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第18話 地図探索は順調

 プリ達の秘密も打ち明けてもらったので、今回の旅の目的を話しておいた。
 地図を出し、この先の五つの池の周辺での探索をする事が目的だと話した。
 その後は、遠回りになるけどファーナリア連峰を迂回してハイグラッドの町に行った時に俺だけ入れなかった『女郎蜘蛛(ネフィラ・クラバータ)迷宮(ダンジョン)』に行く予定だと話した。

 誰も反対意見は無かったから、俺の方からそれぞれに確認した。

「ユーは魔王とか魔族とかの退治に行かなくてもいいの?」
「うん、私は魔族に攫われてもういない事になってそうだから、そのままにしておきたいかな。魔族ももし、見つけても今なら勝てそうだけど、態々探して討伐には行かなくてもいいんじゃない?」

 他国の事だけど、王都でも勇者失踪などの話も聞いてないし、隠蔽でもしてるんだろうか。魔族が勇者誘拐となったら一大事件のはずなんだけどな。
 魔王討伐拒否のユーにしても、それは勇者としてどうかと思うけど、ユーは望んでこっちの世界に来たんじゃないらしいからいいのかな? でも、来る時に神様に会ってるって言って無かったっけ。

「神様とは何か約束してないの? チートな能力をもらったんだよね?」
「女神様ね。女神様に言われたのはこの世界を平和に導いてくださいって言われただけよ。魔王を倒せとは言われてないわ」

 んー……それは魔王を倒せって意味なんじゃないかな?
「もし、約束を破ったらペナルティがあるとか言われてない?」
「別に言われて無いよ。私がダメなら次の勇者を召喚するんじゃないの?」
 そんな軽い考えでいいのかなぁ。でも、待てよ。勇者召喚には生贄がいるんじゃなかったか?

「勇者召喚には多くの生贄がいるんじゃなかった? ユーの次の勇者を召喚するんなら、また多くの犠牲者が出るんじゃない?」
「そんなの私に言われても…」

 確かにそうだ、ユーにはそこまで責任は無いよな。
 この世界の人達の問題だ。それがたとえ生贄を多く使ってユーを召喚したとしても、ユーを守りきれなかった奴らが悪いんだよ。ユーだって魔族に攫われてる間の記憶は無いみたいだけど、誰も助けに来てくれなかったんだ。ユーが望んでないんだったらもう失踪してるって事にしておきたいな。

「でも、俺はこの世界で初めて目覚めた時は死体の山の中にいたんだよ。俺の場合、転生じゃ無く異世界転移か転落かもしれないけどね」
 一番可能性が高いのが”巻き込まれ”転生か転移って気はするんだけどね。

「そうだったの……じゃあ、エイジの場合、#強__あなが__#ち無関係って事でも無いのかな」
 俺が目覚めた時の事を説明すると、ユーが同調してくれた。

 あの死体の山が勇者召喚のためだったのならなんだけどね。
 時期的にはユーの召喚より随分あとだと思うから、もしかしたらユーの後継者が既に召喚されてるかもしれないな。
 全て憶測だよな、ユーの為にも確かめに行ってみる?

「魔王は別に俺達には関係ないかもしれないけど、魔族には思う所はあるだろ? 今のユーなら魔族にも対抗できるだろうし、もし見つけたら倒せばいいんじゃないか?」
「そうね、クラマさんとマイアさんの修行のおかげでもう魔族には負けないと思うし、一人じゃ無いしね。そのスタンスでいっか」

 納得してる俺達にプリが苦々しく口を開いた。
「あなた達……勇者様が魔王を討たずに誰が魔王を倒すのよ。私達は勇者様といれば魔王とだって戦えると思って付いて来たのに」
「え? そんな理由で付いて来たの?」
「そんな理由って…それ以外に何があるの!」
「いや、俺達といれば楽しそうだとか、この前の指輪のお礼だとか」
「もちろん指輪のお返しって気持ちはあるけど、楽しそうは無いわよ」

 そうなの? でも、魔王なんて会いたくないんだけど。
「心配無用じゃ。エイジはそういう星の元にいるのじゃ。我が主なるエイジなら、魔王如き簡単に倒してくれるのじゃ」
 何フラグみたいな事言ってんだよ。俺はそんな物騒な所には行かないって。俺の周りには厄介事がよく起こるみたいに言ってんじゃないよ。
 それに、魔王って魔物達の王様じゃないのか? クラマって反逆者にならないの?

「クラマ、魔王ってお前達魔物の王じゃないの? そんな事言ってもいいの?」
「魔王とは強き者がなり、そんな強き魔王に従う者が付いて行くだけじゃ。妾には何の関係も無い。魔族から勧誘もあったが一蹴してやったわ。そんな妾やマイア殿を一蹴するエイジが心配する事でもないのじゃ」
「ええ、そうですわね」

 クラマの暴論に賛同するマイア。
 そんなクラマには「魔族を一蹴……」と呟いたシェルからキラキラ輝く視線が送られていた。
 俺の事もちょっと入ってたんだけど、気付かなかったのかな。
 すぐに人型に戻ったけど、さっきの妖狐の姿はインパクトが強すぎたのかもね。

 でも、打倒魔王を掲げてるにしては魔物のクラマをすぐに受け入れたね。もしかして逆とか思って無い? 本当は人で妖狐に化けられるとか。
 仲良くしてくれるんならどっちでもいいんだけどさ、もうシェルはクラマの子分みたいだしね。

「俺達の目的はこの地図の攻略で、魔王は関係ないからね。それじゃ目的が違うって言うんなら、このまま王都に戻る事だね」
「いえ、このパーティにいるだけでも自分のレベルアップに繋がると思います。結果、それが打倒魔王にも繋がると信じていますから同行させてください」

