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第17話 モテ期の後は修羅場?

 王都から出て街道を東へ向かっている。
 フィッツバーグ方面への道で、この道はすぐに無くなり森の中に入る。

 四人乗りの馬車で、曳くのはノワール、他の天馬は追従している。御者台に二人いるから六人がこの馬車に乗っている状態だ。
 誰も話さない。馬車を静寂が包む。非常に雰囲気が悪い。

 御者台にはプリとシェル。
 俺の隣にはユー、向かいにはクラマとマイア。
 雰囲気は最悪だ。

 あの後、皆が起きたんだけど、なんか三人共裸でも堂々としてるんだよ。
 俺だけが狼狽えていて、三人は少し裸でうろうろとした後、部屋に入って服を着て出てきたんだ。俺の前でうろうろしたのは態とだったんだろうな。
 ユーだけは少し恥ずかしそうにしてたけど、クラマもマイアも堂々としたもんだった。
 クラマは見たければ見れば、みたいな感じで、マイアは私の美しい身体を見なさいって感じだった。
 大体クラマの服は変身の一部だし、マイアは……どうなんだろ。ユーも態と見せてるように見えたから、何かのアピールだと思うんだけど、聞くに聞けなくて。ただ、ユーだけは偶にクラマと俺をチラ見してる所をみると、クラマに何か吹き込まれてたのかもしれない。ユーだけ頬が赤く染まって照れてるのが丸分かりだから。
 そういう俺も、自分が裸なのも恥ずかしいけど、皆の裸を見てるのも恥ずかしかった。


 で、会話も無いまま一階に下りるとプリとシェルがいて、一緒に付いて行くと言い出した。
 俺はそんなどころじゃないし、「はぁ」みたいな生返事をしたら同意と捉えて喜んじゃって、「御者をやります!」と言ってくれて今も御者をしてくれている。

 そのまま、なし崩し的に冒険者ギルドに連れて行かれて、『#煌星__きらぼし__#冒険団』に加入を認めさせられ、ついでにユーまで『#煌星__きらぼし__#冒険団』に加入してしまった。


「それで誰を一番にするのじゃ?」
「え?」
「そうです、誰を一番にしますか?」
「え?」
「私は三番でもいいよ」
「え?」

 ようやく沈黙を破って放たれたクラマの言葉に追従するマイアとユーから言われた言葉だった。
 これはやっぱりあれだろ? 本妻か妾か、みたいなやつだよな。
 でも、俺も男だ! 身に覚えは無いけど、たぶんやってしまった事だし、責任は取らないとダメだ。ここはちゃんと答えないと。

「全員一番って……ダメ?」
「#妾__わらわ__#はそれでもいいが、エイジは大変じゃぞ?」
「ええ、私もいいですけど、大丈夫ですか?」
「だから私は三番でいいって言ったのに」

 え? どういう事? 君が一番最高だったよってやつじゃないの?
 三人の中ではどういう話になってるの?

「毎晩、三人同時に相手するのは辞めた方がよいのじゃ、一人ずつの方がよいぞ、どうせ順番じゃ」
「はい、その方が一晩中エイジを独占できますからね」
「うん、私も皆に賛成かな」

 状況が飲み込めないけど、全員一番だと、毎晩四人で寝ないといけないって事を言ってんの?
 そんなハーレムみたいな状況って、嬉しいけど、俺の事だからオチがありそうで……

「#昨夜__ゆうべ__#って……」
 俺の言葉に反応する三人。その反応は三者三様で、うんうんと満足げに頷くクラマ、にっこり微笑んで見つめて来るマイア、真っ赤な顔をして俯くユー。

 やっぱり#あった__・・・__#みたいだね。
「ユー?」
「だ、大丈夫だから。私も、は、初めてじゃないし…エイジの事は好きだから…この世界は一夫多妻制だって知ってるから」
 さらっと重大発表をされたけど、やっぱり覚えて無いとは言えないな。

 昔の俺なら、リア充爆発しろ! って言ってる状況だけど、今の俺の心はリア充には程遠いな。だって覚えて無いんだから。
 ユーの初めてじゃない発言には少し驚いたけど、クラマで900歳、マイアなんて7700歳だから、今までも色んな経験をしてるんだろうしね。

 でも、結婚はできないだろ。魔物や精霊と人間が結婚はできないだろ?
「け、結婚…は無理だよね?」
「#妾__わらわ__#はそんなものには興味は無いのじゃ。偶に相手をしてくれればいいのじゃ。また昨夜のようにエイジから誘うのじゃぞ」
「そうです、人間の言う結婚には興味はありません。それに私達はもう主従関係で結ばれているではありませんか」
「私はしてほしいかな…でも、今はいいよ。どこかの国でちゃんと落ち着いたら、ね?」

