13 とある町のとある出来ごと①
――ウプス港
暗闇に光る満月
銀色に輝く銃口を光らせ
男はある存在を待ちかまえていた。
コツン……
コツン……
コツン……
ゆっくりと何か近づいてくる。
ゆっくり……
ゆっくり……
ゆっく……
足音がとまった。
男はつばを飲み込み、銃口をその主の方向に向けた。
しかし、そこには何も存在していない。
男は辺りを見回した。
すると、首に引き裂かれるような痛みを感じた。
軽い痛みだった。
男の首から赤い鮮血が飛び散った。
じりじりと近づいてくる感覚。
男には、わかった。
その主を見た瞬間わかった。
自分の死を感じ取った。
薄れゆく意識の中男は、その姿を見た。
全身を黒い霧に包み込み、まるで血に飢えた狼のような姿を……
男は、呟く……
「これが、霧のゲ……」
男は、その言葉を最後まで出す事なく息を引き取った。
翌朝。
ウプス港にて男の遺体が発見される。
「糞が。
なに死んでいるんだよ」
少年がそういって壁を叩く。
少年の名前は|座来栖《ざくるす》。
銀弾の座来栖という二つ名を持つ凄腕のスナイパーだ。
「この様子だと血霧のゲルンガの仕業ですね」
銀髪の調査班の男がそういった。
「だろうな……」
座来栖がうなずく。
「調査団の数が減ってきましたね」
銀髪の調査団が言葉を濁す。
「ところでお前誰だ?」
座来栖がその調査団に尋ねる。
「おや?気づいちゃいました?」
男が不気味に笑う。
「俺の部下にお前はいない。
誰だ?」
「記憶力がよろしいのですね。
流石はファルシオンの団員」
男は余裕の笑みを浮かべる。
座来栖は銃を構える。