191 リリアンヌ様の屋敷
幻の8万文字と言われる誘拐中の話は、書籍3巻にございます。
ダイジェストで説明すると「カカオ豆見つけてチョコレートゲット」です。
以降書籍版4巻と重なる部分です
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「ただいま帰りましたわ!」
馬車に、収穫したお土産を積み込んで帰ってきたよ!
「リ、リリアンヌ様!ご無事で!」
どう考えてもポーション畑に向かう道ではなくて、豪華なお屋敷の前。
「細かい話は落ち着いてからするわ。まずは食事と風呂とそれからこの子たちの着替えと寝室を用意してちょうだい」
キリカちゃんもカーツ君もきょろきょろとしている。
うん。お屋敷からぞろぞろと人が出来てて、ワイワイとリリアンヌ様を取り囲む。リリアンヌ様の支持で、私たち3人もあれよあれよという間にどこかへ案内されていく。
ただいまーとリリアンヌ様が言っていたから、リリアンヌ様の家なんだよね?貴族のリリアンヌ様なら、立派なお屋敷に住んでいるのも分かる。
お屋敷が家というのは分かるけど……。
「お城みたいなのー」
そうだよね。キリカちゃん。お城みたいだよね。
「ふふふ、キリカちゃん、残念だけど、お城はあっちよ」
残念じゃないです。お城だったらむしろ困ります。っていうかあっち?確かに、目の前のシンデレラが住みそうなお屋敷よりも、大きな建物がすぐ後ろに見えます。
ち、近い!
っていうか、お城があるってことは……。
「ここって、王都なのか?城って、王様がいるとこ?それとも領主様の城?だったら、領都?」
ですよね。カーツ君もどこだろうって思ってますよね。
どう考えても、なんか、知らない場所ですよね。あ、私、知ってる場所のが少ないですけど。
「まぁまぁ、細かい話は後々。お腹すいたでしょ。ご飯食べてからお風呂に入って着替えて寝ましょうね。あ、お風呂が先でご飯が後のほうがいいかしら?」
お、ふ、ろ!
「お風呂にはいれるんですか?」
もう、ここがどこだとか、そんなことどうでもよくなった。
とりあえず、今はお風呂、お風呂、お風呂!
「入り方は分かるかしら?分からなくても侍女をつけますからね」
え?
「あ、いえ、あの、大丈夫です!一人で、えっと、その、むしろ、一人でゆっくりしたいというか……」
温泉も好きだし誰かと一緒にお風呂入ることは気にならないけど、しばらくお風呂入ってなかったから、今日はゆっくり一人で堪能したい。
キリカちゃんとカーツ君と一緒にお風呂に入るのも楽しそうだけれど、今日だけは……。幸い、キリカちゃんもカーツ君もお世話をしてくれる人がいるようだし。
ぷはーって、ゆっくり一人で湯船につからせてください。
……。
うん。西洋式だったよ。浅くて広くて泡のあれ。
……風呂は嬉しいんだけど、やっぱりこう、なんていうか、もうちょっと深くて肩まで沈めるやつがいいな。
体を洗ってからお湯に沈む日本式がいいな……。そういえば、ローファスさん、小屋に樽を運んでくれるって言ってたけど、いつになるのかなぁ……。
はー、でも気持ちいい。
半身浴だと思えば悪くない。
石鹸もいい香り。優しい花の香だ。
ふぅ……。
誘拐されたときはびっくりしたけど、こうして風呂に入るための寄り道だと思えばいい思い出。
ハズレ魔石のお土産もあるし。ふふふ。はー、誘拐されてみるものね。
って、誘拐はされちゃ駄目か。うん。いつもハズレ魔石が手に入るわけじゃないし。
みんな心配しただろうし。あれ?
誘拐……とは違うけれど、私、日本から突然この世界に来ちゃったけど……。心配してるかな?
……誰が?私の……友達に、主人は連絡入れてないだろうなぁ……。
日本から突然この世界に来ちゃったのも、まさか転移魔法じゃないよね?
もし、転移魔法だとしたら、今回誘拐されたときと、送り返されたときと2回経験したけど……場所を指定して転移できるってことだよね?だったら、日本に向けて転移してもらうこともできるっていうこと?
ああ!もしそうなら!
聞いてみる価値はある。
転移魔法について詳しいのは……誘拐犯……おっと、もう心を入れ替えてるから誘拐犯と呼ぶのは失礼かな?あっちの国の人たちだよね?
聞けるチャンスあるかな?