 プリの視線はユーにしか向いて無いか。話してんのは俺なんだけどな。
 プリは勇者ユーに、シェルはクラマに心酔してんのか。これはいくら断っても付いて来るな。

「じゃあ、これからはよろしくって事になるけど、もう一つあるんだ」
「はい、色んな話が盛り沢山でしたから、もう少々の事では驚きませんよ」
「馬なんだけどね、三頭とも天馬なんだ。元はクラマの下僕だったんだけど、今は俺の下僕なんだよ。それで、ここからは馬車を辞めて天馬達に乗って行くんだけど、今まで話した事も含めて、全部秘密だから誰にも言ったりしないでよ」

「「天馬!!」」

 やっぱり少し大きな馬ぐらいにしか思って無かったんだな。
 こうやって全部話してみると、普通の部分を探す方が難しいぐらいのパーティだよな。
 俺が転生者でクラマが魔物、マイアが精霊でユーが勇者。加えてドラキュラに狼男。ま、スキルがって事らしいけど。
 馬は天馬で、食事はすべて衛星任せ。もちろんガードも衛星だし、装備も衛星だ。
 もう、普通が何なのか分かんなくなって来たな。

「天馬を下僕……さすがクラマ様」
 その主人は俺なんだけど。もういいか。
 シェルも、クラマがいると初めて会った時みたいに煩くしないし、このままクラマ崇拝者として放っておこう。


 翌朝、朝食を終えると昨日の宣言通り天馬に分かれて分乗し、五つの池を目指した。
 クラマとシェル、俺とマイア、ユーとプリに分かれて天馬に乗馬した。
 特段大きな身体はいないので、天馬なら三人乗っても余裕なんだけど、二人ずつで行く事にした。

 途中、昼休憩を入れながら一つ目の池に着くと、もう日が暮れかかっていたので野営の準備に掛かる。
 探索は明日の朝からにして、少し早いが休む事にした。
 地図は何度も確認してるけど、明日の為にお浚いをしておこう。

 まず五枚の地図はこの池の周辺で間違いないと思う。
 それぞれの池の周辺に✖がある。
 問題はこの三枚の地図なんだけど、池の形が似てるから、たぶんここだと思うんだよな。

 そこで、一枚の紙に描き直した。
 絵はそんなに上手い方じゃないけど、方向と位置関係さえ分かればいいから、池を五つ描いて×を書き足して行く。

 うん、やっぱり八つでいいと思う。
 一つだけダンジョンがあるけど、後はダンジョン名が書いて無いから、また土の中とか見つけにくい所になるんだろうな。
 なんなら今のうちに衛星に取って来てもらう? それはそれで味が無いっていうか、俺が衛星の為に何もしてやって無いって言うか。
 今までも、これからも、衛星にお世話になるんだから、せめて印の近くまでは俺が行かないとな。


 翌朝、食事を済ますと、全員でダンジョン入り口まで行った。
 いつも通り、クラマとマイアから同行禁止を命じられ、一人寂しく他七枚の地図の攻略のためノワールと共にダンジョンを離れた。
 皆は五人パーティっすか、いいっすね。俺の相棒はノワールがいるからいいんだよ。グスン

 地図は何度も見てたし、昨夜にも予習をしたので、位置関係はバッチリだった。
 あとはノワールにお願いして行ってもらうだけ。簡単な作業だ。
 一箇所目だけ、しつこく頑張ったけど、結局見つけられなかったので仕方無く衛星にお願いして探してもらった。

 ここで見つかったものは一辺十センチ程度の立方体(キューブ)だった。
 継ぎ目も無い黒っぽい#立方体__キューブ__#で、光の加減によって光沢が銀色に見えたりする。イメージとしては衛星によく似ていた。

 こんな立方体(キューブ)は初めてだよ。ここまで取ったものは卵が二個に鍵が一個……ゴメン衛星。卵を一個、収納に入れたままだったよ。ここは男らしく謝っておこう。

「衛星達、集合」

 衛星はすぐに集合してくれた。

「ごめん。以前にダンジョンでゲットした卵をずっと収納に入れたままだった。許してください」
 俺は衛星に土下座した。
「でも、言い訳をさせてほしいんだ。一個目はホラ、抱っこ紐でずっと抱いてたけど、二個目は収納したから忘れてしまったんだよ。今日からはホラね、この通り、また抱っこ紐で抱いておくからさ、許してくれるかな?」

 衛星が○を作ってくれた。
「ありがとう、もう忘れないからね」

 衛星が更に○を作ってくれた。
 こういう時は変な和訳でも分かると思うんだけどな。どっちでも通じるか。

 こういうのって、人が見てたら何もない所へ向かって何やってんだ? みたいに思われるんだろうな。
 ふと横に目をやるとノワールと目が合った。

 ……。
 ……。

 さっ! 気を取り直して行ってみよう!

 移動はノワール、行動範囲もそんなに広くない。七つのポイントを回るのもあっという間だ。
 探索は衛星がしてくれるから、昼までに全部終わらせてしまった。

 宝物はあった。宝物と言えるかどうか分からないが、一箇所目で見つけた#立方体__キューブ__#と同じものが合計七つ見つかった。
 形も大きさも色も全て同じ。中は空洞なのか異様に軽い。
 これが衛星のバージョンアップに関係するものかはまだ判明してないが、この世界のものとして見れば違う気がするし、衛星関係の何かなんだろう。

 地図探索も終わったし、皆が出て来るのをダンジョン前で待ってようか。
 今日はダンジョン前で野営をしてもいいしね。

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