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第16話 王都の夜

 驚き疲れた二人は、考えも纏まらない様子だったので、明日の朝に話をすると約束をして別れた。
 達成報告があるから頑張って冒険者ギルドには行くみたいだけど、二人とも少しふらついて無い? 大丈夫かなぁ。

 俺達の方はと言うと、もう結構いい時間だったし、宿でゆっくりする事にした。
 でも、折角の王都だし、夜の街ってどんなものか興味があったから俺は一人で出かける事にした。
 こういうのって女性を連れて行っちゃダメなんだよね?

「明日、出発でいいんだね?」
「エイジに任せるのじゃ」
「はい」
「いいよ~」
「じゃあ、俺はオージュロスさんに出発の報告に行って来るよ。食事は多めに出したから残ったら収納しててね」

 衛星に十人前ずつ出してもらったから絶対に余るだろ。
 『龍王の杯』も出して準備オッケーっと。念の為、クラマの好きなブランデーとマイアの好きな芋焼酎も出しておいた。
 もし、町に繰り出したいと言ってもユーがお金を持ってるし好きにしていいよと言い残して宿を出た。

 行き先は宣言通りオージュロスさんの所。
 だって昨日の宴会で、いつでもいいとこに連れてってやるから、女共は置いて来いよって言われてるんだよね。
 いいとこってどんなとこなんだろうね、ムフ。


「おー! 来たかぁ、兄弟ぇ」
「「「ご苦労様です!」」」
 オージュロスさんが笑顔で出迎えてくれると、オージュロスさんの弟分や子分達が大きな声で挨拶してくれた。
 ここはオージュロスさんの屋敷なので、親分さんはいない。昨日はいたけどね。

 日本では目上に対して「ご苦労様」は上から目線になるからダメだとか言ってたけど、そんなの関係ないって思うんだよね。労いの言葉って「ご苦労様」でも十分に伝わると思うんだ。上から目線で言ってる訳でも無いんだから。これもテレビの影響なんだろうな。

「こんばんわ、オージュロスさん」
「なんでぃ他人行儀な呼び方しやがって。オージと呼ばねぇか、イージの兄貴よぉ」
 その見た目でオージは言い辛いです。兄貴も辞めてほしい。

「はい、オージさん。約束通り来ました」
「さんはいらねぇぜ。で? 色々連れて行きてぇ店はあるんだが、イージの兄貴はどういう店に行きてぇんだ? やっぱりこっちだろ?」
 やらしい顔をしたオージさんが小指を立ててみせた。
 ほんとエロおやじだな。でも、今はそんなエロおやじが頼もしく見えますよ。ムフ

 その意見には大賛成なんですけど、どう答えていいか分からないしモジモジしているとオージさんが笑い出した。
「がーっはっはっは、その顔はオッケーだな。イージの兄貴も好きだねぇ。あれだけの美人さんを何人も連れてんのにまだ足りねぇってか」

 確かに美人だけど、昨日見たのは精霊に勇者にオネェだよ。マイアの話ではプリもドラキュラが混ざってるみたいな事を言ってたから、まともな一般女子はいないんですよ。

「オージさん、その兄貴っての辞めてもらえませんか?」
「なんでぇ、兄貴を兄貴と呼んで何が悪いんでぇ」
 気に障ったのか、凄んでくるオージさん。

「い、いえ、何も問題ありません」
「そうだろそうだろ、そうだと思ってたぜぃ」がーっはっはっは
 もう、この事には触れまい。

「それはそうと、オージさん。昨日…」
「オージだ。さんを付けんじゃねーよ! お前ぇは俺の兄貴なんだろ?」
「は、はい。オ、オ、オージ……」
 怖ぇ~よ。これじゃどっちが兄貴かわかんねーし。なんで俺、こんなとこ来ちゃったんだろ。欲望に負けた自分を殴ってやりたいよ。

「あ、あの、昨日はごちそうさまでした。それで、お礼も兼ねて今日は僕が出そうかと思うんですが」
 チャリ~ン
 そう言って白金貨を五枚出した。

 おお! っとどよめく子分達。
 全員で出かけるんだろうから、これぐらいいるだろ。

「バカにすんじゃねー! 俺を舐めてんのか? 兄貴に俺のシマで金を出させるはずがねーだろ! 兄貴と兄貴の身内が俺のシマ内にいる間は全部任せとけってんだ!」
 おお! 男前~。ワンパンオージ、かっけ~

「さすが兄貴っす!」「ワンパンオージ~!」「マジ惚れました!」「この女泣かせ~!」「どこまでもついて行くっす!」「もう金も無いのに格好いいっす!」「この男泣かせ~!」などなど罵声も合わせて色んな声が飛び交った。

 一個気になる声があったぞ? お金無いの?

 昨日の宴会の時に、この王都のことや組織の仕組みなどを教えてくれた、オージさんの片腕のサダさんと目が合った。
 本名はサーダスターと言うそうだが、凄く切れ者でオージさんの金庫番をしてるそうだ。
 腕っ節もオージさんにも対抗できるぐらい強いそうで、見た目もいぶし銀って感じの男前だ。
 通り名も『神出鬼没のサダ』って言うそうなんだけど、通り名って絶対いるもんなの?

 だったら自分で子分を率いた方が良さそうな気がするんだけど、オージさんに惚れているそうだ。これはシェルの惚れるとは別の意味ね。男が男に惚れるって昔から言うやつの方ね。

 すぐに町に繰り出す事になって、入り口で込み合ってる時にサダさんを捕まえた。
 黙って袋に入れた白金貨十枚を握らせたら、「恩に着やす」と小声でお礼を言ってくれた。
 やっぱり困ってたのかもね。

 どうせ遊ぶんなら気持ちよく遊びたいしね。それに今日は俺の記念日になるかもしれないからケチを付けたくなかったんだ。

 脱DT!