 昨夜はやっぱり俺がやらかしたのか……オージさん達と夜の街で遊んで気が昂ってたんだろうな。歯止めが効かなかったんだね。願望だけはずっと持ち続けてたからな、俺も男だったという事だ。
 クラマとマイアはいいみたいだけど、ユーにはちゃんとしてあげないとな。
 だって魔物と精霊との結婚なんて想像もつかないし、本人達も望んでないみたいだしね。これからもずっと一緒にいるみたいだし、結婚してるようなもんだよな。
 なんとか修羅場にはならずに済みそうだよ。



 森の入り口に到着し、野営の準備を始める。ここから馬車では行けないから、プリ達に説明をするためにも、ここで泊まって話し合う事にした。
 準備と言っても小屋を出して、表に料理を用意するだけなんだけどね。
 プリ達も小さいけど自分達用の小屋を持ってたから、風呂用の小屋と合わせて三つの小屋が並んでいる。

 机と椅子を収納バッグから出し、衛星に料理を並べてもらった。
 今日の献立はオムレツとハンバーグにデミグラスソースをたっぷり掛けてもらった皿とコンソメ―スープと食パン。俺とユーはパンの代わりにご飯にしてもらった。

「今見てもらったけど、これが俺の力の秘密です。衛星の加護なんですけど、ま、言っても分からないと思ったので見てもらったんですが」
「呪いなのじゃ」
「呪いエイセイですね」
「衛星って呪いだったの?」
「便利な呪いですね」
「そんな呪いならアリよね~」

 だから呪いじゃねーって!

「呪いじゃないから、加護だからね」
「そう言わないと死ぬ呪いなのじゃ」
「ええ、そういう呪いは多いですものね」
「そうなんだ、エイジ可哀相」
「私なら呪いを持ってても大丈夫ですから」
「何気なくブッコンでんじゃないわよ。あたしも大丈夫よ~」

「……この話はいつも平行線だからまたにするとして、プリとシェルの秘密も教えてほしいんだ。シェルは狼になるんだっけ? プリもあるんだろ?」
「……その言い方は、もう知ってるって感じね」
 諦めた感じの言葉がプリの口から洩れる。そのプリの様子を見ていた視線をマイアに移した。
 プリもつられてマイアを見た。

「あなたの#それ__・・__#は制御できるのですか?」
「…ええ、大丈夫です。偶に血を吸いたくなるだけで、他は普通の人と変わりありません。こうやって昼でも行動できますしね」
「やっぱりドラキュラ? でも、双子なのにシェルが狼男なのに何でプリはドラキュラなの?」

 俺の問いかけにはシェルが答えてくれた。
「うちの家系は男子は狼男、女子はドラキュラのスキルが色濃く出ちゃうの。どんどん薄くなって来てるんだけど、あたし達二人の場合は歴代の中でも濃く出ちゃったみたい。あたしもドラキュラが良かったのに、ホント失礼しちゃうんだから」
 失礼の意味が分かりませんが、女子がよかったって事かな?

「でも、これでも#歴__れっき__#とした人間なのよ~。ある意味イージと同じ呪いのようなものかもしれないけど」
 だから俺のは呪いじゃねーって!

「だから我慢できなくなった時にはイージに少し分けて欲しいんだけど」
 プリが上目遣いで可愛く強請って来る。

 可愛い~……いやいや、さっきユーの事もちゃんとしないといけないって決意したばかりじゃないか。
「それって俺から血を吸うって事?」
「そう、ダメ?」
 可愛い~…やっぱり可愛いものは可愛いって。

「…いい……」
「ダメー!」
 オーケーしそうになった俺を遮るように、ユーが割って入った。

「ユー様? 少し血を分けてもらうだけですよ?」
「それって、どうやって吸うの?」
「それは直接首筋から頂きますが」
「ダメ―!」
「でも、女性や身内からでは効果が薄いので、殿方の血が欲しいのです。この中ではイージしかいませんから」
「それでもダメー!」

 俺を守ってくれようとするユーに感謝と嬉しさで頬が緩むのを感じ、ユーに声を掛けた。
「ユー、ありがとう。血を分けるぐらいならいいよ。こうやってプリ達も秘密を打ち明けてくれてるんだし、もう仲間なんだしね。で、プリ。それってどのぐらいの頻度で欲しくなるの?」
「だいたい一か月ぐらいかしら。その時の量や質にもよるんだけど、一般人からだとそれぐらいね」
「血を分けて俺もドラキュラになったりなんてしないよね?」
「当たり前よ、そんな事にはならないわ。それに血を吸った後ってスキルが活性化して凄く強くなるのよ。レアなスキルだから公には秘密にしてるんだけど、イージ達……というかマイアさんにはバレちゃったみたいね」
「そうよ~、どうしてわかっちゃったのかしら。クラマ様といいマイアさんといい、イージの仲間って凄い人ばかりね」
「勇者様もいらっしゃるしね」

