第19話:シェルドの奮闘
ーーシェルド視点
私の名はシェルド・フォン・ラートリア。王立ソフメル学園の3期生だ。この学園は皆、3年しか滞在しない為3期生が最高学年となっている。
此度は私の弟ーー私から見て2番目ーーであるシズナの誕生日パーティに参加して驚かそうという提案を弟のマエルドーー私から見て1番目ーーからされた。聞けば、父上と母上はシズナに兄がいると言ってないそうだ。
丁度良い余興になると思った私はマエルドの提案を承諾した。
ーーこの時、シズナの誕生日まで残り2週。
時間がない!!と思った私は早速、父上に向けて手紙を出した。この王都から父上が住むラートリア公爵領までは最低でも1週は掛かる。
何故、時間が掛かるのかというと手紙を運ぶ者が取る手段が徒歩だからだ。勿論、徒歩より馬車の方が断然早い。しかし、手紙を運ぶ者は、馬車で行かずに徒歩で行く。遅くなるならそんなプライドは捨てて馬車で行け!!と思う私がいる。
しかし、その者が言うには『「馬車で行くと盗賊に襲われる」だそうだ。そんなもの、徒歩でも馬車でも襲われるのは変わらないと私は思う。
だが、その者が徒歩で手紙を運ぶようになってから一度たりとも盗賊に襲われたことはないらしい。その実績があるせいで彼の者を頼る者が多い。実際に私も頼ってしまっているが‥‥‥。
彼の者の他にもう一名、手紙を運ぶ者がいる。が、よほどの急用でもなければ頼ることはないだろう。速さを売りにしているが、毎回何かしらの原因で手紙が傷つくからな。流石に、父上にボロボロになった手紙は送れない。
なので必然的に遅くても安全な方を頼ることとなる。
話が逸れたな。私が父上に出した手紙を父上が受け取った旨と馬車を手配し学園に向かっている旨を告げる手紙が届いた。今日の夜にはラートリア領に向けて出発する手筈も整った。これで準備が出来たーーと思っていた。が、私はシズナに会うことに浮かれるあまり重大なことを忘れていた。
それは『生徒は夜になれば寮に滞在して外出してはいけない』ことだ。外出するためには学園長が発行する『外出許可書』が必要だ。外出許可書は何か重大なことが無いと発行されない。例をあげるなら『家族が死んで葬式に出席する』といったことだ。
私はシズナに会うことは重要なことだが、他人から見ればさほど重要では無いかもしれない。
そのため、私は『外出許可書』が発行されないのでは‥‥‥と焦っているのだ。そして、私はある
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ーー▲▲▲時点
儂が仕事をしているとドアがノックされた。ん?一体誰なんじゃ?補佐の者は今日は休んでおるし、それにこの時間に誰かが尋ねるなんて聞いておらん。
だから、儂はドアの前に居る者に聞いた。
「誰じゃ?」
「シェルド・フォン・ラートリアです」
だが、まさか貴族が尋ねてくるとは思わんかった‥‥‥。それにしても貴族‥‥‥貴族が尋ねてくるとは‥‥‥儂は冒険者時代の経験のせいで貴族が苦手なんじゃが‥‥‥一応、要件くらいは聞いておこうかのぅ。
「何用じゃ」
「外出許可書の申請の件で参りました」
外出許可書‥‥‥やっぱり、ロクでも無い要件じゃったな‥‥‥帰ってもらおうか‥‥‥。
「儂は忙しいんじゃ、お前に構って居る暇はない」
「そうですか‥‥‥」
ん?なんだか声色がおかしい‥‥‥やっぱり、話くらいは聞いて
「失礼します!」
ーー前言撤回じゃ。話を聞くどころか二度と部屋に入れるか!
「帰れと言ったじゃろう。なのに何故入って来てるんじゃ!」
「あとで如何様な罰も受けます。ですが、まずは私の話を聞いてください!」
なんじゃこいつ‥‥‥いつもの冷静さはどうした。まるで別人のようじゃぞ‥‥‥。
そして勢いに負けた儂は黙って話を聞くことになった。
ーーまだ、話は終わらんのか‥‥‥どれだけ必死なんだか‥‥‥まあ、弟思いの良い兄ではないか。久々に儂も娘や孫に会いたくなったわい。
「わかったわかった。今回は特別にお主の弟思いに免じて外出許可書を発行しよう。だが、今度は事前に来る旨を伝えるのを忘れるではないぞ」
「ありがとうございます!!‥‥‥あ、あとマエルドの分もーー」
「わかったわかった」
そして、2枚の外出許可書を受け取ったシェルドは外に出て行った。
はあ‥‥‥冒険者時代にあのような貴族と会えたら良かったのう‥‥‥。