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「……だからって僕は。
僕は、水谷さんを避けたりはしないよ」
「どうして?」
「『どうして?』って、避けることに理由が必要かも知れないけれど……
避けないことに理由なんて必要ないよ」
「嫌ったりしないの?」
「そんな、悲しいこと言わないでよ」
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」
水谷さんは、何度も謝りながら涙を零した。
僕は、そんな水谷さんを抱きしめた。
なんだろう。
抱きしめなくちゃいけないと思った。
「なんか、湿っぽいですね」
「うん、大雨だったもん」
「……ごめんなさい」
「いや、もういいよ。
こうして、会いに来てくれた。
それだけで、嬉しいよ」
僕は何を言っているんだろう。