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僕は、奈々とひとつになる。
この先のことなんてわからない。
何をどうしたらいいのかなんてわからない。
ただ、本能の向くまま奈々の体を抱きしめる。
少しずつ。
少しずつ。
体を強く抱きしめ……
僕たちはひとつになった。
今までで一番しあわせな時間だった。
でも、このあとどうしていいかわからない。
いろんなことが頭をよぎる。
沈黙が訪れる。
するとそんな沈黙を壊すように洗濯機がピポパと音を立てる。
それは、洗濯物が乾いたことを知らせるものだった。
時計の針は、夜の9時。
菜々が言った。
「そろそろ帰らないと瞳ちゃんが、心配しますね」
「そうだね……」
「今度は、もっとえっちなことをしましょうね」
「え、ああ。
うん」
脱衣所に向かう途中。
その、『もっと、えっちなこと』を考えるだけで、顔が赤くなった。
僕は、服を着替えると奈々が待つリビングに向かった。
「きちんと乾いていますね。
よかった」
「うん。
ありがとう」
僕は、そう言うと奈々のおでこにキスをした。
「あ、今のは反則ですよ」
奈々は、そう言うと悪戯っぽく笑った。
「じゃ、僕は帰るね」
今帰らないと襲ってしまいそうだ。
「はい。
玄関まで一緒に行きます」
「うん」
僕は小さくうなずいた。