192 えええ?
風呂を出たら、ワンピースが用意されていた。
ドレスのように豪華でもこてこてでもなくて、メイドが身に着けるようなシンプルなデザインのワンピースなんだけれど……。
スカートが膝丈。おまけに色が水色……。エプロンつけたら、不思議の国のアリスのコスプレみたいになっちゃいそう……。せっかく用意してもらった服なので、文句は言えませんが、言えませんが……。
三十路のアリスコスプレ、誰得ですかっ!涙目。
キリカちゃんはピンクのワンピースでした。ふわぁ!かわいすぎる!かわいすぎる!
ど、どうしよう。写真が撮りたい。
カーツ君は、白のカッターシャツに黒の膝丈ズボン。長ズボンじゃないところが、子供らしくてかわいい!七五三みたい!って、ちょっとカーツ君に失礼か!
風呂が終わったら夕飯。
「お口に合うといいんですけど」
なんか、めちゃくちゃ長いテーブルの端っこを使った食事ですよ。
40人くらいずらっと座れそうな長さのあるテーブル。
貴族……って、いつもこんな食事風景なの?
お誕生日席に、リリアンヌ様と、見知らぬ男性が腰かけ、その前に私とキリカちゃんとカーツ君が座っている。
見知らぬ男性は、50歳前後に見える。……誰だろう?
体つきはかなりいい。武人という印象を受ける。
顔はかなりのイケオジです。武人っぽさは顔にも出ていて、りりしく引き締まった印象。すっきりと短くした髪は薄い茶色で、瞳も同じ薄茶。
リリアンヌ様が30歳くらいに見えるから、親子?兄妹?似てないけれど。
「妻が、世話になったようだね」
妻?
つ、ま?
「え?リリアンヌ様、結婚してたんですか?」
待って、ちょっと待って。
だって、ローファスさんの、その、お付き合いとか……してたんじゃないの?!
あ、付き合ってるのに結婚できなかったのは、人妻だから?
どういうこと?
一夫多妻も一妻多夫も問題ないとか?
人妻……でもオッケーな世界とか?……ううん、ダメ。やっぱり人妻は駄目でしょう!日本の倫理観だと、一夫多妻が許されてると言われてもはいそうですかとはどうしても思えない。
……。主人が別の人と子供を作ったこと……。もし、一夫多妻の国だったとしたら?
私はどう感じたんだろう。離婚してくれと言われず、新しく一人奥さんが増えると言われたら……。
「あら、気が付きませんでしたか?ほら」
と、リリアンヌ様が腕輪を見せてくれた。
ああ、そういえば、結婚の腕輪とかがあるようなことを聞いた気がする。
リリアンヌ様の旦那様の腕にもリリアンヌ様とおそろいの腕輪がはまっていた。
「お話は食べながらいたしましょう。冷めてしまってはせっかくの料理が台無しですからね」
フランス料理のコースのように、1品ずつ運ばれているのをイメージしていたら、そうでもなく、普通にメインディッシュとスープとパンが一緒に出て来た。
メインディッシュは何かの肉のステーキ。スープは野菜たっぷりのもの。パンは丸パン。
貴族の食事と言っても、それほどの派手さはない。
なんて、油断した。
「うっ、こ、これは……」
ステーキを一切れ食べて絶句。
香辛料だ!