第34話:遊び
剣術の訓練が終わった。と言ってもほとんど何もしてないけど‥‥‥さて、飯でも食うか!今日の飯は何だろう?
飯は赤い肉と赤い野菜‥‥‥元がどんな食材かは想像したくない。あ、普通に美味かったです。
飯を食い終えた後は魔法の訓練だ。今のところ授業、剣術の訓練の2つと比べてこれが一番楽しい。
「とりあえず、庭に行って待っていればいいのかな?」
俺は庭に向かった。庭に着くとそこには母さんがいた。
「来たわね。それじゃあ魔法の練習をしましょう」
「はい!」
「昨日は試しというわけで適当に魔法を発動させたわ。でもただ発動させただけでは威力が低くて相手を倒せなかったり、上手く相手に当てられなかったりするわ。だから今日は魔法の制御について学ぶわ」
「『
「は、母上‥‥‥今詠唱なしで‥‥‥」
母さんは詠唱をせず、ただ『
「あ、これはね【詠唱破棄】というスキルよ。文字通り、詠唱を省くーー詠唱する言葉を無くす効果を持つわ」
何だスキルか‥‥‥便利なスキルだな。ちょっと欲しいな‥‥‥。
「母上、僕も【えいちょうしゃき】が欲しいです!!」
あれ、噛んじゃった。なんだよ‥‥‥【えいちょうしゃき】って‥‥‥ちょっと笑えるな。
「別にいいけど‥‥‥これ、『魔力を通常の
2倍か‥‥‥多いのか少ないのかわからない微妙な倍率だな‥‥‥。
「話を戻すわね。この『
母さんは基礎を大事にする派かな?俺は威力や範囲派だけど。でも怒られそうだから黙っておこう。
「シズナ、よく見ててね。今からこの『
どうなると思うって‥‥‥そりゃあ、燃えるだろう。葉っぱなんだから。
「燃えると思います」
「本当にそう思う?ふふ、それじゃあ入れるわね」
母さんは意味深な笑みを浮かべながら葉っぱを『
「えっ!?」
あまりの驚きに俺は声を出してしまった。葉っぱが火に触れたら燃えるなんて自然の摂理のはずだ。なのに‥‥‥それが当てはまることなく葉っぱは燃えずそのまま空中を舞って地面に落ちた。
「‥‥‥」
目の前のありえない光景を目にして俺は唖然としたまま固まった。
「(ありえない)」
「ふふふ、どうかしら?」
「凄いです‥‥‥」
「じゃあ今からなぜ燃えなかったのかを説明するわね。先に言っておくけど、この木の葉はどこにでもある木の葉よ。耐燃性ーー燃えにくいわけじゃないわよ」
そりゃあそうだ。耐燃性の葉っぱとかズルでしかない。とんだイカサマだよ。
「木の葉が燃えなかった秘密は魔法の制御にあるわ。シズナ、試しにこの『
え、火を触れって‥‥‥もしかしなくても
「嫌です」
「別に熱くないわよ。試しに触るだけでーー「い や で す」ーーわかったわよ‥‥‥まだ最後まで言ってないのに」
なんと言われようが火に手を突っ込むなど絶対に拒否する。何千何億円払うからって言われたらちょっと考える‥‥‥。
「別に危険なわけじゃないのに‥‥‥まあ、何も知らなければ怖いのは当然よね。私が悪かったわ」
そう言って母さんは『
の形に戻ったけど。
「母上、何しているのですか!?」
「んー?私はシズナの代わりに魔法を触っているだけよ」
「ですが‥‥‥」
「大丈夫よ。制御を誤ったりないわよ。シズナも触ってみる?」
「危険でなければ‥‥‥」
実は密かに魔法を触ってみたいと思っていた。でもやけどや怪我をしたくなかったから遠慮していたが、母さんが制御を誤らないと言っているので信用することにした。
どんな感触なんだろうか‥‥‥もちもちしているのか、それとも固いのか。想像が膨らむな。
「はい、どうぞ」
母さんは『
そして母さんは俺に右手で持っている『
俺は投げられた『
意外と固い。でも前世で触ったドッジボールよりは柔らかいかな。よく考えなくても、もともとそこに存在しなかったものが質量を持って感触があるっておかしいことだよな‥‥‥まあ、これが『魔法』ということで納得しないとこれ以上は哲学になりそうだ。
感触の他にはそうだな‥‥‥思ったより熱くないという点だな。熱くないだけで熱量は持っているけど。大体、俺の体温より低いくらいかな。
他には‥‥‥軽い。ドッジボールサイズなのにテニスボールのような重さしか感じない。これくらいなら5歳児の俺でも投げれるかな?
