142
「真白が遠くに行っちゃう気がしたの……」
「遠くって……?」
「今まで、私たちの間に隠し事なんて無かったよね?」
いや、僕はあるけどね。
エッチな本とか隠してあるし。
この場合、黙っているのが正解だよね。
「……そうだね」
「私、真白のことなら何でも知ってるよ?
孤児院までのことは、知らないけど。
孤児院から出たあとのことなら何でも知ってるよ?
いつまでおねしょしていたとか……
テストの点数をごまかして、お母さんに見せたこととか。
ベットの下に、エッチな本をいっぱい隠しているとか……」
瞳は、そう言うと苦笑いをした。
「ってか、なんでエッチな本の隠し場所なんで知っているの?」
「真白の布団を干す時に、たまたま見つけたんだ」
「……そっか」
「私たちは、ずっと一緒だよね?」
「うん」
「血は繋がっていないけど……
姉弟だよね?」
「うん」
「そう、姉弟なんだよね……」
そう言った瞳の顔がとても切なそうだった。
「うん」
でも、それはすぐに笑顔へと変わった。
さっきまで泣いていた天使が、ほら笑う。
でも、僕は知っているんだ。
傷ついた天使は、笑えないことを。
痛い痛いって泣いているんだ。
そう、心が泣いているんだ。
ずっとずっと永遠に……