 プリの言葉を聞いてシェルも感心する。
「でもシェルはなんでクラマだけ様を付けるの? ユーは勇者だからいいとして、クラマは勇者じゃないよ?」
「それはー……正体を見せて頂いたからよ。妖狐様のお姿を見せて頂いたもの。あたしなんかより遥かに格上の存在よ? クラマ様とお呼びするのは当たり前じゃない」
「だったら……」
 マイアはもっと上なんだけどという言葉を飲み込んだ。
 言ってもいいのかどうか判断が付かなかったんだ。
 隣では「妖狐?」と呟くユーには後で説明してあげよう。

「そうじゃの、それならばマイア殿も様を付けて呼ぶべきじゃの。マイア殿は#妾__わらわ__#よりも格上の精霊様じゃからのぅ」
 言っちゃった。クラマが簡単に言っちゃったよ。

 よかったの? っていう視線をマイアに送るが、マイアは気にする素振りも見せず、ニッコリと微笑み返してくれた。

「「「精霊⁉」」」
 三人共、精霊と言われてもピンと来ないようだ。
 マイアは人間にしか見えないからね。驚いてる三人目はユーね。

 マイアは三人の視線に答えるようにオーラを放ち始めた。
 その神々しいオーラはマイアの美しさをより一層際立たせる。

「「「おおおお!」」」
 プリ、シェル、ユーの三人は小さなどよめきの声を漏らし、その場に平伏してしまった。
 なんでユーまで?

「あの、別に平伏する必要はないんだよ?」
「まさか精霊様とは……」
「全然気が付きませんでした。大変申し訳ございません」
「……」

「ユー?」
「……」
「なんでユーまで平伏してんの?」
「…なんとなく…ノリかな?」
「ノリって…ま、説明も兼ねて改めて紹介するから全員椅子に座って」

 恐る恐る席へ座り直す三人が席に座った事を確認し、説明を始めた。

「では、改めて。マイアが精霊っていうのは分かってくれたね?」
 無言で肯く三人。
「クラマの事はシェルにはもう伝わってるみたいだけどユーも知らないし一度元の姿を見せてあげてよ」

 むっ! っとクラマが気合を発すると、ボッフーン! と煙が立ち込め大きな妖狐が姿を現した。
 ベタすぎるよクラマ。頭に葉っぱは乗せなくていいのかってツッコミそうになるよ。

「それで、ユーが勇者で俺は……一般人かな?」
〔〔〔一般人~?〕〕〕

 全員からツッコまれた。
 でも、他に言いようが無いし、実際俺は一般人だし。
「では、日本語はどこで覚えたのですか?」
 プリの質問に、ドキリとした。

「そうか、そうだよね。俺は転生者だったよ。でも、ユーみたいに勇者とかじゃないからね」
 転生者という言葉で全員納得してくれたみたいだ。
 それぞれ思う所はあったみたいだけど、今は控えてくれたみたいだ。
 クラマにもマイアにも言ってなかったかもな。難しい顔をして黙ってるもん。

「じゃあ、そっちもお願いします」
 俺の促しにプリが答えてくれた。

「我がロンド家は特殊なスキルを持って生まれる事が多い家系なんですが、中でもレアなドラキュラのスキルを持って生まれたのが私で、ロンド家の当主がよく持っているスキルが獣人化なのです。シェルのスキルはその中でも一番メジャーな狼男なんですが、強さは歴代でも一二の強さを持っています」
「変身した姿はあまり見せたくないのよね~。美しさの欠片も無いもの。その点プリはいいわよね~、変身した時の方が綺麗だもの」

 プリも変身するんだ。しかも綺麗って、これ以上綺麗って見てみたいなぁ。
 そんな事を思ってたら隣のユーに腕を摘ままれた。
 やっぱり読心のスキルに開花してんじゃないの?

「でも、あまりにも強力なスキルの為、公には隠してるんです。だからシェルの影に隠れてあまり強くないフリをしてるんです。冒険者ランクもC以上は上げないようにしてるんですよ」
「強力? って事はプリの方が強いの?」
「そうなのよね~。美しさを保ったまま強いってあたしの理想のまんまなのに、どうしてあたしじゃなくプリなのよね~」
「その内お見せできる機会もあるでしょう。私は役に立ちますよ? だから血の提供はお願いしますね」
 ニッコリと微笑むプリ。
 はい! よろこんで~!
 痛、また抓られた。

 それぞれの紹介も終わり、今後もよろしくという事で食事を皆で楽しんだ。


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 エロ系を書くのはやはり苦手です。
 必要だったので書きましたが、かなり筆が鈍ります。
 今後はなるべく避けて行きたい分野でした。
 次に出て来ても軽くスルーして頂けると助かります。

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