「シズナ、『
「どうぞ」
渡してって言われたけど‥‥‥何するんだろう?
そう思ってみていると二つの『
一体何がしたいのか全くわからない。
「よく見てなさいね。せーのっ!!」
母さんは右手に二つ、左手に一つの『
「母上、何しているのですか?」
「
「何しているのですか‥‥‥」
「別にただ遊んでいるわけじゃないのよ。遊びながら魔法の
なるほど。遊びに魔法の制御を加えたのか‥‥‥考えられているな。俺じゃあ思いつかなさそうだ。
「でもシズナは一人でこの遊びをしてはダメよ。魔法の制御を誤ると魔法はそのまま消えるか人に危害ーー怪我をさせるからね。オススメは『火魔法』よりも『水魔法』を使った遊びよ」
「形なき水よ、我が障害を打ち倒せ、『
母さんが詠唱を終えたら今度はすごく透明度が高く透き通っている水の球が現れた。一体その『ウォーターボール』をどうするのだろうか?
「『
そしてそう言って『ウォーターボール』を二つにちぎり俺に渡した。
冷たッ!水だからかさっきの『
「何ですか?」
「私がさっきやったみたいに練習してみなさい」
「え‥‥‥」
俺にジャグリングをやれと?‥‥‥無理です。でもやつてみるだけやるか。
「ほっ‥‥‥あ、落ちた」
なかなか上手くいかない。たったの二つなのに難しすぎる。上手くいかないのは質量が全く同じだからなのか?
「ちなみに魔法の制御をある程度できるとこういうこともできるようになるわ。面倒だから【詠唱破棄】を使おうかしら?『
『ファイアアロー』、名前から推測するに火の矢か。実際に現れたのは予想通り、火の矢だった。しかし、何故一本だけなんだ?もっと出せばいいのに。
「母上、何故一本ーー一つだけなのですか?」
おっと、危ない危ない。なまじ5歳児より知識があるせいで明らかに5歳児らしからぬ発言をしそうになるな。それに気をつけるのも大変だ。
「今は一本しか必要ないからよ。モンスターを倒す時はもっと出すけどね。シズナ、今出した『
「そのまま通り抜ける、ですか?」
ーーこれで正解だろう、多分。
「さあ、果たしてそうなるかしら?実際にやってみるわね」
母さんは手に持っている杖を動かして『ファイア・アロー』を操り『ウォーター・ボール』の方向に向けた。向けた後、ゆっくりと『ファイア・アロー』を動かした。動かされた『ファイア・アロー』はゆっくりと進み、数
「ちょっと惜しいわね。答えは『突き刺さって止まる』よ」
何じゃそりゃ‥‥‥とんでもない答えだな。屁理屈にしか聞こえない。
「ちなみに今まで出した問題は全て、『魔法の制御』ができる前提の問題だからね。威力を重視する人や初めて魔法を使った人だと私が出した問題の答えは違うわよ。どう違うかというと今から実演するわね」
「まず、『『
そう言って母さんは『
「次は、『『
「最後に、『『
えっと‥‥‥『ウォーターボール』が『ファイアアロー』を通り抜けて木の葉が『ウォーターアロー』?
「わかってないみたいね。流石に一度に説明しすぎたかしら?まあ今は分からなくてもいいかしら」
そうしてください、ぜひそうしてください。そろそろ脳の処理が追いつかなくなってきたので。
「あら、気がついたらもう夜ね。明らかに説明が長かったわね。困ったわね‥‥‥後一つ、『魔力を使った後『
俺は『
ーー兎も角、これにて今日の魔法の練習は終わりだ。