 前世も含めて卒業できるかもしれない記念の日。になるかもしれないんだよ? これぐらい安いもんさ。

 全員で夜の町に繰り出す。
 オージさんの一派は七人。俺も合わせて八人で町を練り歩いている。
 練り歩くと言っても喧嘩を売ったりなんかはしない、普通に歩いてるだけだ。
 オージさんはたまに声を掛けられたりして、人気もあるみたいだ。

 まず連れて行かれたのは酒場。四人掛けぐらいの丸テーブルが十以上置かれた店だった。【星菓子】の半分ぐらいの店だ。
 飲み物のお勧めは#蜂蜜酒__ミード__#か#葡萄酒__ワイン__#か#林檎酒__シードル__#。この店では#穀物酒__エール__#派は少数派みたいだ。昨日、聞いた話では食堂では#穀物酒__エール__#がよく飲まれてるそうだから、この店はちょっと違うんだろうな。
 だって、綺麗なお姉さんがいっぱいいるんだもん。

 こんな所があったんだねー。異世界って……いいとこかもしれない。

 四人掛けの丸テーブルに一人か二人のお姉さんが付いてくれて接客してくれるんだけど、薄いドレスを着てて凄く色っぽい人ばっかりだ。

 これこれ~! こういうのを待ってたんだよ! ひゃっはー!

 他のテーブルに比べて、このテーブルはお姉さんが多い。男四人に対してお姉さんも四人付いている。
 お姉さん達は俺達が座ってる椅子より少し高い椅子に座ってる。俺たちが座ってる椅子が少し低くて、お姉さん達が座ってる椅子が普通の高さだと思うんだけど、背もたれの無い椅子で、お姉さん達は少しテーブルから離れ加減で、男の後から肩に手を掛けて話すんだ。

 お姉さん達の方が少し高いから、ちょいちょい当たるんだよ。何がって、胸がだよ! 柔らかくて気持ちのいい胸がだよ! もう大興奮だよー!

 このシステムを採用した人……あなたは神です。

 お姉さん達の飲み物も注文しないといけないシステムなんだけど、(もちろん客持ちで)このシステムがまたエロい。
 四人ならゆっくり座れる丸テーブルも八人もいるとかなり狭い。
 少し下がり気味のお姉さん達が飲み物の入ったコップを取るたびに、やっぱり当たるんだ。
 絶対、この人達ノーブラっすよ! うっひょ~

 初めは#蜂蜜酒__ミード__#をチビチビやっててんだけど、もう今は何を飲んでるか分からない。
 途中から、こっちも飲めこっちのも飲めと周りから囃し立てられるし、お姉さん達には緊張するし、どんどん飲むペースも上がる。
 兄貴兄貴と持ち上げられてるけど、所詮は若造だからね。皆も飲んでるし一番下っ端的な扱いだよ。

 俺の視界も怪しくなってきた時、「次行くぞ」とオージさんに連れられて二軒目へ。

 次のお店はさっきより小さくてテーブルが四席。全席二人掛けのソファが二個並べて置いてあり、向かい合わせで座る。一テーブルで八人座れるようになっている。
 四人ずつ分けられソファに座ると、即座にお姉さんが隣に座ってくれる。いいシステムです。

 二人掛けにしたら少し小さめで、お姉さんとの密着度が半端ない。
 もう、飲みまくってます。

「イージの兄貴~、楽しんでるかい? さっきの店でもあまり話してなかっただろ」
「す、すろく、たのしーれす」
「なんでぃ、もう酔っちまってんのか?」
「よってないれすよ~」
「まだ次があんだぜ? ようやくお待たせの本番なんだけどな、その様子じゃ無理かぁ?」
「本番? シュビッ! ほんばんは巡査部長なのれあります」ぎゃはははは
「なんだいそりゃ」
「んあ? ほんばんわタワラコータローれす!」いーひひひひー
「それも分かんねーぜ。おい! イージの兄貴を介抱してやってくれ」

「「「はーい」」」

「この人がオージさんの兄貴なの~?」「可愛い~」「このままお持ち帰りしちゃダメ~?」「また連れて来てよ~」「次は私が相手するの~」「やっぱり持って帰る~」……

 ソファに寝かされた俺は、お姉さん達に介抱されてたようなんだけど、全然覚えてない。
 どうやって帰って来たかも覚えてない。
 朝起きて昨夜の事を思い出すけど、なーんとなくクラマとマイアとユーの声を聞いたような気はしたけど、頭がガンガンしててそれ所じゃ無かった。

 おえっぷ

 ここは宿の部屋? リビングだよな?

 ぜっんぜん覚えてない。うえっ
 
 頭がガンガンする、風邪…じゃないよな。吐き気もするけど、これが#宿酔い__ふつかよい__#ってやつ?

 むにゅ?
 この感触は……やっぱり! クラマもマイアもユーまで裸で俺の横で寝てるんだ?
 うおっ! 俺も裸じゃん! なんで?

 なんで~?

 思い出したいんだけど、頭がガンガンしてそれどころじゃない。
 うえっぷ

 前回の二人が俺のベッドに潜り込んで来た時と違う事は分かる。思い出せないけど何かあった気はする。
 これってダメなやつだろ? 「昨日の事は覚えてない」って言えないやつじゃないの?

 うわー! 俺、初めてだったんだよ!? 初めてが4P? しかも覚えてない?

 最悪だ~
 何やってんだよ、俺~~~!
 う~っぷ

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