vs, ブロブ Round.2
我が家から少し離れた場所のモデルハウス──クルロリは、そこを合流場所と指定した。
到着したのは午後七時頃。
で、リビングでの作戦準備。
「その後、状況は?」
ジュンが確認した。
「特に進展は無い。警察は
相変わらず事務的にクルロリが答える。
「そう、一安心ね」
「ってか、何を順応してるのさーーッ! こんな
「……それは言わないで」
現在、ボク達はクルロリからの支給品を着用していた。
つまり〝セーラー服〟──しかも、超ミニスカ仕様の夏服。
何故っ?
「これは〈ポータブルハビタブルウェア〉──通称〈PHW〉と呼ばれる多機能型環境適応活動服」
ボクの不平不満を拾い、クルロリが淡々と説明する。
「いや、どこからどう見ても〝セーラー服〟だよ! 全宇宙の
「見た目はそうでも、実際は諸々の特殊機能を備えている超科学産物。例えば超耐熱・超耐寒・超耐圧を基礎性能の設計思想とし、素材には高い衝撃分散吸収力を誇る
言い張るか!
「思いっきり露出してるだろ! 素肌!」
「大丈夫、クォンタムバリアコーティングを
「く……くおんた?」
「クォンタムバリアコーティング──特殊加工素粒子による有害物質
……『ダーペ』かよ。
とりあえず高 ● 穂先生に謝れ。
「素直に宇宙服でも着せればいいだろ!」
「ネット情報で学習した──セーラー服女子高生は、普遍的に最強だ……と」
ドコのアダルトサイトだ!
無垢な
「ヤダヤダヤダッ! こんな肌露出の高い萌え衣装着て、スーパーヒロインごっこなんてイヤだ!」
「なら、別仕様もある」
「おお! あるんじゃん! なら、そっちで……」
「はい」
手渡された現物を見て、絶句に固まる。
「クルロリ? コレは?」
「別仕様の〈PHW〉。防御面は落ちる反面、運動性能は向上している」
「ブルマ体操着だろ! コレ! スパッツ世代には、もはや化石だよ!」
「ネット情報には、こうもあった──ブルマ女子高生も甲乙付け難い……と」
そのアダルトサイト!
「まあ、私も抵抗があるのは事実だけどね。二択ならコッチの方がマシかなぁ……って」
頬を赤らめつつ、ジュンが視線を
「ってか、何でジュンまで? キミ、そもそも戦闘能力無いじゃん! 前線立たないじゃん!」
「うん、そうなんだけど……って、脚に頬摩りすなーーッ!」
「はぅぅぅ……」至福に鼻血噴いたよ。「そそそそれって、
「違う! 罪悪感的な問題!」
何だ、違うのか。
ジュンと一緒なら、それでもいいけどさ。
「で、どっち?」
クルロリが現実へと引き戻し、コクンと小首を
「……スイマセン、コッチで」
どんな『どっ ● の料理ショー』だよ! コレ!
「では、現在までに
「あ、お母さん出掛けてんだ? ラッキー!」
「けれど、家宅内には人質が一名──アナタの妹」
どんなサプライズかましてくれてんだ。あの
毎回毎回〝人質〟って。
「マドカ、気持ちは分かるけど軽率な行動は厳禁よ」
「言われなくても分かってるよぅ」
「今回は
「ちょ……ちょっと待って! マドカ
無謀とも思えるクルロリの
一方で、ボクは「ああ、なるほどね」と楽観的に納得。
「マドカ? あなた、まさか?」
「平気平気。むしろ今回は
ボクの確認にクルコク。
「じゃあ、せめて可能な限りサポートするから。遠隔位置だから
「うん」
「方向性は
クルロリが事務的に
こうして『
屋根裏を
さすがに蜘蛛の巣やらネズミの死骸やらは無いけれど、気分的には
鋼質化をしていなかったら抵抗感がスゴいだろう。
とりあえず〝ル ● バ〟の気持ちが分かった気もする。
やがて目的位置に着いた。
ヒメカの部屋の真上だ。
クルロリからの事前情報はドンピシャリ。
「あ、ヒメカだ」
『状況は?』
ボクの呟きを拾ったジュンが確認する。
胸ポケットに忍ばせたパモカは、ハンズフリーモードの
「う~ん、それがねぇ?」
『何よ? 歯切れの悪い』
「ティータイムしてる」
『は?』
「だから、ヒメカと〈ベガ〉で、お茶してるんだって。お菓子を
『友達との女子会か!』
「ボクに言うなよぅ」
「このシフォンケーキ、おいし~い♪ 」
「
「そんなの別にいいよぉ?」
いや、よくないだろ。
知らない人を
そして、警戒心も無く不審物を食うな。
こちらの困惑も知らず、
にしても、何考えてんだ?
いや、あの〈ベガ〉もだけど……むしろ
すっかりティートモと化したメイドベガは、やがて
「ヒメカ様、申し訳ありません。とりあえず手近な
あ、ボクの家とは知らずに飛び込んだんだ?
表札も見ずに?
だとしたら、神様は
「別にいいよぉ?」
シフォンにパクつきながら、屈託無く笑うヒメカ。
いや、よかねーよ!
どんだけ迷惑掛けてんだ!
「それに、シャワーまで貸して頂いて……」
貸したんかぃ!
大丈夫だろうな?
粘液でドロドロになってないだろうな?
ヤダぞ? 今晩はローション風呂なんて!
「だって、
「申し訳ありません。執拗に追われて、庭先や路地裏を逃げ惑っていましたから……」
随分とバイタリティー
「だから、別にいいよぉ。そのお
「え……ええ、それはまあ」
「ヒメカ、これ好き」
「え?」
「あなたが作ったお菓子、とってもおいしいの。フワッと優しい甘さなの」
「そう……ですか」小さく
「ふぇ? 誰にも食べさせてないの? こんなにおいしいのに?」
「ええ」
「家族や、お友達にも?」
ヒメカの率直な質問に、メイドベガは
「……いませんもの。そうした人は」
正直〝何〟があるのか知らないけれど、この
「ふぅん?」
キョトンとパクつく
ってか、オマエは他人の
姉ちゃん、情けなくって涙出てくらぁ!
「じゃあ、ヒメカが〝最初のお友達〟だね?」
「……え?」
戸惑っている。
無理もないけど。
「友達……ですか」
淡く
嬉しそうな
心温まる友情の
ってか、キミ達〝
何でハートウォーミングな展開?
「でも、何で逃げ回ってたの?」
「
「へぇ? ヒドいね?」
警察、一方的に
ってかコイツは、絶対に何も実感してない。
シフォンの味覚脱線ながらに、テキトーな
……だって、
「ところで、ヒメカ様?」
「もう〝ヒメカ〟でいいよぉ」
どうして籠城犯相手にフレンドリーだ。オマエは。
「では、その……ヒメカ? この辺りの住人で〝
「胸ペッタン?」
「はい?」
うぉい!
いきなり何を口走ってんだ! この
「だから〝
「胸、関係ない」
『私のを取るな』
屋根裏で呟いたら、
それはさて