとタイラーに合わせて頷く。それはタイラーがこの艦に来て『フォースチャイルド』のクルーと話して知っていた事実でもあった。
「自分たちはちゃんと人間として作ってもらった。お父さんもお母さんも仮想空間にしかいなかったけど、ちゃんと愛情を教えてくれた」
彼らは口をそろえてそう言った。
『艦長。裏が取れました。ジェームス氏の言っている事は本当です』
その通信がタイラーの仮面の中に隠されたイヤホン越しに聞こえたのはその時だった。
「私は今、とても怒っている。その顛末の首謀者を探る事は可能か?」
諜報班の一員である彼は一拍おいて「そう、おっしゃられると思って既に割り出しは済んでいます」と答えた。聞いたタイラーは「引き続き情報を収集しろ、この件に共謀したと思われる全ての人間を洗い出せ」そこまで言って通信を切った。
これでいい。と、タイラーはジェームスに呼びかける。
「ミスタ・ジェームス。一つだけ宜しいだろうか?」
「ああ、ああすまない」
ジェームスは涙をぬぐいながらタイラーを見た。その胸にはファーストと呼ばれた少女がその両手の全ての力で決して彼を離しはしないと掴んでいた。
「私は、『フォースチャイルド』の彼らが自分たちをナンバーで呼び合っているのも、ナンバーで呼ばれようとするのも、よく思っていない。そこで、彼らにはそれぞれ名を名乗らせている」
タイラーが来るまで、『フォースチャイルド』はナンバーで呼び合い、そして呼ばれていた。タイラーは『つくば型』全艦の指揮権を取得すると真っ先に彼らに名前を与えた。それぞれの艦の名前をファミリーネームとする名前である。それは彼らに自身で考えさせ、どうしても思いつかないとせがんで来た者に対してはタイラー自身が考え与えた名だった。
「『フォースチャイルド』の彼女の姉妹たちは好んで花の名を自身の名とした。私は彼女にも花の名を送りたいと思う」
一瞬だけ考えてタイラーはその名を口にした。
「『ルピナス・ツクバ』。『いつも幸せ』を表す花言葉を持つ花の名だ。私はその子には相応しい名前のように思える」
タイラーが名前を付けてくれると噂で聞きつけた『フォースチャイルド』の一部の者たちはこぞってタイラーに名前をせがんだ。その結果、タイラーは花の名前や花言葉にすっかり詳しくなってしまっていた。口にした名はまだ誰にも与えていない名前の一つだった。
「ルピナス…… ルピナス・ツクバ……」
ジェームスの胸から泣きじゃくりながら、顔を上げた彼女は初めて自身の名を呼んだ。
「ありがとう、ミスタ・タイラーこの子に素敵な名前をくれて」
いいながらジェームスは再びタイラーへと深々と頭を下げた。
「貴殿と、ルピナスの身柄は一旦当艦で預かる。ルウ、彼らに艦内を案内してやってくれ」
言われて、目に涙を名一杯溜めて事態を見ていたルウはタイラーの言葉にはっとし、慌てて「は、はい!」と答えた。
「いかん、ワシは研究所に戻らなければ」
言いながらルウに片手を引かれて立ち上がるジェームスだが、ルウは片方の手にルピナスの手を引きながらなおも進もうとする。
「私は今、貴方の身柄も預かると言ったのだ。この艦において、私の発言は法律そのものだと心得てくれドクター」
それを聞いて、ジェームスは「すまぬ」と短く答えると、ルウとルピナスと共に艦長室を後にした。
「シド軍曹」
タイラーは自分の後ろに控えていた部下の一人である。シドを呼ぶ。シドはこの時技術科として艦に所属しながら、タイラーの誘いに乗り、保安科の諜報班の班長も務めていた。
「はっ!」
呼ばれたシドはタイラーの真横で敬礼をする。
「先にニコラス伍長が既に情報を収集している。諜報班を伴って彼と合流し、不届きもの共を叩き潰せ。手段は問わない。必要なら保安科の他のクルーと戦術科で陸戦の訓練経験のある者を編成しても構わん。なるべく派手に、警告の意味も込めてやれ。『生き漏らすな』」
「承知しました!」
言うとシドはにかりと歯を見せて笑う。シドに続いて諜報班の班員達も艦長室を後にした。
その後、シドの指揮する諜報班は約1週間をかけ、一切の痕跡も残さずに事件に関連した連邦軍高官を確実に暗殺した。その総勢は20余名にも及んだ。図らずもその者たちは『つくば型』を最前線へ送り込もうとしていた勢力の一部であった。諜報班の人員2名はジェームスの所属していた研究所に『臨時職員』として潜入し、ルピナスとジェームスをタイラーは手元に置くこととした。無論研究所に忍ばせた臨時職員は緊急時に研究所職員の護衛として機能する他、つくばの外の情報を外から収集しタイラーへ送る諜報員としての役割も兼ねた。こうして、タイラーはつくばの乗組員を人数上変えることなく、『フォースチャイルド研究所』と『賢人機関』に太いパイプを持つこととなった。
この頃のつくばはまだ世界各地を転々と移動していた。タイラー自身がそれを望んだためである。ジェームスがタイラーに合流できたのは運がいいとしか言いようがなかった。タイラーが目覚めてからおおよそ2週間。その都市に寄港したのは『フォースチャイルド』の故郷を見ておこうとタイラーが思いついたからというだけの理由だった。『賢人機関』によって各地の連邦軍港をタイラー達は自由に使用することが可能だった。
タイラーにはその寄港した軍港を起点にどの地点の軍港の司令官が『フォースチャイルド』に差別意識を持っているかの調査も兼ねていた。
だが、今回の一件で事態は急速に進んだ。連邦軍組織内の『反フォースチャイルド派』とでも呼べそうなメンバーの絞り込みがほぼほぼ出来てしまったのである。
これはタイラーに取ってみれば棚から牡丹餅に他ならなかった。本来であればこの絞り込みの作業は本来もっと時間を要すると考えられていたからだ。だが、それによって彼らの影響力が少ない地域というものも特定できた。それが、旧日本国のあった列島である。
タイラーにはその列島に個人的な目的もあった。そこで、つくばはタイラーを乗せヨコスカベースに錨を下し、しばし拠点とする事となった。ここで、タイラーはつくば型の改修案及び、新型宙間戦闘機の開発に着手することとした。