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「お兄ちゃん!!お兄ちゃん!お兄ちゃん……
どこ……?どこにいるの??」
急に愛の表情が変わる。
その顔が不安に満ちていて僕の心も不安に溢れる。
「僕は、ここにいるよ」
僕は、そう言って愛の手を握りしめた。
「これ、お兄ちゃんの手……」
「うん。そうだよ」
「お兄ちゃんの手、暖かい」
「愛の手も暖かいよ」
「お兄ちゃんの方があったかいよ……」
そして、愛が静かに息を吸っては吐いて、吸っては吐いてを繰り返す。
「……愛?」
僕の心のコップが不安に満ちて零れそうになる。
「お兄ちゃん眠いよ……」
「うん。
ゆっくり休んでいいよ」
「でも、まだ寝たくないよう……」
「じゃ、愛が眠るまでずっとそばにいる!
こうやって手を握りしめているから……」
「うん」
愛の表情が少し和らぐ。